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新加入選手を考える~浜崎拓磨・河合秀人~

■魔法の右足を持つ、J1からのシンデレラボーイ「浜崎拓磨」

今年の補強の"異変"をこの選手の獲得辺りで決定的に感じたサポーターも多かったのではないだろうか。J1仙台から伸び盛りな27歳が加入した。中盤の怪我人が多発した仙台で、という注釈はつけなければならないかもしれないが昨年は加入一年目にしてJ1で24試合に出場。

今オフで契約切れ&余剰戦力になったとは思えないので相応の移籍金を叩いて獲得した可能性が高いが、40人近い山雅のスカッドの中で唯一J1で一定試合時間を得ていた選手とあってその分フロントの期待値の高さが伺える。

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そんな浜崎だが、プロキャリアのスタートは全選手の中でも最も出遅れたと言っても過言ではない。出身は大阪で、中高だけではなく大学も地元・大阪学院、その後もJFLのFC大阪に加入ととにかく大阪一筋。

社会人1年目は16試合、2年目も27試合と成績を見るとこの時から飛び抜けた選手とは言えなかったようで、この時期は練習終わりや休日に母校で高校生を指導したり、サッカースクールで週5働きながら土日の試合に臨む生活だったそう。

そんな苦労のサッカー生活でその実力を認められ、2017年にJ2の水戸に加入。この時に水戸で西ケ谷監督に認められたことが山雅的には今年の加入に繋がっているのは間違いない。ただでさえ、出遅れを指摘されることが多い大卒の浜崎は25歳の年でようやくプロの舞台に立つことになる。

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プロ1年目の西ケ谷水戸時代は19試合に出場。田向(現・徳島)がレギュラーとして君臨していたことを考えると上々のプロ1年目となったが、長谷部監督への監督交代後は出場機会が激減。2年目は特別右SBの補強はなかったにも関わらず、出場試合は12試合のみになっている。その翌年も移籍してきた岸田や左が本職の外山に遅れを取り、出場6試合のみとさらに激減してしまう。

これに関してはSBに岸田や志知、ジエゴのようなフィジカル面が優れている選手を起用する長谷部監督のやり方と合わなかったためと推測している(この年の左サイドで外山が志知に遅れを取ったのもその理由?)

しかし、19年のその6試合が運命を変えることになる。ここまで1分も出番がなかったこのシーズン、36節の柏戦で突然の抜擢。監督的にはかなりテコ入れ的な一か八か起用だったようだがJ2ではずば抜けたFP陣、さらに代表の中村航からFKで得点し、1G1Aと勝利に貢献。

そこが転機となり、その後はシーズン終了までほぼスタメン起用が続き、通算ではわずかな出場数にも関わらず、J1の仙台へ個人昇格を果たした。

当然仙台ではJ1は初挑戦。柳や蜂須賀、飯尾など明らかに本職の右の層は厚い状況……。レギュラーとしては計算されてなかったように思うが、中断期間でインサイドハーフやボランチとしての才能を見出され、本職のSBではなく、一貫してIH、2DHの一角として中盤で起用されることに。(先ほど書いたように怪我人の影響もあったが)主力として活躍する期間が続く。

そして、Jリーグファンの注目を浴びることになったのは33節清水戦のFK弾。「骨盤を遅らせることで」GKと壁の逆を突き、芸術的なゴラッソを喰らわせた。

「骨盤を遅らせる、なるほど……」と納得はできたが、よくよく自分に問いかけてみると正直ピンと来ていない。自分で蹴ってみようと思っても全然できる気がしない。

そこでよりフォームのわかりやすい映像を調べてみると……

こんなわかり易い動画が。前傾姿勢でケツを突き出すようにして蹴っている。ので、ギリギリまで球筋を読むことが難しく、周りの体感以上に遅れてボールが飛んでくる。骨盤をわぜと遅らせるというのもあるが、元からそういう独特な蹴り方をしているというのがあのスーパーFKに繋がったのだろう。

とにかくスピードのあるキックが蹴れるセルジーニョ、コントロールと落ちるボールが得意だった宮阪というよりキーパーとの駆け引きがうまかった岩上タイプのキッカーというと山雅サポ的にはイメージしやすいはず

オンプレーではその正確なキックと運動量が持ち味。サイドでは抜ききる前でも正確なクロスを上げることができる。もちろん中盤に入ってもその持ち味は変わらない。

というよりここ近年のサッカー界ではよくありがちな「SB型の選手があえて中央に配置され、サイド⇔中央を行き来することで守備組織を破壊する」というSB的なロールを求められての起用になったというほうが適切かもしれない。逆にゲームメイクや中央での攻撃性能的な純アタッカー的なプレーはまだ課題ではあるが、アタッカーやゲームメイクに長けたタイプと組ませると補完性ができるはずだ。

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プレイヤーとしては前貴之と岩上の中間のような特徴をもっているといえるかもしれない。そうなってくると山雅ではIHや右WB(SB)が主戦場となるはずだが、前貴之との競争になるか、あるいは2人でサイドと中央を入れ代わり立ち代わりしながら相手をかき乱すことになるのではないか。

ちなみに175㎝、70kgとフィジカル面はそこまで強いとは言えず、そこが弱点となることもある。FC大阪から水戸への移籍時は60kgだったのでウエイトアップには取り組んでいるかもしれないが、引き続きフィジカル面の強化に期待したい。

そして、最後に。

浜崎の好きな言葉は「がむしゃらに泥くさく」なのだそう。JFLからJ1まで上り詰めたシンデレラボーイが再びJ1の舞台に返り咲くことができるか、山雅とともにもう一度がむしゃらに駆け上がっていきたい。

■狭いエリアで魅せる、鬼の琉球産ドリブラー「河合秀人」

去年、悪い意味で印象的だった2度の琉球戦。正直鬼だった。思い出したくもないような内容だったが、どちらの試合も先発・フル出場していた左のアタッカーが今度は味方としてアルウィンで戦う。

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大阪府出身で、高校は京都橘に進学。京都橘といえば2013年大会で準優勝、そして仙頭啓矢・小屋松知哉がダブルで得点王を獲得した世代が記憶に新しいが、仙頭の1つ上の代にあたる。
その後は大阪学院大学に進学。この大学を選んだ理由を「パスを繋いで崩していくサッカーだったから」と答えているので当時からそうしたサッカーを好んでいたのが分かる。ちなみにどういう運命か、この記事の上で書いた浜崎拓磨とは1つ違いの先輩後輩の関係(HPには83番が河合、2番が浜崎と書いてある、正直合ってるかは分からないが)。

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余談だが……調べてみると圍、大野、外山、山口とも大学時代、同じ関西リーグの舞台で対戦済みだったので、この年代、そして関西色が強くなっているのが分かる(ちなみにこの時下川も2部にいた)。

そこからプロ生活はJ3鳥取からスタート。ルーキーイヤーから左SHを中心にWB、IHなど様々なポジションをこなし、29試合6G、2年目にも29試合5G2Aと結果を残し続ける。特に2年目にはゴラッソ製造機に覚醒。

代名詞である左からのカットイン、

ハーフスペースで受けての一人交わしてズドン、

パス&ゴーでゲット

と、芸術的かつ知的なゴールを重ねる。これだけ得点感覚があれば2桁近く取っていそうだが、意外にもキャリアハイはルーキーイヤーのJ3で6得点。鳥取時代は決定率は10%を超えているのでこちらの数字もそれほど悪くないが、このあたりはハイライトの侮れないところ。

このあたりはチームの順位は15位、17位、長野で10位、琉球で14位、16位と結果がついてきていないので相手に主導権を握られるチームが多かったのは影響はあるかもしれない。
(これまでのチームに比べれば)タレント揃いになっている今年の山雅で、タスクに追われてこの得点感覚は埋もれてしまうのか?それともサポートを得て覚醒するのか?良くも悪くも読めないところはある

話は逸れたが、その翌年は長野に移籍し、レギュラーとして26試合に出場。こちらでもわずか3G(うち1PK)という得点的には物足りないものになっているが、ドリブルは健在。そこからJ2・琉球に引き抜かれることになっている。

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琉球では左サイドを主戦場とするミスター琉球・富所の存在によって先発は14試合に留まった(途中出場も14試合)ものの、1年目からドリブルポイントトップを記録するなど存在感を示す。
今年は富所が開幕前に怪我で不在、フルコンディションと言えなかったのがどれだけ影響したかは定かではないが、開幕スタメンとして名を連ねると、中断期間で1度は離脱した後は復帰した後からは左SHとして不動の地位を確立。テクニカルな選手の多い琉球の中でこれまで同様に鋭い仕掛けやパンチのあるカットインシュートでチームにアクセントを与え続け、さらにこれまでの印象と違い、即時奪回を目指す琉球の中で守備でも高い貢献度を見せたのが変化としてあったように思う

ドリブルが目立つが、球離れが悪いような印象はなく、今年の琉球の一員としてやっていただけあってサイドでのプレーだけではなく中央でのオフ・ザ・ボールの受け方もうまいのは山雅で使われる上で彼の特色になりそう。細かいスペースでも受けてドリブルを開始できるので、試合を見ていてもハーフスペースより内側で仕事をしていることがほとんど。

具体的にあげるとホーム山雅との試合でもスプリントしてゴール前を狙ったり、

細かいスペースで半身で受ける意識が高かったり

ほぼ中央までいって展開したりと

……この試合だけでもその特徴を存分に発揮()

他にもこのチャンネル(CBとSB間)での貰い方や

徳島に対してプレスからゴールをアシストしたりと

去年のやり方に当てはめるならWBでいうと高橋諒というよりも中美に近いものがあるかもしれない。そして、これまでも書いたように琉球での仕事はサイドライン際というよりもボールサイドに密集しての仕事が圧倒的に多い。

柴田山雅ではWBも比較的自由に動くほうだが、より特徴を生かすならIHに置くほうが良さを発揮できるような気がする。(4バックならそのまま左SH)

今年本当に苦しめられた琉球産ドリブラーが山雅のサイド、またハーフスペースでどのような違いを生み出してくれるか。タレント揃いのチームの中でどう飛躍するのかどうか。楽しみにしたい。

END

(画像はサッカーダイジェスト、ゲキサカ、ベガルタ仙台公式、沖縄タイムス)

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