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1/4を消化したJ3リーグ全体を振り返ってみた

J3リーグが始まって早2か月半。
まずは開幕連勝した後、序盤の山場(鹿児島・相模原・岐阜・宮崎)を乗り超え、熱い熱いダービー2連戦もひとまず無敗。県の頂点であることを示し、昨日は天皇杯1回戦・北陸大学を相手にここまで出番の少なかった選手たちで挑み、何とかJ1ジュビロ磐田への"挑戦権"も手にした。

個人的な話としては今週(先週?)は長野戦のレビューを週末までに書けず、北陸大学戦も中継がなかったこともあり、急遽特別企画として、全日程の26%(9/34)を消化したJ3リーグ全体を振り返っていこうと思う。

山雅にフォーカスした振り返りは山雅についてよく一緒にお話しさせてもらってるおぐちさん、

いぬねこさん(最後の方)、

が書いていたりするのでまだ読んでいないという方はぜひとも。


(……ステマです)


■J3を順位表で振り返る

・3グループに分断されつつある

まずは現時点の順位表。

鳥取×愛媛、八戸×相模原が未消化

J3リーグは現在ざっくりと3つのグループに分かれており、未消化分の結果次第では下が分断されて4つ目のグループが生まれる可能性もあるといったところ。そうはいってもまだまだグループ間の感覚は狭く、1節あれば変動が起こる。

第1グループは一進一退だが、各チームここまで1敗のみ。この集団についていくためにまず連敗(勝ち無し)は絶対に避けなければならない。
そこに加わりたい第2グループは連勝ができればジャンプアップの可能性はあるが、上がコケるとも限らないので「直接対決」はキーになりそう。逆に第2グループから脱落するようだと自力での逆転昇格は難しくなってくる。
第3グループはそろそろ決断を迫られるフェーズに。昇格を目指すならば何か大きな変化は必要になってくるが、目標の下方修正をするのも1つだろう。

・各チームの序盤戦雑感

続いて各チームの序盤戦について。
首位を走るのは勝ち点20でわずかに先を走る鹿児島。5位長野戦で初黒星、他には3位いわき、6位宮崎には引き分けだったので上位戦で苦戦しがちだが、4位山雅相手には白星。中下位のチームからはきっちりと勝ち点3を取り切れているのは強み。15得点7失点とバランスも良い。あとはJ3で一番の少数精鋭スカッドなのがどう影響するか。続くのは9試合でわずか3失点と圧倒的な堅守で勝ち点を積み重ねる福島。主力の離脱も多く、コロナによってギリギリのメンバーで試合に臨むこともあったが、メンバーがある程度入れ替わっている中でも昇格圏をキープしており、個人的には"一番昇格に近い序盤戦を過ごしたチーム"と見ている。

昇格圏と同じ勝ち点につけるのは3位・いわきと4位・松本。昇格組ながら下馬評の高かったいわきはJ3でも脅威の存在に。去年の主力をベースに有馬や星ら上カテからの補強組、家泉や鹿野のルーキー組をうまく組み込んでいる。ただ去年のキーとなる選手たちの代わりを見つけるのは難しそう、対策が整ってきた時に失速しがちな昇格組の宿命を乗り越えられるか。逆に最下位降格で下馬評は高くなかった4位松本だが、若手をうまく組み込みながら第一グループにつける。得点数トップを走っていたが、ここ3試合は無失点試合を続けており、上位では唯一形が固まっていない(固めていない)独自路線を歩んでいる。今後はチーム得点王の横山に続く得点源やセットプレーがカギを握りそう。

第2グループの先頭5位につけているのは長野。開幕から4戦負けなし7得点と第1グループに食い込んできていたがここにきてやや離され気味。シュタルフ監督のもと、複数のシステムを取り入れて相手の戦いに合わせた戦術を行っているがここ5戦はわずか3得点とフィニッシュの部分で苦戦しているのがその要因と見られる。クロスを主体とするなら宮本は代えがたいがどう手を加えるか。6位は多くの主力を抜かれながらここまで1敗の宮崎。ゲームを支配することに関しては去年から一級品、選手を抜かれながらこの位置につけるのは地力を感じるが、9戦5分けと引き分けの多さでやや遅れを取っている。勝利を挙げているのも八戸・沼津・YS横浜と個の力で上回っているチームなのでここからの福島・長野・富山(・鳥取)・岐阜・いわきと個の力を持ったチームを相手に結果を残していきたい。7位藤枝はここまで12得点11失点と昨年(42得点42失点)に続いて得点も失点も同じだけしている。GKから右に左にとにかくダイナミックにボールを動かしていくのが特徴的で、試合展開もそれに引っ張られることも多いが、波が大きくなりやすいスタイルとの付き合い方が難しいところ。8位は山雅が次節対戦する今治。こちらもシュート数・被シュート数がともに最多と藤枝とは違う意味でのダイナミックさがあるチームだが、その一方、「1試合ごとの総得点(得点6+失点7)」はリーグ最下位でかなり目立った数値に。京都からの中川は当たっているが、インディオ、ラルフ、モハメド・アダムと外国人組がここまでは期待に添えていない。

「J3の銀河系」と言われるなどオフの話題の主役になっていた岐阜は3連敗(松本・讃岐・藤枝)が響いて9位に。三浦監督時代は高い保持率を誇り、守備も安定していたが、岐阜に合わせてがっつりと構えてくる相手を上回れずに喰われてしまう形が多かった。横山監督になってからまずは守備の整備から着手。このタイミングで長野(・八戸)・鹿児島・福島・宮崎と続くのが吉と出るか凶と出るか。10位は同じくオフで目立った補強をしながらも出遅れ、ようやく復調の芽が見えてきた富山が続く。開幕戦勝利の後、4戦勝ち無し(3敗1分け)とスタートで躓いたが、ここ4戦では藤枝・鳥取・YS横浜を相手に3勝を挙げて浮上気味。この波に乗ってリーグワースト3の失点数(16失点)を減らしていければ……。11位は活動休止と多数の負傷者に苦しみながらも奮闘している沼津。各チームアクシデントが多い中でも恐らく最もやり繰りに苦労しているチームだと思うが、岐阜・北九州・長野などのタレント力のあるチームを相手に勝ち点3を奪っており、ワースト2位だった昨年との違いを見せている。少ないチャンスを確実にモノにするスタイルを持続していきたい。

もうひとつ昨年の最下位から違いを見せているのが12位の讃岐。失点数とクロスは多く上がるが結果に繋がっていなかった得点数ともに課題を抱えていたが、キャンプから積み上げてきたハードワークと前線のターゲット補強の成果が出ており、新加入の松本(孝)が得点ランク2位の活躍。夏場も走り勝てるチームになれれば1桁も見えてくる。13位は得点力不足に苦しむ愛媛。残留争いにむけて縦に早いサッカーをしていたところから石丸監督のもとで新たなスタイルを生み出そうという方針は見えたが、開幕3連敗と出遅れ、一度連勝を挟んだものの、その後3分けとまだ立て直したとは言い難い状況が続く。ここまでは3試合出場(合計18分)のみの17歳・行友の2ゴールがチーム最多。どこを得点源にしていくかは興味深い。残留組では北九州も14位と奮わない。まずは自陣からしっかりと繋いで相手の守備のズレを生み出していくスタイルは今年もはっきりとしているが、相手のズレを生み出す前に自陣でロストしてしまい、カウンターで沈むパターンから抜け出せずにいる。直近の八戸戦では65%の支配率を記録しながらチャンスはそれほど作れず、シュート数も2-4と上回られた。「辛抱強く積み上げていく」か「順位を取りに行くか」の選択の時期かもしれない。

成績の「理想と現実」のギャップが最もありそうなのが15位相模原。昨年に引き続き、上のカテゴリーから経験豊富なベテランや世代別経験のあるレベルの若手を補強し、様々な形・組み合わせを試し続けるも一向に結果がついてこず。前線の形が特にハマらないうちにDFリーダーの水本を負傷で失ったのは泣きっ面に蜂状態だった。新監督は5/22時点で決まっていないがどれだけネームのある後任を連れてくるかは注目したい。前節大きな1勝をあげ、ここから巻き返しを図りたいのは16位八戸。プレスとブロックを使い分けながらカウンターとセットプレーで仕留めるスタイルで握り倒してくる藤枝・北九州相手に勝利を挙げたが、沼津讃岐いわきと苦手としているタイプもはっきりしているので相性の悪い相手からどう勝ち点を取っていくか。昨年に引き続き最多失点となっている鳥取は17位に。失点数は仕方ないのかもしれないが今年は得点数がそこに伴ってこないのでその分順位がついてきていない。とはいえ、ここ3試合は富山(2-3)・福島(0-4)・岐阜(0-3)、さらに天皇杯でもヴェルスパ大分に0-4で敗戦と3失点以上が続いているのはさすがに苦しい。週末のいわき戦を前に得点力不足に苦しむ愛媛戦(未消化分)があるのでここまでに立て直したいところ。最下位は初勝利が遠いYS横浜。開幕で岐阜相手に善戦しながらもその後は7連敗。自陣からしっかりと繋ぎ、保持にはこだわりを見せているが、シュート成功率最下位(3.3%)と得点を取り切れず、逆にセットプレーからの得点が1、失点が8(全得点の44%)と1点に泣くようなゲームが多い。何よりもまずは1勝を取って気を楽にしたいが……。

■直近5年の順位表で比べてみる

・昇格チームは9節でどこにいた?

さて、次はこの順位表をここ5年で比べてみる。

この時点で独走していたのは20年の秋田(27)のみ。
9節時点で1位の20年秋田、19年北九州(18)、17年秋田(20)がそのまま優勝。対して、21年熊本(18)は3位、琉球(14)は7位から逆転で優勝している。
だが、21年熊本はわずか2差であることを考えると「現在の第1グループから優勝チームが出る可能性は高い」とこれまでの傾向からは言える。

ただし、昇格チーム(2位以内)というところまで見ると、17年栃木(19)以外は、9節時点で5~9差ついているところからの逆転。逆転昇格の事例は一気に多くなる。中でも19年群馬(9)は13位から2位の讃岐を最終的に捲って昇格を果たした。今年に当てはめると北九州や愛媛の位置(9)から、第1グループを捲って逆転昇格というのは過去5年で見ても起こっている。

・今年は格差が広がっている!?

次に今年のJ3の順位のばらつきはどうなっているか。

9節時点での順位表から標準偏差(=データがどのくらいの広がりや散らばりを持っているか)を出してみると、秋田が独走していた20年が案の定最大に。続いて今年が最大のバラつきが生まれている年になっている模様。

秋田のような独走しているチームがいないことまで加味すると「独走するチームがいないにも関わらず、全体としては勝ち点にばらつき(=格差)が生まれている年」であることが分かる。

ここから格差が広がり続けるかは断言できない部分だが、うまくいっているチームとうまくいってないチームははっきりとしている。

■歴代昇格チームの成績は!?

・現在の山雅と比較してみる

続いては歴代の昇格チームの第9節時の成績を比較してみる。

勝ち数平均は4.8なので山雅はそのラインはクリア。ここ5年を見ると21年の吉田秋田の9勝が抜けている。また、現時点で勝ちが先行していないと厳しいイメージだが、高澤、飯野、岡村、吉田ら大卒選手を育てながら昇格を果たした布群馬はなんと現時点で2勝4敗、負け越している状態からも昇格した例となっている(が、逆に言うと伸びしろを見出せないと厳しいかもしれない……)。

勝ち点は平均的には16.9なのでこちらもクリア。ただ一般的に言われてる1試合あたりの勝ち点平均が2.0なので、そちらで考えても昇格ラインには乗れている。

得失点を見ると、得点は平均よりも2点ほど多くとれている一方で失点がわずかに達していない。得失点差ではわずかに上回っているが、最近の傾向でいくと得失点差は稼げなくなってきているのでどこかで得点の方を増やしていかなければ「(昇格ラインをクリアする上で)得失点差が不利に働く」可能性が高い。

・"基準"をクリアしているチームは?

次に各データで"過去5年の昇格チームの平均を上回っている"チームを見ていく。

勝ち点(16.9):鹿児島・福島・いわき・松本
得点(13.2):
富山・岐阜・鹿児島・いわき・松本・福島・宮崎
失点(7.7):
福島・鹿児島・いわき・今治
得失点差(6.6):
福島・鹿児島・いわき・松本

全て平均以上を満たしているチームは鹿児島・福島・いわきの3チーム。次点で3つ満たしているのが山雅のみ。1つしか満たしていないチームが富山・岐阜・宮崎・今治の4チームとなっている。
10位以内のチームだと5位の長野、7位の藤枝が1つも満たしていないので全体の底上げが必要になってくる(バランスが良いとも取れる)。

対して、もしも昇格できたら「過去5年に前例のない大逆転昇格になるチーム」はどこか?

勝ち点(9):相模原(※勝利)、八戸(※勝利)、鳥取、YS横浜
得点(8):北九州、鳥取(※1点)、今治、愛媛(※2点)、相模原(※3点)、八戸(※3点)、YS横浜
失点(15):富山、YS横浜、鳥取(※八戸、相模原、愛媛も可能性あり)
得失点差(-3):北九州、相模原、八戸、鳥取、YS横浜(※愛媛は敗戦時)

(※は未消化分の結果次第)

ということで、鹿児島、福島、いわき、松本、長野、宮崎、藤枝、岐阜、沼津、讃岐の10チーム(+愛媛は2点差以上の勝利でクリア)はここ5年の前例の範囲内にいることになる。

ここ5年のデータに当てはめるなら昇格争いは10チーム+条件付きで愛媛の11チームに絞られている。

■どうなる得点王争い!?

最後に……山雅サポ的にも気になる得点王争い。

ここ4年での歴代得点王は9節時点で6~8得点ほど。昨年得点王の川西は現段階では6得点だった(最終的には13得点)。
2019年はUー23の選手が多数活躍しており、常に帯同していたわけではなかったりするのでイレギュラーな年になっている(ちなみに8得点をあげた食野や6得点の山田はシーズン途中に移籍してしまった……)。

現在得点ペースが止まってしまっている横山だが、再び量産体制に入り、チームの昇格とセットで得点王を獲得して欲しい。


J3振り返りは以上。

たまにはこうしたデータを調べてみるのも1つの楽しみかもしれない。まだまだ色んな角度から深堀り出来そうだが、あくまでデータはデータ。ここから各チーム、酸いも甘いもあるはずなので、それを乗り越えながら抜け出していくチームはどこになるのか。

自分たちが応援している松本山雅が昇格・成長することが何よりも重要になってくるが、それともにJ3全体が残り4分の3の戦いで互いにチーム力を高め合い、リーグそのものの価値を高めていけるようなシーズンになればいいなと個人的には思っている。

END

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