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徳島戦レビュー~2人の監督が残した財産を存分に発揮してのリスタート~

後半戦とリスタート

激動の1週間。長崎戦から本当にジェットコースターのような展開で、自分も仕事効率が最高に激低な1週間だったが他のサポの方や選手、布監督、柴田監督、スタッフの方々にとってはより一層そうだったのではないか。

山雅に関係する誰にとっても最大の危機とも言っていい1週間で、暫定2位徳島と対戦することになったので勝ち点1という結果は言うことがない。少なくとも、最悪惜敗でと見ていた僕からしたら色々と言う権利はないだろう。選手・監督は本当によくやってくれた。

その上でまだ立て直したというには時期尚早であり、後半戦もまだ1戦目である。チームが勝ち点を取ることができた要因やこれからにむけての展望をまとめ、気持ちを新たにして自分なりに柴田山雅をサポートしていきたいと思う。

~素人採点~

■松本

村山 5.5
チーム内の立ち位置を見てもやはりこの解任は人一倍ダメージがあったか。橋内が入るとコーチングの負担は減る。

大野 6.5
ここまで上り詰めてきたメンタルは伊達じゃない。橋内の代わりにCB中央に入り、先制点を取られたチームをうまくまとめた。タイプで考えると橋内の後継者に1番近い。

橋内 7.0
ぶっつけでもさすがの安定感。両脇の大野・常田をうまく生かしながら垣田を完封。1失点に抑えたのに様々な要因はあってもまずはこの人抜きでは成立しなかったように感じる(逆に解任という要因がなくても守れていたのではとすら思う)。

常田 5.5
なんだかんだ言って6失点のダメージ後に立て直したのは立派。だが細かいことを言えば失点時に届かないのに不用意に飛ぶ→次の1歩が踏み出せず寄せるのが遅れるというのはもう何度もやっている悪い癖。

高橋 7.0
1人で仕掛けられる、守れる、運べるという信頼感があるので味方も動きやすく、その分の人数をよそに回せるのは大きい。両サイドは単純に対面の相手に後手を踏むことがなかったのでさすが元J1組といったところ。

鈴木 6.5
同じく安定のプレー精度と対人強度。さらに交代選手も含めて中盤で唯一去年いなかった選手ながら簡単ではない反町式352に適応してくれたのはさすが。大野との関係性はかなり安定してきている。

藤田 7.0
高橋・橋内も良くやってくれたが90分流れの中で守りきった試合であったことを考えると個人的には藤田をMOMに推したい。攻撃面では1アシストも記録した。

米原 6.0
常田と同じくメンタル的なダメージは心配だったが惜しいシュートを見せるなど存在感はあった。前線に顔を出せるようになってきたのでそろそろ得点も期待していきたい。

杉本 7.0
343と352を使い分けるような守備をしていたがほとんど全て杉本がスイッチ役に。チームとしてのルールが詰められてない中でこのタスクをこなせたのは反町式352だけではなく、リカルド徳島を熟知した選手だったこともあったはず。

髙木彰 5.5
これまでの試合の中では存在感。ジャエル・杉本との組み合わせは本人にとっては一番おいしい組み合わせだったのではないか。ただ期待値を考えるといつまでも前半交代で留まっていい選手ではないはず。

ジャエル 7.0
山雅での初ゴールを記録。PKを決めるのは簡単ではなかったがそれよりも対面CBを苦しめ続けたことで相手が後ろに重くなったのは前半特に効いていた。

(途中交代)

阪野 6.5
PK奪取で1点もののプレーを見せる。ジャエルとの関係性が良くなってきているのも布監督時代から同時起用を続けてきた遺産の1つ。

森下 6.0
橋内不在で3CBの中央を任されていたが今日のプレーを見る限り、右がいいかも。3CBでいくかは不明だが、攻め上がった時の攻撃センスは面白そう。

山本真 6.0
藤田の負担を減らせる存在になりそうな予感。得点時も藤田があそこまで行けたのは山本の存在もあった。一長一短なDH陣の中でバランスという点では一番かも。

山本龍 6.0
若さが良く出る時と悪く出る時がある。しかし、そこは求められていることでもあり、これまでの山雅の若手がなかなか出せなかったこと。下手に丸くなるよりも尖り続けてほしい。

中美 5.5
久保田とどちらも可能性があった中で反町時代の経験と守備でのバランスを考えて起用されたか。見せ場こそ少なかったが藤田・山本真・中美でバランスはうまく取れていた。

柴田監督
メンタル面は解任という「劇薬」効果もあったとは思うが、戦術面が仕込めない中でどう挑むか……。「仕込む時間がない、でも何かを変えなければいけない」というジレンマの中で原点となる反町監督時代の型を引っ張ってくる「戦略」は見事だった。コピーであろうとなんであろうとこの状況でこの選択をして最低限以上の結果を残したことはケチのつけようがない。

この徳島戦では1戦必勝のメンバーをハメてきている感があるので今日の戦い方を変えないなら「メンバーを変えても成立させることができるのか」、変えるのなら「どのように独自性を出していくのか」が次なる課題となってきそう。

■徳島

リカルド監督がやりがちな大胆な策に走って勝ち点を落とすという日に当たった(恐らく次節への温存もある)のはこちらからすると素直にラッキーで、こちらに橋内がいると全体が変わるように岩尾がいないで全体が悪いように変わっているというのは感じた。

ただしその状態でも時間が進むにつれ、落ち着きを取り戻し、ボールを動かせるようになったのはさすがの徳島。最終ラインで5レーンを全て埋められた時の戦い方に課題は残しているが、上位でブレーキがかかる可能性は一番低いと思う。密かにJ1でいつかは見てみたいチームなので上がるなら今年頑張って上がってもらいたい笑

~戦評~

■反町体制と布体制の遺産をうまく使った柴田監督

準備期間1日という中で最大限のことをし尽くしたとしても、コメントの(戦術的には)ほとんど何もしていないというのは謙遜だけではないだろう。守備では反町体制の集大成ともいえる532・523・343などの「型」を組んで、後は布体制で重要視していた選手各自の判断やコミュニケーション、柴田監督の気合の入ったコーチングで流れの中での失点は防いだ。

「原点への回帰」ではあったが、反町時代のように"プレスのかけ方やリスク管理、決まり事を徹底する"というよりは"選手1人1人が自立して伸び伸びとプレーする"姿からはこの数ヶ月で積み上げた「成長」が見て取れた。

そのため「反町体制の延長」を見た試合というよりは「反町体制のベースを基点にして布体制の延長」を見たような試合であった気がする。今シーズンなかなかベースとなる基点が定まらなかった布監督だが、そこさえ定まれば……という可能性すら見えた試合だろう。『解任までの期間は何にもならなかった』という終わりを迎えるチームも少なくないが、今回はそうではない。この財産は今後に生かしていかなければならない。

■サイド攻略を防ぐ5枚バック

それでは具体的な試合の話。

この試合においての5バックの選択は山雅の選手の良さがでやすかったと言えるが、単純に徳島のサッカーとの噛み合わせの良さも無視できない。思えば5バックでレーンを全て埋め、高さ強さのある1トップに早めに当てて2シャドーがそれを拾うという反町サッカーはリカルド徳島にとっては天敵に近かった。この試合でもプレスのかけ方こそ違っても当時と同様、ボール回しで徳島が上回ってもハードワークと最後尾の質でこちら上回るというような戦いを展開している⬇

フォメ

徳島はビルドアップの方をいくつも持っているが、後ろの形が変わってもサイドの高橋・鈴木が蓋をして、前回苦戦したハーフレーンのところも大野と常田で迎撃という対応は変わらず。このCB2人は橋内がいることによって「裏を気にせず、前の選手を潰す」というシンプルなタスクのみを遂行することが出来た。交代後は若手3人の力で何とか耐えきったものの、それまでは代わりにできる裏のスペース対応はほとんど橋内の独壇場だった。

■ポゼッショナルプレー泣かせのぼやっとした守備

では、後ろに人数をかけたからうまく守れたかと言われたらそういう訳では無い。

まず試合開始の山雅の出方は「前3枚がほぼ全力で出し手にプレスをかけ続け、徳島に休む間を与えない」。……解任直後ということもあって徳島側もそう感じただろう。実際、ジャエルと高木彰はそうであった。そこで徳島は中盤の数的優位性を生かそうとする⇩

ビルドアップ

しかし、この日の山雅は532でもあった。取りどころ・奪いどころは決めていても、それ以外のこうした配置のルールや約束事は選手の即興性に近かった気がする。その証拠に今回のシステムについては試合後も343、352、532など……様々な表記を目にした。(配置や選手の生かし方は柴田さんの経験が生きたと思うが、この奪いどころの設定は西ヶ谷さんがかなり貢献したのではないかと勝手に思っている)。

そんなぼやっとした守り方の中で配置という意味で秀逸だったのが523と532の切り替えのスイッチ役となっていた杉本。前線へのプレスをかけながら、冷静さと背後のケアの意識を持ち続け、「中盤に優位性ができる」と踏んでいた徳島のビルドアップを困らせた。徳島側からすると前は蓋をされ、中盤は2枚になったり3枚になったりする状況はなかなか整理が難しく、素早いプレスで考える時間もないためなかなか最適解を見つけられなかった⬇

ビルドアップ2

こうなればうちの選手は個人奪取能力が低いわけではない。藤田と杉本はもちろん、米原もここ数試合で見違えるほど寄せは良くなっている。

徳島の立場からするとこの時に岩尾・小西がいないのが痛かった。今日の鈴木梶川も非常に技術は高いが、なかなかない組み合わせだったことによりそれを上回る連携やアイディアは出せず。そして、徳島にしては縦に進むテンポがかなり早かった。

またこの532システムで空くのは両SBだが、高橋サイドに高い位置を取りたがる岸本、杉本サイドにCBが本職の福岡が出てきたのも組み合わせ的には運が良かった。高橋サイドから攻めるならSBがプレスに行きにくいような低い位置で特徴が出せる選手の方が怖かったし、杉本サイドから攻めれていればジャエルは1列後ろには戻らないため、523にはならず、中盤は攻略できていただろう。

これらは解任後でメンバー・戦術が読みにくいのも影響した。リカ将もここに気づいてか、後半頭から右サイドに藤田を、中盤のアイディアマンとして10番渡井を投入している。

■布体制442っぽさもあったサイド対応

ビルドアップ3

⬆︎先ほどSBが空くと書いたが、時間が経つにつれて徳島も得意のサイドのひし形ビルドアップで山雅のプレスを無力化していく。徐々に奪えなくなっていったが山雅DFも必ず人に付き、突破はさせない。

541ブロックで前を削ってプレスにいく反町式と違って後ろのスライドでWBを1列前に押し出すのはどちらかというと布監督のやり方に近い。WB裏を使われてCBがサイドに釣りだされるというデメリットもあるが、常田大野ともにSBは経験しているのでWBが空けたスペースを使われても問題は感じなかった。

■結局橋内VS垣田で上回れたのが何よりでかい

ビルドアップ4

ここまで守備時のポイントについて書いたが、この全てが成立した理由は最終ラインが下がらなかったこと、つまりは橋内VS垣田で上回れたのが全てと言っても過言ではない。前のプレスも後ろのスライドもサイド対応も、ここの勝負で負けて最終ラインを下げなければならなくなると成立しない。徳島も前半だけで最終ライン、サイド、中盤のあらゆるところから垣田の裏のスペースは狙い続けたがこれが決定機に直結することはなかった。

どこかの試合でも書いたが1人の力でこれだけ守備全体が変わってしまう編成ははっきり言って異常である。

■記録にもハイライトにも残らない、PK獲得を生んだ2人のラン

攻撃

守備がこれだけ時間がなかったのだから攻撃はなおさら即興性とショートカウンターに頼らざるを得なかったが、保持時でも良さが出ていたシーンはある。PK獲得に結び付いたシーンもそう。ハイライトには残っていないが、ジャエル→中美→山本龍→山本真→大野→森下→鈴木→山本真→阪野→藤田→阪野と前線の選手が一通り関与してPKが生まれている。

阪野藤田のワンツーも絶妙だったがその前で左右の攻撃に顔を出している山本真もいぶし銀の活躍だった。そもそも藤田があれだけ高い位置を取れていたのも山本真がピッチの横幅を存分に使ってプレーをしていたのも関与している。その前に積極的なダイアゴナルランでDFを引き付けた森下も効いていた。

多くのパスを繋いでの得点も山雅にとっては珍しいが、DH2人の勝負パスが得点に繋がったのはさらに珍しい。リスク管理を大事にするあまり、ゴール前に人数がかけられないという反町体制から続いていた課題も徐々に改善されつつある。

■劇薬を使ったからには1試合で判断できない

さて、この状況での試合はドローで言うことなしといった感想だが、評価を下すにはまだ早い。「解任」という劇薬によってチームが本当に立ち直れたかは少なくとも5試合ほど、この解任劇がどうだったか、良かったのかはかなり先にならないと分からないことである。

大金を払って、1人の監督の職を奪ってしまったからには1試合のドローで悔しさや反骨心終わらせてしまってはただの気休めにしかならない。「大事なのは次の試合」とはよくここでも言っているが、今回の場合は徳島戦のような姿勢をどれだけ大事にし続けられるかでチームの真の力が試される。これで琉球戦のような試合を今季1試合でもしてしまっては今度こそ何も残らない。現場だけではなく、フロントやサポーターも一丸になってチームを上昇気流に乗せたい。

~金沢戦プレビュー~

別で書こうかとも考えたが、まず自軍がどう出てくるか分からないこともあり、まとめることにした。長くなってしまうがご容赦願いたい。

(⬆︎今よりさらに拙いプレビューだが……ヤンツーサッカーについて)

■現在の金沢

まず、やり方としては大枠は変わっていない。自分のやり方を曲げないあたりは実にヤンツーらしい。だが、「目の前の相手に絶対に勝つ」というしつこいマンツーマンDFとアグレッシブな攻撃意識によってチームは底上げされている。開幕時はルカオや下川にやや依存気味であったが、若手の成長によってチーム力は底上げ。

特に危険なプレイヤーになっているのは「加藤 陸次樹」。山雅との試合も可能性の感じる動き出しやゴールへの意識は脅威に感じたが、前半戦9得点とこれだけ結果がついてくるとは想像していなかった。上背はそれほどないが相手を外す動きは非常に巧みなので、森下や大野は近い年代のこの選手相手に粘り強く対応してほしい。

■山雅はどう戦うのがベストなのか

準備期間は前よりはあるといっても解任から中4日。新しいことをできるような時間はない。さらに金沢の立場となれば、前節で勢いを取り戻したこと以上に大の苦手だった「反町式」に戻ることに脅威を感じるかもしれない。布監督のままでいたほうが戦いやすかったはずだ。

それは相性の話だけではなく、元々SHがかなりの負担を強いられるサッカーをしているヤンツーサッカーは、SHが鈴木や高橋のいるWBの位置まで守備に戻るとなるとその負担はさらに大きいものになる。ルカオ、加藤ら2トップを3人で潰せるメリットもあるので3バックを崩す必要はそれほど感じない。

サポの後押しによる選手の奮起に加えて、前節選手たちの特徴を生かした監督の采配にも引き続き注目したい。まだまだ不安定なチーム状況だがこの変われるチャンスを確かなものにしていこう。Onesou1!

END

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