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栃木戦レビュー~色々あったことは忘れてセットプレーを考える回~

非常に飛び飛びのレビューとなっています。週2戦はなかなかきついですね。試合の流れに沿って振り返ると時間と文量がかかりすぎるのでできるだけシンプルに要点を抑えて書けるように心がけたいところです(定期的に呼んでくださる方に取っては毎度の流れですが……笑)そんな中でも欠かさず、プレビュー&レビューを書いてる方々を尊敬します。

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荒れに荒れた完敗ゲーム

群馬・北九州・相模原と下位3連勝の後、新潟・金沢とスタートダッシュに成功した2チームに2分け。若干、停滞感はありつつも地道に積み重ねた勝ち点を次に繋げたかった今節。次の5戦を見ても栃木(14)・岡山(16)・ 町田(24)・長崎(18)・大宮(11)と続き、山雅(18)と勝ち点的に近い5チームとの対戦とあって、目の前の試合に向けてのディティールの差が勝負を分けると思われたが、蓋を開けてみれば0-3の完敗。分析と対策がハマれば首位の新潟ともいい試合ができる一方、準備段階をミスると戦い方のベースが崩れるという悪い意味でのふり幅の大きさをつくづく感じさせられた。

この試合ではラフプレーもが頻発し、試合後には選手のSNS投稿、両チームの声明発表が大きな話題になるなどあらゆる面で後味の悪い試合になってしまったが、今後の試合に向けては試合内容で手も足も出なかったことが何より悩ましい。選手や監督の意識の中でも完敗、さらに戦い方にズレを感じるようなコメントが見られたので、根本的な部分からの早急な修正が待たれる。

これからどのような舵切りをしていくか?は岡山戦で答えが出るはずと信じて、今回は2失点を喫したセットプレーを中心にその背景・問題点・改善点を振り返っていこうと思う。

~個人的チームMOM~

割愛

~戦評~

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■相手の戦い方は明確、開始10分を強調していたが…

山雅はスタメンを、決めきれなかったそして単調になってしまった前節から横山→阪野を変更。ここ数試合存在感を増していた横山だが、個人の問題というよりは前節のように対策してくるチームに対しての次なるプランが仕込めなかったのと、セットプレーの高さの面が変更の理由にはあったかもしれない。

対して、栃木は契約で出られない乾、吉田に変えて、福岡から期限付き移籍したばかりの三國、山本廉を先発に起用。システムは352から普段の442に戻した。

ただし、(どのようなシステムを予想していたかは定かではないが)栃木のサッカーは去年から一貫しており、根本的には3でも4でも変わらない。最初はガツンといって先制してしまおうという狙いは予想に容易く、指揮官も「立ち上がり10分気を付けたい」ということを普段以上に強調していた。

■佐藤が触れないとリズムが出ないのも対策済

試合前には田坂監督から「今年はハイプレスを交わすために対策をしてくるチームが増えてきたのでそれに対する修正をしてきた」とコメント。そのうちの1つには前線が山雅の出し手となる選手に自由に出させないという意識付けはあったと思うが、もう1つ山雅対策として仕込んできたのは『佐藤和という"要点"消し』。前線に圧力をかけつつも、ジュニーニョのみハイプレスに積極的に参加せず、他の選手で潰すという手を打ってきた。一発がありながら守備も怠らない勤勉さは山雅にとっては厄介だった。

■色々あるけどとりあえずCKを考える

・事前情報

そして、両チームに共通して見られたのは、開始数分ではリスクをかけるより早めに敵陣にボールを送り、出会い頭の得点を狙うような意識。そんな中、最初にCKを取ったのは栃木だった。

振り返ると前節琉球戦、栃木は乾大知が最初のCKから先制点を挙げている

当然、セットプレーは警戒していたはずの琉球もド中央で競り負けてやられた形になっている(厳密には反則のようにも見えるが微妙なライン……)。

第一ターゲットは昨季6得点、飯田とほぼ同じ背格好の柳。また今週、新加入の三國も福岡ではパワープレーで投入されるようなパワフルな選手なので同じように警戒されていた。

他には大島、森、山本、サブの矢野も今季セットプレーからの得点をあげている。

また、栃木の直近3試合を振り返ると、試合の最初のセットプレーは全て左から。琉球・水戸戦ではインスイングでニアサイド。北九州戦では中にいれると見せかけてマイナスにボールを送るトリックプレーを見せている。

・山雅の守備陣形と失点振り返り

山雅はこの試合でもマンツー&ストーンで対応。長身選手(阪野・鈴木)はストーンに入り、どちらかがいない時は佐藤が加わる。

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また、鈴木・阪野が揃っている時は3枚になる時も。
前節、金沢戦でも前半は鈴木・佐藤を置いていたストーンが後半阪野が加わって3枚になっている。

今回の1失点目は阪野・鈴木がともに先発だったので、この形のトリプルストーン。ニアに高い選手を固めて、GKに向かっていくインスイングのボールを警戒していた⇩

コーナー (4)

ショートコーナーが始まるとストーンの佐藤がショートコーナーの対応に加わり、有馬・森はニアに。阪野と鈴木は若干釣られる。

そして、GKの邪魔をしていた選手(山本?)もファーのスペースを空ける。この選手はファーに蹴った時に村山が出れないようにしていただけなのでお役御免。三國と柳が勝負しやすいシチュエーションを作る

子―ナ0 (2)

この時に柳は三國の影に隠れて大外に。大野も首振りをしてこの動きは目視している。仮に大野がここで距離を空けずにマークに付いていたとしても三國のスクリーンに遭っていた可能性が高いので、結果的には勢いをつけて入ってきた柳にやられてしまったと言っても、この対応が間違っていたとは一概には言えない。

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"線"の勝負になると他の選手の邪魔が入る、そこで"点"での勝負を選んだ」大野だったが、そこで相手の一瞬の駆け引きとリーチの差で上回られる。付いていけなかった大野を責めるのは簡単だが、これだけの身長差のあるマッチアップをファーサイドで2つ作られ、広大なスペースとイーブンの上質なボールが送られると攻撃側が圧倒的に有利になるのは考慮しなければいけないだろう。

・多すぎる問題点&解決策を整理してみると…

次はこの試合でのセットプレー対応の問題点について

①高さでは圧倒的に向こうが有利
高い高いと言われている栃木のセットプレー。中に入っている選手の5人の身長は有馬181cm、森178㎝、山本180cm、そして柳188cm、三國192cmの平均183.5cm。それについていた山雅守備陣は前172cm、浜崎175cm、下川178cm、橋内175cm、大野179cmの平均175.8cm。

高さ勝負に持ち込まれると当たり前に分が悪い。特に柳・三國についていた橋内・大野は最低でも対面の相手に集中させたいところだった。

②飯田級の2人に対して個人勝負は正しかったのか?
しかし、現実的にはショートコーナーとスクリーンで対面の相手に集中できていたとは言い難い。大野も1VS1の勝負であれば橋内のようにベタ付きしてもう少しやれたかもしれないが、2VS2になると対応の難しさは格段にあがる。

「同じCBとして負けてはならない」という根性論も分かるが、(山雅的に言うと)飯田級のガタイをもつCB2人が連携を取って入ってくるのに対して、橋内・大野で個人勝負させるのはやはり厳しい。一番気を付けなければいけないキーマンの2人に対して、大野・橋内任せにしすぎていた守備陣形だったように感じる。

③ショートコーナーまで意識が行かないのが現実
以上の不安要素を踏まえると、ショートコーナーへの対応に人数と意識を割くのはなかなか簡単ではない。他のチームの対応を見ても中の人数を減らすことによって違うデメリットが生まれたり、それを防ぐためにボールが出てから2人目がスタートするというのがほとんどで、多くがクロッサーには間に合っていない。

なので、ショートコーナーの対応に関しては①あらかじめ佐藤にショートコーナーに対応できるようなポジショニングを取らせるある程度自由にいれさせるのは許容して中を固くする(=佐藤はステイ)という2つの対応が考えられ、どちらかを決めておくべきだったが、そこが非常に曖昧に。
クロッサーにもプレッシャーはかからず、ストーンである佐藤の空けたスペースも中の選手はカバーしなければいけないという後手を踏んでしまった。

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これは個々の意識の問題よりも準備段階でこのパターンを十分に予習・想定できていなかったのが問題と思われる。

④ショートコーナー関係なくやられた3点目
ただ、致命的だったのがショートコーナー無しでもやられてしまった3点目。

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先ほどのメンバーに187cmの矢野が加わり、三國↔下川、橋内↔矢野、大野↔柳とマークを担当していたが、CB3人を揃えたファーサイドでシンプルな高さ勝負を仕掛けられて、ゴールにぶちこまれてしまった。

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各々マークにはついているものの、パワーで上回る選手たちに強引に突破を許され、柳以外にもやられかねないような状況になっていた。180越えの選手はストーンとしてニアに集中配置されているので、ファーで高さ勝負を挑まれた場合は選手が気持ちで粘って、シュートの精度を削ぐしかないだろう。

⑤改善するならば……
それでも今のチームは「撃ち合いをする」というよりも「しぶとく守ってロースコアで勝つ」ようなゲーム運びをしている(点は取れてないけど取られていないという指揮官のコメントからもこれは伺える)。

"84得点を取るイメージ"からのこの方針転換がチームの不協和音を生んでいるような気がしないでもないが、長くなりそうなのでここでは置いといて……堅守になればなるほどセットプレーからの得点を相手が狙ってくるのは自然な流れで、ここは軽視できない。

シンプルな高さ勝負でやられ、尚且つショートコーナーにも対応する必要が出てくる場合、一番手っ取り早いのは人を変えることだが、後出しじゃんけん的にこのメンバーでの対策を考えるならば「GKの前の中央は村山にカバーしてもらい、ストーンをよりバランスよく配置する、マンツー隊は外されるリスクが大きくなってもベタ付きして進路を妨害する(外されたらストーンが対応する)」のが自分の考えたベストかと思う。

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(村山のファンブルのリスクが高くなるが……)

また、高さをそれほど重視せず、個々の頑張りに任せる形で栃木のようなチームと対戦する場合、「それ以上に点を取ればいい」と割り切って、準備してきたプランを続けていくのが最善ではないか

■今向き合うべきこと

セットプレー以外にもこの試合ではあらゆる面でのトピックスがあり、どこにフォーカスしていくのか?が難しい試合だったが、勝敗という意味で結果を大きく左右したのは間違いなく最初のセットプレーだった。

その後、徹底的に構えてくる栃木に対して、事前のプランを変えるのか?そのまま行くのか?意識の差が生まれてしまう問題もこのセットプレーから露点した。

ピッチ上の選手のコミュニケーションで解決できれば最高だが、それ以前に
・相手のストロングに対して隙ができないメンバー構成・戦術にする
・セットプレーでやられてもその分取り返せばいいという
どちらでもなかったことが戦い方のズレ、統一感の欠如に繋がっていると思うので、岡山戦に向けて方針の再確認が必要になってくるだろう。

先週のモヤモヤを引きずり、いまだに納得のいっていないサポの心中も察せられるが、次の相手は岡山で、目指す場所は昇格2枠であることは今一度再確認しなければならない。このエネルギーをプラスに変えて3戦負け無しの状況から脱したい。

END

(映像はJリーグ公式ハイライトより、写真は松本山雅公式より)

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