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磐田戦プレビュー~美しきフベロ流ポジショナルプレーと狙いたいポイント~

初心に戻れる、戻るべき相手

北九州戦や前の加入など徐々に光明も見えつつある山雅。しかし、勝ち点0は0。ここから"結果"として取り返さなければそれも無駄になってしまう。

前回のレビューにも書いたが今節は同時に降格してきたジュビロ磐田。格上・格下などはJ2にはそもそもあまりないが、去年のライバルで伝統的なチームという立ち位置は心理的には「ぶつかっていきやすい」といえる。

■今年のジュビロ磐田

今年……というより去年の現体制開始時から今のチームスタイルは構築され始めてきており、降格で何人か選手は抜けても今年の方が"フベロサッカー"はより洗練されてきている。

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ここまでの順位を見ると4勝2分3敗で7位と"対磐田対策"をがっつりと敷いてくるJ2チームにやや足止めをくらっている印象を受ける。このあたりはJ1常連の降格組が通る道で"魔境"の正体だろう。

サッカーの内容に話を移すと……フベロ監督の志向するサッカーはポジショナルプレーの原則が強く根付いている。
この"ポジショナルプレー"というのが少々厄介で……単純なポゼッションでもなく、カウンターでもなく、「優位性を生み出すために、それぞれの選手が選手同士の配置や組み合わせ方を考えながら効果的にポジションを取ること」と自分は説明するが、正直100点の説明と言えるかは自信がない(笑)

なので、Numberの記事によるポジショナルプレーの解説を読むと↓

ポジショナルプレーとは、ピッチ上で優位性を確保し、敵のストロングポイントを打ち消し、勝利を手にしていくためのノウハウにすぎないし、監督が目指すサッカーやチーム事情(選手の特徴)、採用する戦術システム、対戦相手によって求められるプレーは当然異なってくる。

厄介というのはこの「ポゼッショナルプレー」というのは監督の目指すサッカーによって異なり、またこちらのサッカー・配置によっても変わってくるので「フベロ監督はポジショナルプレーを重視したサッカーをしてくる」というだけでは非常にイメージが難しく、不親切な説明になってしまう。

長くなりそうなので個人的な分析と見解によるフベロ式ポジショナルプレーの主な狙いと傾向はポイント①で記述する。

・キーマン

唯一全試合先発で、攻撃の組み立ての中心となる上原力也はフベロ体制で軸となる選手の1人。視野の広さを生かした適切なポジショニングと展開力がある攻撃的な選手で前線に顔を出してのシュートやFKも上手い。攻守のハードワークは元々あったが、去年今年で守備強度も向上。微妙な立ち位置をとる相手にミスはまだあるのでそこは狙いたい。

そして、ルキアン・小川航の2トップも怖い。どちらも背負えて裏抜けもできる選手なのでどちらかに人数を割くわけにもいかない。出し手を潰せなければ後ろの選手の負担はかなりのものになるだろう。

■スタメン

<松本>

「全体の配置や距離感を適切に保ちながら優位性を作るサッカー」の裏を返せば攻撃でも守備でも「優位性をどこに作るかを絞らせないこと」が重要になってくる。それを踏まえるとセルジ不在でのベーシックな442はやや読みやすく、適しているとは言えない。磐田に勝利を収めている徳島・京都のやり方も踏襲しつつ、半分希望半分予想で352(33211)でスタメンを組んでみた。

スタメン

(サブ)村山・常田・服部・高橋・吉田・アウグスト・セルジ
(前を右に入れると田中隼と吉田の選択が難しい…笑)

<GK>
すっかりスタメン定着。今節も攻守で忙しい、シンプルなロングボールは少なめで。

<DF>
森下の状態が不安。ラインコントロールが行える選手がいないなら戦い方は見直さなければならないかも…。最低でも浦田・森下・乾(大野)で組めることを願う。

<MF>
右WBは吉田・田中隼と悩みどころだが……役割的には前が適任。左は今節は鈴木を配置する。

ボランチは藤田・中美・久保田のトライアングル。守備ではそれぞれの負担を減らし、攻撃時は久保田にフリーマンの役割を担ってもらう。

<FW>
引き続き阪野が最前線。高木彰が相方として運動量・裏への動きを補完するともに初ゴールも期待したい。

<磐田>

主力のベースがありながらスタメンを入れ替えながらうまくやっている。CBには怪我人?もいることからやや不安だったがベテラン・大井も戻ってきた。2トップの組み合わせにより潰すべきスペースも変わってくるのでしっかりと見極めたい。

■磐田戦の3つのポイント

①フベロ式ポジショナルサッカーの要所を潰す

さて、具体的な"フベロ式ポジショナルサッカー"について。442という基本システムから配置を変化させつつ、相手の出方に応じて形を変えていくが、主なパターンは「上原のサリーダ・ラボルピアーナ(ボランチがCBの間に降りてきて組み立て)」「2トップの手前に入ってチャンスメイクするSH」「得点・チャンスメイクに専念する2トップ」という流れになる。

この3つをスムーズに行わせないためには上原のサリーダから効果的にビルドアップをさせないこと、まずファーストDFとなるFWが重要となってくる。

ここからは具体的な対処案だが……

先ほどのシステムで仮定すると最前線・阪野ができれば蹴れる・運べる伊藤側をSBごと消して藤田に自由を与えられればベスト。

守り方

変則的な動きをするSHの動きを藤田の脇のIH(中美・久保田)がケア。この時、最終ラインから一気に「得点・チャンスメイクに専念する2トップ」のフェーズに移行させるのを常に気にかける必要がある。藤田は縦パスや中央突破を消したい。

当然、この形を続けていけば上原も正直にこちらの誘導するサイドにばかりには蹴ってはこないだろうが後ろの5枚のスライドで対処する。

無理をすることなく、効率的にサッカーを行っていくのがフベロサッカーの特徴でもあるのでこちらも守備で必要以上に動くのは得策ではない。

そして、攻撃もカウンターで刺すのが第一だがそれができないときはWBを起点に

攻め方

中央で中美・久保田が自由に動きまわればSHは中を締めざるをえない。システム的に空きやすい上に前や鈴木ならサイドで時間を作ることができるのでここから浦田・乾も参加できればなおベスト。

磐田相手に組織としての動きで上回るのはなかなか至難の業であるため、鈴木や前のようなサイドの選手でありながら様々な役割ができる"ポリバレント性"のある選手を生かすなど「個の特徴を生かすこと」を意識して、時間の作れる「起点」は確実に確保したい。

(本当はイズマのような原則をぶち壊す変則的FWがいれば面白いが……)

またサイドチェンジはできれば最高だが、リスクのわりには磐田DFは正直あまり崩れない。サイドを起点にするのを防ぐために相手の陣形が偏ったに狙う第2手としてできれば……。

②奇襲をかけろ

ポジショナルプレーに重きを置くことにも難点がないわけではない。

自分と相手に応じて"正しい配置と組み合わせによる優位性を生み出す"ためにはそれだけ相手の観察と分析がいる。

これだけ論理的なサッカーをしているとデータにも表れてくるのか…

<左・磐田/右・松本(Jリーグ公式より)>

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前半の早い時間に失点が多いのは恐らく「相手の仕掛けてくるサッカーに対応できていない時間」にやられているため。後半終了間際は体力的に「正しい配置」を取れなくなっているためか…。

そこでこの時間帯を狙うために352(33211)をスタートで奇襲をかけることを提案したい。得点を取りに行くときに352を採用してきたが、スタートからこの形で始めたことは今年はない。前節は特に先制点を取られないような入りを選択していたが、少なくとも最初の15分は攻勢をかけたい。

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逆に後半開始の時間帯に得点が多いのは元分析官・フベロ監督のもと「分析と修正」が選手たちに伝えられているためと予想する。できれば後半開始と3回の交代機会でシステムや配置を次々と変えるプランがあればベストだが……この時間は"耐える時間"になる可能性は高い。

先制した4戦で全勝、先制されると2分3敗の磐田に対して、"前半早い時間に攻勢をかけて先制し、引いてカウンター狙いに切り替え。選手の配置を変えながら的を絞らせない戦い方"ができれば100点に近い。

③配置エラーを意図的に起こさせろ

正しい位置取りをするには観察と分析が必要と書いたが、正しい配置を取って攻撃・守備を行うことを前提にしているということは「配置ミス」によりその前提が崩れると意外と穴が空いてくる。精密機械ほどちょっとのエラーで大ごとになるようなものだ。

磐田の守備でいうと最もエラーが起こりやすいのは(出てくる選手や相手の配置にもよるが)見た限りだとSH。

狙いたい

そもそもの配置場所の難しさ・システム上のズレもあるが、磐田のSHはこちらのWBにパスを出されるとそちらについていかないといけないため、本来切らなければならない中盤(久保田)のコースを切りきれてない"エラー"を起こすことが度々ある。

ここでSHを置き去りにできればこちらの前6人と相手の6人が同数になる。
恐らくSHがついてこれない時はSB(櫻内)が出てくるのでその裏を高木彰がつく……というようにこちらは先手を打て、相手は後手後手に回らざるをえないはず。

これまではこのケースになると奪われるリスクを恐れて前線へフィードしがちだったが、磐田相手にシンプルなロングボールはかなり確率の低いギャンブルに近い。SH脇の縦に入れる勇気をもって"エラー"を誘発したい。

■注目選手

この試合の注目は鈴木。

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磐田相手には"戦術の幅"と"局面の個の力"は必須だが、あらゆるポジションで与えられたタスクをこなし、優位性を生み出すのは鈴木の持ち味。シュートもアシストもできるだけにいい形でボールを渡してゴールに直結する仕事をしてもらいたい。果たしてこの試合ではどこで使われるか……!

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プレビューは以上です。

どこのチームにも大小あれどポジショナルサッカーの原理は存在するし、安定して強いチームほど徹底されています。

しかし、ここ最近のテーマとなっている"山雅らしいサッカー"とはハードワークをベースとして、質が低くても量を増やすということに重きを置いており、ある意味対極に近いともいえます。

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ここまで戦術のことばかり言ってきておいてなんですが(笑)最低限の戦術とチームとしての共有を携えるのは前提として、相手を上回るために大事にしたいのは"磐田の効率性"をぶち壊す"山雅の非効率性"。

90分全て、5連戦の全てを非効率に勝ちに行くのは無理な話で、この日程でこれを求めるのも酷な話ですが「ここに全てをぶつけて何としても流れを切る」。そんな強い意志をピッチで体現して欲しいです!

END

(画像は松本山雅公式・footballlistaより)

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