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山形戦レビュー~柴田体制初勝利をもたらしたハードワーク~

ミスで負けることも勝つこともあるのがサッカー

勝ち無し脱出、愛媛戦以来のアウェイ勝利、今季初の3得点、シーズンダブル達成、そして何より柴田監督のもと初勝利をあげられたのはこの1週間の準備期間においては大きい。

もちろんミスに救われた部分もある。シュート数は金沢戦と同様の差があり、徳島戦よりも差をつけられている。ただサッカーは元来"ミスのスポーツ"である。大抵は致命的なミスの少ないチームが勝つ。そういう意味では勝つべくして勝った試合と言ってもいいだろう。

順位表をみると「昇格」という目標は霞つつあるが、可能性のある限り登り続けることを選ぶのがあるべき姿である。まずはまだ達成できてない"連勝"を目指していい準備をしていきたい。

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〜素人採点〜

■松本

村山 7.5
これまでの試合を振り返っても3点取れたことよりも先制されなかったことが大きい。今日もビックセーブに救われた。

橋内 6.5
自身のパフォーマンスは比較的良くは感じなかったがそれでも一定以上の活躍を残すのが実力者。フル出場するところまで戻ってきた。

大野 7.5
前節の失点もよぎるようなポカをスライディングで防いだシーンは理屈抜きに熱かった。得点シーンも含めて大野の持ってる流れが来てる。

常田 6.0
今日は良い意味で目立たなかった。が、浦田も復帰してきているのでプレーの水準をあげていきたい。

米原 6.5
3戦連続先発。軽いプレーが減ってきている。ビルドアップの停滞感が少なくなってきてるのは米原の貢献度は大きいので敵陣での攻撃の関わり方を向上させたい。

藤田 6.5
反町式352のアンカー時とは違い、攻撃にも走力を使わなければならないシーンも多かったがゴール前に顔を出すなどさすがの献身性。後は疲れてきた時にどれだけクオリティを落とさずにやれるか。

前 7.5
この試合だけで左右IHとアンカーをこなし、藤田とのバランス感覚も良かった。縁の下の力持ち的な役割が求められるポジションだが結果まできっちりと残す。個人的にはMOM。

鈴木 5.5
両チームの都合もあり、やや自重気味のプレー。守備では数的不利を作られるシーンも多かったので難しい試合になった。それでも狙い通り、ゴール前に入るシーンも作れたのは好材料。

高橋 6.5
単純に信頼度があるのかそういう指示があるのか左から攻撃を仕掛けに行くときも人が寄って来すぎない。セルジとフィーリングが合うのは今後に向けても楽しみ。

セルジ 7.0
1G1Aの活躍。リンクマンとしてではなく、ゴール前で活躍させるのが明らかに良いのが分かる。チーム全体でセルジをコントロールしたい。

阪野 6.5
相変わらず孤立気味なのは気になったが阪野自体の動きは悪くない。エースとしての仕事に力を注ぐためにももう少し周りがサポートしてあげられると良いのだが。。。

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(途中出場)

中美 6.0
リード時だったのでまずは守備からという入り。中盤を活性化させたが、爪痕を残すには至らず。

山本真 6.5
復帰後は攻撃で目立つことが多かったが今回はアンカーを支える気の利いた守備でも貢献。前にプレスをかけにいきたがる中美とうまくバランスを取りながらリードを守った。

山本龍 5.5
終盤の右攻めに苦労。危ないシーンも多かったが何とか粘り切ったのでまたひとついい経験をしたということで……。

服部 5.5
何度もスプリントを繰り返すのは苦手なのかも……。2点のリードがあったので(阪野の負担を考えると)もう少し早い時間に投入されるように信頼を勝ち取りたい。

アルヴァロ 6.0
故障明け久々の出場。守備面が課題としてあるが守備の労を惜しまずやってくれているので相手に圧力は与えられていた。352になったことがどう出るか。

柴田監督
戦術的に穴がなかったわけではないが、「セルジが下りてくる点」や「リスクのある横パス」などの前節の反省を生かして戦い方をはっきりと準備してきたのは伝わってきた。勝利と共に「コンディション調整」「メンタル面」を前進させることに成功している。この1週間で何に優先的に着手してくるかも注目したい。

■山形

連勝中かつアルウィンでも負けているのでメンタル的には挑みやすかったはずだが、山岸不在(移籍)、怪我明けの三鬼の先発などキーとなる選手の不在のところでうまくいかなかった感。左サイドを攻略する狙いはあっても中に充孝しかいないというシーンが多々あった。

あとは失点が「安すぎた」のは間違いないが、後ろからきっちりと繋いでいくサッカーをしていく過程では今日のような事故は織り込んでいかなければいけないかもしれない。山雅と同じくなかなか結果が出ていない状況だが、元コーチとして少しでも長い目で見てもらえることを願う……。

~戦評~

■反町時代から変化していく352と課題

解任直後の徳島戦から、反町体制の型を借りつつ布体制のサイド攻撃やコンパクトな守備を踏襲している柴田監督。しかし、この試合ではそこからさらに柴田流(西ヶ谷流?)にアレンジを加えている。

(リーグとしての立ち位置や力関係は違うので完全なものではないが)アンカーにレジスタ(司令塔的な選手<ピルロ>)を置き、IHに運動量のあるダイナモ(運動量豊富で縦横無尽に動き回る選手<ビダル・ポグバ>)的な選手を置くのはなんとなくコンテ的な組み合わせ……。細部を詰めるとツッコミどころは満載だが、アンカーの役割が全く異なっているのは伝わるはず。

さて、この試合の相手は山雅の選手の特徴も把握しており、分析も怠らない石丸監督率いる山形だったことから強みとともに弱点も多く見えた。

・攻撃(保持時)

まずは攻撃面

自陣からの組み立てでは布時代から取り組みつつあった1DHを軸にしたビルドアップの形が作りやすいのは352(3142)のメリット。DHのどちらがアンカー役になるのか?誰が下がるのか?はっきりしないもしくは適材適所でないことが多かったのが、「芸術的」と評されるビルドアップをもつ米原がアンカーに収まった。

相手が前線2枚で追い、後ろは44ブロックで対応してきた時は⇩

ビルドアップ2

(前半途中までは前・藤田逆でした……)

こちらの中盤3枚に対して相手のDH2枚+SHで見ないといけないため優位性ができやすい。米原のコースさえ空けば大抵は奪われることなく、ボールを回すことができていた。

そして、前線3枚追い、または米原のコースを阻止するような形を取ってきても⇩

ビルドアップ

(同じく逆でした……)

セルジがかなり低い位置まで下りて展開。金沢戦のようにCBが付いてくるor受け渡しが行わなければセルジにより中盤に数的優位性ができるため、そのまま逆にボールを入れる時間はできた。

ただこの時、前線は阪野1枚になるデメリットはある。セルジが下りてきているのにロングボールを入れるシーンはたまにあった。

そして似たような欠点はアタッキングサードにも⇩

ゴール前

前や藤田も積極的にボックスの中に入ってはいたが、それでもゴール前の迫力という意味では物足りないのが正直なところ。このメンツでは逆WB鈴木が走力を使って中まで入らなければ五分以上にはならないだろう。両IH、そして左攻めが多くなると鈴木はかなりの活動量が求められる。

・守備(非保持時)

非保持時は基本的には532が基本系となる。しかし、中盤の3はこれまでになくフラットで、中央ゾーンをアンカー・IHで横割分担していた反町532とは違って5レーンを3人で縦割分担している感じだった。その証拠にアンカーの米原が正面の相手にプレスに出ていくシーンが何度かあった。このメリットとしてアンカーの横の活動量はかなり抑えられる。反町532のアンカーは「アンカーの藤田過労死システム」と言われるほどアンカーの負担が大きかったが今回の532ではIHがかなりの広範囲をカバーしていた「IHの前・藤田過労死システム」(詳しくは後述)。

<反町352のブロックイメージ>

横割り

<今回の352のブロックイメージ>

縦割り

ただこれだとずるずると下がるだけになっていまうので例外もあり、前や藤田が相手の最終ラインに積極的にプレスをかけた時は残り2枚でこれまでの2DH(523)のようになっていた。

ここでのデメリットとして3枚フラットに並んでいる形から前線に行くにはかなり距離がある。大抵はプレスが遅れるため効果的にはならず、逆に空いた場所からピンチを招いていた。

■5レーン全埋め5バックの弱点を突いてきた山形

もちろん完全なものではないにしても、ここ3試合で3失点とこれまでと比べたら守備は整理され、かなり失点は抑えられた。(毎試合失点はしているが……)

ピッチを5分割にして考える、俗に言う5レーンを人数をかけて埋め、蓋をするような形を取っているのでこれまでの山雅らしいといえば山雅らしい人海戦術的な守り方になっている。

ただ「橋内・高橋の復帰で単純に個人能力が上がった」「守備の問題点が新たな形になったことでぼかされている(バレてない)」という要素もある。戦術的にどれくらい強度が高まったかはまだ楽観視できない段階であるのは正直なところだ。

まず問題点として出てきたのはサイドの守備の対応。もしかすると石丸監督は事前にスカウティングで狙っていたのかもしれない。金沢戦の時もだが、サイドの守備はWBの個人対応に依存してる感がかなり強い。鈴木・高橋ならばそう簡単にやられることはないと思うが、この試合ではSH、SB(もしくはヴェニシウス)の2枚もしくは3枚の関係で数的不利を作られ、崩されている。

ピンチ

つまりはサイドのレーンに相手が2枚並んだ時の対応がどうしても後手を踏んでしまうのが今後狙われる弱点になってきそう。

左右CBの大野・常田はロングボールを使われた際の裏対応はここまでうまくやれているが、アタッキングサードではまだ中の選手に突くのが精いっぱいでフォローも遅れている(5レーンを5人で分担して埋めるという守り方なのでそこを捨てる判断の難しさもある)

まだそこまで突き詰められてない可能性が高いが、IHに裏まで対応させると厳しいことも出てくるので最終ラインでスライドしてサイドの人数を合わせるなり修正策を打ち出したい。

■IH過労死システムではある

今回の352は反町&布システムからまた新たな変化が加わり、ビルドアップの強化だけではなく、配置的にも中央からの攻撃にはかなり強くなった。

ただ試合の最中にも解説の方からも触れられていた通り、IHにかなりの負担がかかる。

ここから涼しい季節になるのに加えて、システム変更で中盤は過多気味になっており、+佐藤和弘も加入したので理にかなっているといえばかなっているのだがそれでも交代枠の5枚中3枚を中盤3枚で使いたくなるほどの消耗が大きいシステムなので長期的に見ていくと少し不安はある(笑)

このままいくとも限らないので現時点では何とも言えないがどれくらいまで保てるか見守りたい。

■次の1週間にむけて

さて、現時点(水曜日)まで動きがないので監督・コーチはこのままいくのが濃厚だが、「少しは良くなった」みたいな悠長なことは言ってられない。毎回言っているように結果が付いてこなければ本当に立ち直ったとは言えないし、昇格の可能性も少しでも多く残したい。

次の5連戦ブロックは磐田・水戸・琉球・大宮・北九州と前半戦4敗1分という散々な結果だったチームとの対戦となる。怪我人・コンディション不良のメンバーも戻ってきており、チームの雰囲気も良くなりつつあるはず。1週間を挟んでの変化、新加入・佐藤和弘などサポとしても楽しみな要素も多いので勝ち越しを目指して全力でサポートしていきたい

END

(画像は松本山雅公式より)



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