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大宮戦プレビュー~浮上できるのは!?前半戦の山場~

前節のレビューをあげて間もないが、早速大宮戦のプレビューを…。続けて読んでくださっている最高な方、もしいましたらより一層感謝です。

ここのところ、シーズン開始直後のように対戦相手の試合を追えていなかったり、情報収集も不十分だったりしたことでプレビューは全くと言っていいほどあげれていなかったが、"新生・大宮の1試合(栃木戦)"と"レノファ山口時代のサッカーをそれなりに見ていた遺産"で今節の展開や注意点をまとめていきたいと思う。

■霜田監督について

キャプチャ

大宮アルディージャ公式より。
ダラダラと説明しても長くなるだけなので、端的に説明する時に特筆すべきはやはり"元日本サッカー協会(JFA)技術委員長”という肩書き。現在の反町さんの役職から監督業に再び戻ってきた形になっている。

これだけチームを渡り歩き、海外とのコネも持っているだけあって、とにかく国内外のあらゆるチームから選手を引っ張ってきては、若手も大物外国人も積極的に起用していくという監督としての手腕だけではなく、フロント力も持っているタイプの監督と言える。夏の補強からが本領発揮かもしれない。

山口時代はクラブが昇格にむけて選手を引き留めるというよりも積極的に育てて売ってクラブを大きくしている段階だったという事情(引き抜き)もあって、8位→15位→22位と年々成績を落としていってしまったが、海外のトレンドを取り入れたポジショナル&ストーミング戦術とそれを叩きこむ高い言語化能力には定評があり、目先の成績は得られずとも多くの選手を成長させることができた有意義な3年間だったと思う(理想を追い求めるスタイルや最先端の戦術が選手層とマッチしていないというジレンマも抱えていたが……)。

今の山口にとってもそのポジショナルプレーをベースにしたサッカーを積み上げてきたことが渡邉晋監督の招聘にも繋がっているので、決して良い成績を得られなかったといっても我慢した価値のあった、意味のある3年間だったと言っていいだろう。

■山口時代の霜田サッカー

・基本システム

山口時代は他のポジショナルベースのサッカーと同様、3バックと4バックを柔軟に使い分けている。それで失敗しても根気よく続ける。
ただ、大宮での初陣やレノファ山口の初年度の基本形を見るに4123(状況に応じて4213にシフト)というのが監督の好みに見える。

ちなみに我らが前貴之も右SBだけでなく、CBや中盤としても欠かせないピースとして君臨。副キャプテンを任されるなど信頼は厚い。今のJ2では最も霜田監督を熟知した選手かもしれない。田中パもWGやWB、SBなど複数のサイドポジションで起用されている。

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<⇧霜田体制1年目、8位で終えた年の山口の基本フォーメーション>

ここからは具体的に戦術的な特徴に。

・3トップに点を取らせるプレーモデル

毎年のように狙いが見えたのは「3トップに点を取らせる」プレーモデル。433で3トップに点を取らせるのは当たり前じゃないか?と思う人もいるかもしれない。しかし、この方針を明確にすることにより、3トップに入る選手はゴール前で勝負する意識と自覚が強く芽生え、周りの選手もこの3枚がゴールに向かえるようなパスが増える。この3トップを生かす、分かりやすく巧みなマネジメント、俗に言う"霜田マジック"によって3トップのオナイウ・小野瀬・高木大の3人はいずれも個人昇格を果たしている。

・攻めはポジショナル、守りはストーミング

「ポジショナルプレー&ストーミングの両立」
両立可能ならばどのチームもやりたいというキーワード。しかし、霜田監督は基本的には理想を高く設定し、それを追い求めるスタイルの監督。そして、それが一貫されている。高い目標設定ということで今年の姿を見ている山雅サポは少し既視感も覚えそうだが、はっきりとしたビジョンと霜田流のメソッドでやりたい方向性は非常によく見える。

ポジショナルベースのサッカーの中で、霜田レノファが意思疎通のために使っていた代表的なワードが「アタッキングパス」
通常、逆サイドにボールを送るのが「サイドチェンジ」と言われるが、それをさらに具体化・細分化し、「逆サイドのワイドレーンで、相手の最終ラインと同じ高さで受けるパス⇩」と定義付け。常にチームとしてそこに狙いを持ち、受け手はそれを信じて走っている。

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そして、即時奪回のストーミング守備はスペースを圧縮するために逆のワイドレーンは捨て、ハイラインを敷くことでボールサイドに密集を作る。逆サイドや裏のスペースに展開されないように3トップはそれぞれ圧力をかけるという守備のロジック。

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とはいっても、この手のサイド圧縮はどこのチームもやるので特別珍しくはない。が、5レーンでピッチを分けて意識はさせている。
逆のサイドレーンは意識的に"捨てられる"ことが多くなるはずなのでそこは1つの弱点となる。

・殴り続ける采配

これは記憶に残っている人も多いのではないだろうか。
勝っていても殴るのを辞めず、負けていてもリスクを顧みずに攻めに人数を割く。とにかく最後まで攻撃的な姿勢を貫き続ける。奇しくも霜田監督も"ポジティブ"という言葉をよく使う指揮官だが、「どうすればポジティブをピッチで体現できるか?」を考えた時にこうしたミスを恐れない采配を一貫して行うのも1つのメソッドなのかもしれない。

この大味な采配で良くも悪くもスコアが動きやすいのでオープンな展開になった際には相手のペースに吞まれることなく、統一感を持って試合を運びたいところ。

■新生大宮とどう戦う!?

・栃木戦を見ての雑感

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では、栃木戦の大宮はどうだったか。

試合展開を振り返ると開始早々から3トップを中心にした素早い攻撃で栃木のDFを錯乱。その流れから得たFKの流れからイバが押し込んで開始4分に先制。試合を通してイバが"あの頃の姿"に戻りつつあるように見えたのはかなり厄介に感じた。
こうして理想的な立ち上がりをみせるも、徐々に大宮の保持に慣れてきた栃木のプレスに引っかかることが多くなっていき、後半40分にはセットプレーから同点に追いつかれる。そこから後半はオープンな時間も増えるも栃木相手に引くことなく、また1本はやられてしまったセットプレーもその後は高い集中力で防ぎきった。

自分も岩瀬大宮を継続的に追っていたわけではないのでざっくりとした雑感になるが、サッカーの大枠的な部分のベースは岩瀬監督のまま、選手のメンタル的な部分をリセット、タスクを簡素化したことがメインの修正になっていた気がする(就任期間を考えると無理はない)。
また、形は433に変えたことで3トップが攻撃でも守備でも矢印を前に置き、推進力も出やすくなっていた。解任後はまずはガッチリと守備を固めてからというやり方も多い中、早速霜田監督らしい攻撃志向が垣間見えた。ただ1週間あるのでもう少し霜田色が濃くなっている気はする。

・3トップ×5バックをどうする!?

最もポイントになりそうなのは相手の強力な3トップに対して、5バックがどう向き合うか。相手の狙いである3トップの良さを消すのに5枚で5レーンを消せば後ろ的には一番楽である。

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だが、だからこそ危ない。後ろに人数をかけてストロングを消すと言うことは前の負担はその分大きくなる。いつも山雅が抱えている問題が起こりやすい噛み合わせなのは意識したい。
具体的にはいつものSB問題がネックにはなる。縦に縦に急いで攻めに来てくれるチームならばそれほど苦にはならないが、IHを引き付けて疲弊させることを狙うチームが多くなっており、これまで通りいくとIHはただ疲弊するだけになってしまう。

それならWBが相手のSBに行くというのがここ最近の修正策だが、

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⇧セオリー通りいくとSBは恐らく低い位置を取ってくるのでWBの移動距離が長く、大宮のSB→WGの縦関係をサイドレーンで使われる可能性が高くなる。
つまり、5バックを形成した状態でプレスに行こう場合、イバ1人に3人が付くことにならないようにスライドをスムーズにするのはもちろん最低限のこと、仮にスムーズにできたとしてもSBへのプレスが間に合わないでやられるorプレスを無効化される可能性が高い。

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なので、5バックを作るのではなく、CBがマンツー対応+アンカーで対応するのがプレス時の理想と考える。その場合、2トップが中盤3枚を確実に助けること、左右CBが相手のWGにやられないor時間を稼ぐことはマストになる。

いずれの守り方にしろ、CB中央ではイバに対抗する力強さ、左右CBにはWGの選手に負けない対人守備を実現できなければ苦しくはなりそう。

ちなみに一番最悪なのはGKまでプレスにいってIHが釣りだされるパターン

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この形は5レーンを叩きこまれたチームからすると初歩中の初歩のドリル問題。それを覆せるほどの勝算がなければ簡単に交わされてしまう。さすがにここまでイージーな交わされ方はしないと思いたいが、わりとこれまでの試合でありがちなので絶対に起こらないようにしてほしい。

・狙うは「ネガトラ時の即時奪回」と「逆サイド」

そして、次は攻撃面。
だが、前節は栃木がストーミング戦術特化のチームだったので基本トラジション→カウンターがほとんどだった。前プレも諦めていた感はあるのでどれほどの強度で前からプレスをかけてくるか少し読めない。
霜田監督自身はリスクを顧みずに前線に人数を送り、奪われた時もできるだけ高い位置で奪おうと前線はリスク管理よりも即時奪回、CBも引くよりもチャレンジで来る傾向にある。また、カウンター時も逆サイドは空きやすいのが特徴的なので狙っていきたい。

山雅もまずは遅攻よりもカウンターを優先し、前線の判断でダメなら組み立てるというのが現実的か。

組み立て時にはこちらの3CBに対して相手も3枚で合わせてくるのが濃厚だろう。ビルドアップ時には相手の3枚の正面に立たないように気を付けたい。

鍵を握るのは左CBの人選。
もし下川の場合はドリブルで運んで数的優位を作る。相手としてもWGはできれば下げたくはないはずなので、左WBとCB(HV)に高い位置を取らせて相手を困らせたい。

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そして、常田の場合は逆サイドのWB狙い。
常田の得意とするプレーであり、逆サイドレーンを捨てる守備の弱点ともマッチするので、有効かつそれほど警戒されていない攻め手として1つ提案したい。

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・最後に希望スタメン

ここからは完全におまけの妄想。これまでのことを踏まえた希望スタメン。

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河合↔常田↔下川で作ってから横山・逆サイドの外山の裏を起点に。前もそこに絡んで逆サイドの阪野・下川にクロスを供給できればいいなあ(願望)システム。

CBがいないので悩みどころは先ほど書いた常田or下川になりそう。2人が同時に出る場合は控えに宮部が入る可能性も。
WBの枚数はいるがスタートで使われる顔ぶれは限られているので、これまでの傾向を元にするならば選択肢は絞りやすい。表原も裏を取るのには向いているので右WB起用でも。
中盤に佐藤が帰ってこない場合は浜崎or米原が代わりにアンカーか。一番攻守に強度を保てそうな組み合わせに。
読めないのは前線。1.5列目起用も増えてきた河合も含めて横一線感はある。怪我の調子が悪くなければ阪野と裏のスペースを突ける横山をスタートにして、後半から田中パ・村越・小手川らとともに戸島・鈴木を柔軟に使い分けるイメージ。

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天皇杯や長崎戦をうけて、どのようなメンバー・設計でくるのか?また相手はどう出てきて、それを山雅がどう裏返すのか?1週間の中でどのような準備を仕込んできたかを楽しみにしたい。

そして、それ以上に重要なのはなんといっても勝ち点3。下位に沈む大宮を相手に勝ち点3を取れるかによってこれからの山雅が左右されかねない。18年のような熱い試合を繰り広げ、なんとしても勝利を。今は苦しい時期だが何とか踏みとどまり、希望をもって後半戦を戦えるように絶対絶対絶対勝つ!チームを信じましょう!!

END

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