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長崎戦プレビュー~聖地の勢いを取り戻して勝ち点3を~

結果を出したい5連戦の最初の相手は2位の強敵

毎度の話になるが、今回はややチーム状態が上向いた中で新たな5連戦のスタートとなる。この狭間でどのような変化・進化がされているか、非常に興味深くはあるが、まずは選手・監督がコンディションを整え、リフレッシュできることが何よりも大きい(自分も分析の時間ができたことより精神的に一息つけたことに一週間の重みを感じた笑)。

上向きとはいったが、前回の5連戦も1勝2分2敗。どん底に沈んでいたころに比べればマシには思えるがこれに満足している選手・スタッフ・サポはいないだろう。この5連戦こそは勝ち越しを最低ラインとして内容・結果共に手をしたい。

そんな5連戦の最初の相手となるのは2位・長崎。手強い。向こうからすると「昇格に向けて取りこぼせない相手」という立ち位置の相手となってくるはず。しかし(現在の順位はともかくとして)昇格を目指すと言っているチームならばそう簡単にやられるわけにはいかない。ここから順位を上げていくのならば「勝つことができれば確かな勢いと自信をつけられる相手」である。周りの見方も変わってくるはずだ。またサポーターも同様で、本気で巻き返しを願うのであれば「2位だから……」と望むのではなく「この試合は負けられない」という強い気持ちを持っていたい。

<今年の長崎について>

手倉森監督体制2年目。知名度的には恐らくJ2で1番の指揮官と高田社長のもと、ここ数年急成長を遂げているチームである。その勢いのあるチームの歴史でも今年の選手層は最高レベルかもしれない。

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手倉森監督はリオ五輪の代表監督でもあったのでその頃のことも印象深いが、選手の個性を積極的に生かす、どちらかというと布監督と同様の選手の自主性を重んじるタイプの監督であるように思う。五輪代表の際には「柔軟性」をテーマにしていた点も布監督に共通する。他にも智将、戦略家、モチベーター……様々な表現がされる。その選手に合わせたサッカーや監督の形容しがたさがそのままチームの掴みどころの難しさ・強さに繋がっているのかもしれない。

掴みどころがないのは実際にピッチ内にも表れており、(正確な変化の理由は分からないが)シーズン序盤はポゼッション型のチームだったが、最近ではそれほど多く繋ぐことも少なくなり、ポゼッション率も低くなっている。(元々ポゼッションにこだわらない監督の志向やキーマンの秋野をマークされるようになったから?)

ただし、ポゼッションの低下、掴みどころの難しさがあるといっても長崎の場合は一貫してやることは大変整理されている。徳永、角田、二見ら経験のある選手がチームの土台を支え、秋野を中心とした中盤の選手が底から舵を切り、亀川、富樫らリオ五輪世代の選手たちも攻撃で躍動。そこにイボルボ、フレイレ、ルアン、カイオセザールと強力な個を持つ武器が加わっている。積極補強が実ったこともあって、同じアプローチでもチームとしてかなり完成形に近づいていると言えるだろう。

(ちなみに……調べてるうちに似たようなことで、より分かりやすい表現をしているFootball zoneの記事の一文が書いてあったので紹介したい。)

この豊富な戦力を率いる手倉森監督はモチベーターとして知られているが、その本質は選手を状況に合わせて巧みに起用する「用兵家」だ。ここでいう「用兵」とは、目指すスタイルをシステムに落とし込んで戦う戦術家とは違い、選手の持つ個性をスタイルの要とすることを指す。<中略>こういった采配をさせるには、監督の求める個性を集めなければならないが、昨季からの積極補強が功を奏し、それを可能にできる戦力が今年の長崎を支えているのだ。

・キーマン

まずは秋野。2・6・7月度の月間MVPを受賞した。得点の多いFWもしくは失点の少なかったチームのCBの選手が選ばれやすいというのが一般的だが、「戦術秋野」と表現されることもあるほどの鮮烈な活躍を残して見事受賞。選手先行のチームスタイルにおいてこれだけチームの攻撃をコントロールできる選手が活躍すると結果も付いてくる。代名詞となるビルドアップの他にもセットプレーでのクロス成功数ランキングも1位と大きく貢献。ちなみに2位はセルジ。

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そして、今年注目されているのは右SB毎熊。正直、開幕前までは全く認識していなかったが、FWからSBにポジションを移し、これだけすぐに結果を残せているのはかなりレアケース。J1で見られるのも時間の問題か。前線の選手だっただけあってかなり攻撃性能は高い。ラストパスもさることながら決定力も脅威。2G3Aと結果を出している。こちらとしては左からの攻撃を得意としているのでできれば守備に労力を使わせて経験の少なさを露点させたいところ。

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<予想スタメン&ポイント①>策を打つか維持か

システム論者ではないと話す布監督だが、システム論を超えることができてないのがリアルなチーム状況である。4バックか3バックかは言い換えるとそのまんま「守備を削って前を4枚にするか」「攻撃を削って後ろを5枚にするか」論になると言っても過言ではない。

システムについて結論から言うと、対長崎に対しては後ろ5枚(3バック)で5レーン全てを消すように配置するのが戦術的には合理的である。逆に4バックで守るとなると個の強さがある長崎に対して数的同位の個VS個で守らなければいけないシーンが増えてくるだろう。

ただし、よく言われる「サッカーは相手があるスポーツ」ということ以前に「自分たちのこと」も無視できない。最近の4バックでの流れや積み上げを無視することで「策士策に溺れる状態」になることも十分に考えられる。5バックにしたからといって勝率が高いという保証もない。

なので、チーム状態まで踏まえるとどちらが適しているかというのは言い難い。ひとまず3バックにしろ4バックにしろ、選択する際の意図は明確なのでどちらをチョイスするかはまず注目したい。

※前節のメンバーが軸になるという報道があり、信ぴょう性は高いかも…。

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・松本

3バック

スタメン3

先ほども書いた通り、守備では高い位置を取る両SBとIH化するSHを捕まえやすいので問題は起こりづらい。その分、前線は少なくなるのでCFにシンプルに当てるだけではセカンドボール回収で後手を踏む可能性がある。システム的に噛み合わない両WBを使いながら組み立てるのが有効か(特に常田→鈴木はかなり勝ち筋が見える)。

4バック

スタメン4

高い位置を取ってくる相手の両SBをSH・SBのどちらが見るのかがポイントになってくる。ここがうまくいかなければ先ほど書いたような個VS個の勝負に持ち込まれてしまう。2トップが守備では相手の出所を限定し、攻撃の時間も確保できなければ442で戦う戦術的なメリットはほとんどない。

・長崎

長崎

メンバーをうまくやりくりするのが手倉森流。それだけの選手も揃っている。その中でもDHの秋野、最終ラインの亀川・二見・角田・毎熊は核となるメンバー。守備や連携面で難があるが確かな個の力を持つイボルボ・ルアン・カイオセザールらが出てきたときは脅威であると同時に守備では穴になるかも…。

<ポイント②>秋野からの配球にいかに対応するか

長崎は442をスタートとし、4222、3142、4132でビルドアップするパターンを持っているが、山雅が442でミラーゲームを仕掛けにいった場合、一番噛み合わせ的に苦しいのは3142。

ビルドアップ

⇧このように前線が自由を与えてしまう、うまく追えないとサイド2人で3人を見なくてはいけなくなり、その後の対応は非常に難しくなる。特に厄介になってきそうなのが最終ラインに下りたDH(秋野)からのSBへの配球。

サイド

SHが釣りだされたり、頭を越されるとサイドは2VS3に。相手の強力なFWを見るのに中央の選手は極力動かしたくないが、この形だと相手は容易にこちらの守備陣形を動かせる。撤退せざるをえなくなってしまうだろう。

ということで①前線がどこからプレスをかけに行くのか、②サイドは誰が対応するのか、そして最悪のケースを想定して、③数的不利になった場合どこを捨てて対応しに行くのかを整理して、システムが噛み合わない中でも各フェーズで効果的に圧力をかけていきたい。

■注目選手

注目は米原。

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塚川の状態次第では先発もありうる。新たな5連戦では後ろからの組み立ても少しずつ着手していくはずなので米原の技術やセンスは重宝されるはず。長崎は強烈な外国人がいる一方、手倉森監督のチームとは思えないほど守備の穴になることもあるのでそこから切り崩していくというのは戦い方としては有効。特に終盤はそうしたシチュエーションになりやすいので課題である持続性を少しでも克服した姿を見たい。

そして、相手のキーマンの秋野とは実績に差はあれど「高精度のキックを持ち、ビルドアップを得意とするレフティ」という共通点を持つ。ゲームメイカーというにはまだまだほど遠い存在だが、ゆくゆくは秋野のようにチームの核になる選手になってもらいたい。

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プレビューは以上です。

4バックで行く場合は配置のかみ合わせは合わなくなるので守備で圧力がかけられるか、前節指摘されたセットプレー以外での攻撃の圧力をかけられるか、そして今節は手拍子が解禁され、ホームアルウィン特有の圧力がかけられるかがポイントになってきます。

うまくいかないと選手や監督に矛先が向きがちですが、あくまで我々が戦うのは目の前の相手。メンタル面が上向きつつある今の状態で「サポーターの目に見える後押し」という要素を上乗せできるかは後半戦の戦いだけでなく、松本山雅というクラブのこれからにも関わってきます。まだ多くのサポーターが駆けつけることはできず、僕自身も恐縮ながらスタジアムにはいけませんが、選手と観客が一体となって勝利を手にするというクラブの色は失うことなく、強みにしていきたいと感じます。そのためにも絶対長崎戦、物にしてその力を確かなものにしましょう!Onesou1!

END

(画像は松本山雅公式、長崎新聞、FootballZone、Jsgoalより)

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