京都戦プレビュー~中央ラインを抑えろ!連戦最後の戦い方は…?~
5連戦の最終戦。山雅的にはチームもサポも苦い思いをし続けた連戦であったが「勝つこと」への意欲を失ってはいけない。チームと同じくサポーターも「次は絶対勝つ」と強い気持ちで臨むことが真の一体感ではないかと思う。
さて、今節の相手は京都サンガ。開幕前は優勝候補の一角として挙げられ、現在も5勝5敗3分の6位と第二グループにつけている強敵。そんな強敵を相手にいかに勝ち星を挙げるか。試合の展望と共に分析していきたい。
■今年の京都サンガ
昨年は8位で昇格プレーオフ進出を逃し、色んな意味でインパクトの強かった中田監督が退任。J1・J2での監督経験のない實好監督が就任するという少々意外性のある人事を行う。MF仙頭、MF小屋松、FW一美も流出するなどマイナス面も多かったが、違った点のプラスが多い。
コネクションの強さは實好監督の強みになるかと思われていたが、自ら交渉で熱意を伝えた結果「話をした選手はみんな来てくれた。断られた選手はいない」と話すほど監督の希望通りの補強ができた模様。元代表の李、森脇、J2では反則レベルのウタカ、バイス、他チームの有望株だった飯田、荒木、曾根田と個の力を持った選手を新加入として迎える。
これだけタレントを揃えるとどのようなチーム作りをするかにも注目が集まるが實好監督のチーム作りのアプローチは、最初から「ポジショナルプレーを意識したアプローチを行っていた」中田前監督よりもどちらかというと布監督にやや似たものを感じる。特定のスタイルや型にはめるのではなく、選手の強みを出すのにある程度自由を持ってやらせて、そこで出た問題については修正を施していくというチーム作りを行っている印象だ。
ここまでのチーム作りの上での違いもいくつか挙げれるが……軸となる選手が定まっていることで共有イメージができている点が1つの違いで、庄司が組み立て、バイスが展開し、サイドは単独突破を仕掛け、ウタカが点を取るという1つの共通イメージのもと、結果もそれなりについてきている。これは監督の理想の補強ができたことも大きかったと思う。
※チーム作り以外の点については後述
・キーマン
まずはやはりJ2最強ストライカー・ピーターウタカ。36歳という年齢や守備面がネックになってくるが、点を取ることに関しては恐らくJ1でも結果を残せるだろう。1試合で4点も取ってしまうこともあるので抑えることができないとその時点でほぼ「詰み」。しかもどこのチームもかなりの対策と準備をしてウタカを抑えにきている中でこれだけ点を取っているので(それらをした上で)中の選手でどうにか抑えなければいけない。
そして、こちらも「J2最強DF」の話題になれば必ず名前が出てくるヨルディ・バイス。機敏なタイプではないのが弱点にはなってくるが、パワーは規格外でフィードもうまい。そして脅威なのがめちゃくちゃ攻撃センスがある点である。クロスやシュートの精度は高く、得点に直結する働きをしてくるので注意が必要になってくる。
山雅が守備に人数をかけすぎてバイスが自由に攻撃参加できるという状況は避けたい。"守備のために前線に選手を残す"選択ができればいいのだが……。
■予想スタメン
<松本>
予想スタメンに入る前に……これまではポジション毎に考察しながら理想(提案)と現実をごちゃまぜにして中間のようなスタメンを組んできたが今回はやり方を変えて相手との関係性を踏まえながら2パターン考えてみる。
・4バック(提案形)
ここ2試合評価を高めているセルジ・杉本・アウグストのユニットの前に阪野を置いた形。山雅のCB・ボランチは捕まりやすい代わりに「SBからゲームメイクする」という明確なスタート設定ができるのと相手のIHを強制的に走らせることができる。守備で2CB2DHが粘れるか、中3日で4バックに戻せるかが気になる点。
・3バック(より現実形)
後ろの3CB2DHである程度余裕を持って保持できる形。守備はこちらのほうがやりやすい。保持時は左右CBの前・常田→シャドーのセルジ・アウグストにボールを通すことができればチャンスになりやすいが……。乾→前、藤田→米原の入れ替えでどれだけ変わるか?が勝負になってくるだろう。
<京都>
元山雅・安藤が前節復帰。守備の安定度は増してきそう。右の飯田が石櫃、ウタカの相方が野田or宮吉の可能性もあり。
■京都戦の3つのポイント
①京都のスタイルを崩せ
「山雅も京都も特定の型にはめるより選手の良さを出すようなある程度自由を与えたチーム作りをしている」と述べたが、その影響か自然な流れか前監督のスタイルの継続路線になりつつある。そのため監督のアプローチこそ違えど、京都は中田監督の「ボールを大事にする」というベースの部分は継続されている。
選手の配置としては距離感が近かったり遠かったりまちまちだが、どこのチームに入っても高いポゼッション率にしてしまう庄司と徳島でも驚異的な展開力を発揮していたバイスに支えられている部分は大きい。
山雅としてはまず一つは庄司と3CBの分断、バイスのロングボールによる展開を防ぐことである。京都は比較的3CBで幅を取らない。ショートパスで釣りだして一発サイドチェンジというビルドアップを得意とするので3421なら……
庄司の使いたいスペースを前3人で消しながらバイスにできるだけボールを渡さないやり方を徹底する。CFの選手はプレッシャーをかけ、横に散らしたらできるだけ中に戻させないようにサイドに誘導する。
そして、右の飯田(石櫃)は元々運動量豊富なSB型、左の荒木はWG寄りのサイドアタッカー型の選手になってくるので、京都から見て左肩上がりがちになるのも特徴。飯田はビルドアップで最終ライン付近まで戻ってくることが多く、荒木はサイドラインに張って勝負したがる。
そのため、こちらの右サイドは高い位置でドリブルをされそうな時には右CBとチャレンジ&カバーをはっきりさせる、そして左サイドはとにかく走り合いのスピード勝負に勝ちたい。ミラーゲームを仕掛ける場合、ここの1VS1の駆け引きも重要になってくる。
そして、なんといっても怖いのはさきほどあげたピーターウタカ。はっきり言ってこれという対処法はない。とにかく前を向けるスペースを与えないこと、人をかけてでも潰すことに尽きるだろう。守備に献身的な選手ではないのでCB間でボールを回して守備で走らざるをえなくさせるというのも1つの手ではある(先制するなど山雅側に余裕があればの話だが……)。
②アンカー・庄司の両脇をどう狙うか
山雅の攻撃においてここが最大のポイントになる。3322のアンカーの両脇というのはこのシステムの定番の弱点で、去年の反町山雅式3322は2トップとIHの運動量で藤田の両脇を何とか消してきたが、京都の場合は明確な対処はできていない感はある。特にトラジション時は狙い目になってくるが、ウタカがあれだけ攻撃で結果を残してくれてると割り切ってしまうのも分かる。
具体的な狙い方として
・まずは現実的に用いてきそうな3421の場合。
これは非常に分かりやすい。アンカーの両脇にこちらのシャドーを配置すると数的優位になるので狙うまでもなく、自然とどちらかが空く。ただ問題点としては最初から空きすぎている点。ほぼ100%CBが一人上がってくるかIHが下りてくるかで対策が取られるだろう。
・そこで提案したい4231の場合
庄司をセルジにあえて1対1で付かせ、数的同意にしておいてボールが来た瞬間に人数を加える形。
システム的にフリーとなるSBから攻撃をスタート。セルジには庄司がついているが、ターンは難しくても両SHがフォローに来るまでの時間は稼げるだろう。SHは中央を横断するようにフォロー。WBは恐らく中央まで付いていくという決まりはないため一時的にSHはフリーに。
その間にSHにボールをスイッチ(杉本がセルジと行うスイッチからのポジションチェンジのイメージ)。そこから本来とは逆のサイドで杉本・高橋とともに攻撃を仕掛けるという形。これをするとボール保持者に誰が行くかが非常に難しくなる。
山雅の両SHは京都のWBを、セルジにはアンカーをあえて最初から付かせておいてボールが入った瞬間にポジションチェンジで5バックの弱点を狙うやり方も崩し方の1つとして提案したい。(ただやはり中3日でここまで狙いを持った崩しができるかが一番の問題になってきそう)
アンカー脇を最初から数的優位にしとくのか?あえて空けておくのか?どちらのやりかたにしても要はどこかで優位性を作りたいポイントとしてアンカー脇は意識しておきたい。
③連戦の最後。フレッシュな選手をどう生かすか。
京都戦の前節に目を移すと9人を入れ替えて主力のリフレッシュに当てている。一週間しかない休息で完全に主力の疲れが回復したとは思えないがそれでも山雅よりも状態はいいはず。
となるとよっぽどメンバーを総入れ替えでもしない限り、山雅は90分間ハードワークすることを前提としたゲームプランを組むのはあまり賢明ではない。相手に大半の時間、ボールを支配されることは想定しつつ、どこで監督がスイッチを入れるか?選手はスイッチを入れた時間帯に点を取れるか?が勝ち点3を取るポイントになる。
前節はギアの入れ方を少し誤った感はある。セットした守備は比較的できてきているため、耐えて耐えて勝負所で一刺しできるプランを相手の状態も見ながら組んでいきたい。ベンチメンバーの組み方にも注目。
(ジャエルが試合に出れる状態であるなら)ベンチ入りはイズマorジャエルという選択になってくると思うが、イズマの投入もインパクトがやや薄まりつつあり、閉塞感がでてきたのでジャエルの復活も可能性はある。
前節、「選考」→「主力の決定」に入りつつあると書いたが、再び控え組の選手にチャンスが来ることも考えられる。当然ながら控え組が結果を残しているチームは強い。ブレイク中の北九州・ディサロ燦シルヴァーノもなんと第7節までは完全に控え組で、先発は0だった。チームとして結果を残すのも大事だが、そろそろ個人でブレイクする選手を見たいところ……。
■注目選手
注目はアウグスト。
ここ最近の発見としてこの選手のことは無視できないだろう。前節は守備に追われ、福岡戦ほどのインパクトは残せなかったが、ボールを受けれて、運べて、シュートも狙えるアウグストの使い方は直近の戦い方では注目ポイントになってくるはず。一人で局面を変えられるポテンシャルを持つこの選手の初ゴールに期待したい。
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プレビューは以上です。ビルドアップやポジトラ時の解決法、深さを作るべきという前節を踏まえた話は前記事にて……↓
相手を分析しつつもまずは自分達ができることをやっていかなければならない段階です。一生懸命やれば結果がついてくるというわけでもないですが、そこから活路を見いだせることもあります。「一生懸命やっていない選手はいない。そこは汲み取ってほしい」という橋内の言葉を信じて、前進、そして勝ち点3を持ち帰ってくれることを期待しましょう。Onesou1!
END