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千葉戦プレビュー~突きたい"中央固め"の穴・制したいエアバトル~

「堅守」千葉に対して「強攻」松本になれるか

もうそろそろいい加減に連敗の話は辞めにしたい所だが触れない訳にはいかない。ただいまクラブワーストタイの4連敗中。「絶望」するような展開ではないが、みんながみんな負け試合を楽しく見れるわけではないのは理解できるし(自分もそちら側である)、限られたリーグ戦は消費されていく。

分析・考察する立場としては少しでも楽しめるよう、前を向けるよう努力したいが「勝利」という特効薬には敵わない。

さて、そんな中乗り込むのはフクアリ。相手はジェフ千葉。向こうには船山や工藤、大久保がいて、こちら側にも高木利、山本真がいてお互いに主力として活躍した思い入れのある選手がいる。また、何年もJ2の昇格争いをしてきたライバルでもあるので(歴史は全く違うので恐縮だが…)慣れ親しんだ相手とも言えるだろう。しかし、今年はどちらも様子ががらっと変わったのでどういう試合になるか興味深い。

■今年のジェフ千葉

J1の情報も仕入れているサポの間ではイメージが定着しているはずだが、今年監督に就任したのは守備に定評のある尹晶煥。ここ数年のジェフ千葉の"エンタメ性が高い"、"攻撃に重きを置いている"イメージとは違う、また足りない要素を補うともとれる監督を連れてきた。

新監督には"これまでのやり方をベースに徐々に自分のやり方にシフトしていくタイプ"と"最初から自分のやり方に選手を当てはめていくタイプ"がいるが尹監督は完全に後者。ハイラインはどことやら、ゴール前をがっちり固め、どちらかというと反町山雅に近いような哲学のもとチームを作っている

・キーマン

何人か選手を変えることを監督が示唆してるので、誰が出てくるか読むのは難しいがどの試合でも輝きを放つのがMF田口泰。シンプルな攻撃になりがちな千葉の中でミドルシュートやロングフィードなど大胆な動きを加えてくるのでここを抑えられるかどうかで相手の攻撃スピードは大きく変わってくる。

また、田口と同じく元磐田の川又もここ最近攻撃の中心に。キープ力・決定力ももちろんだが、ゴール前の駆け引きのうまさは今の山雅にとっては脅威。去年の開幕戦ではエドゥアルドが完全にマークを外されて強烈なヘッドを叩き込まれた。

■予想スタメン

<松本>

怪我人が何人か全体練習まで戻ってきたという朗報が。前節は高橋が復帰即スタメンになったが、山本龍との経験の差を考えた時の"特例"で基本的には途中出場の"試運転から"と予想する。またベンチ枠的にもそうなれば主力のアウェイ回避組は出てくるのではないか。

システムは相手の44ラインを徹底する配置を見た時に3421のほうが組みやすく、実際に千葉は3バックのチームを相手に勝率が明らかに低い(厳密には勝てていない)ことからも3バックを予想。

こちらも3バックでなかなか勝てていないがこの試合では「こちらの手駒と相手に応じて変える」姿勢を崩す必要はないように感じる。

千葉戦

(サブ)村山・橋内・服部・久保田・山本龍・セルジ・イズマ

<GK>
懲罰ではないだろうが、変更を施したGKはどちらをチョイスするかは未知。GKボールすらも掻っ攫っていく190cmの櫻川ソロモンやロングスローを投げる増嶋もいるのでタイプ的には圍だと思うが…。

<DF>
大事になってくるのは空中戦と保持時。ミスにも寛大に見える布監督でも乾の中央は変えるだろう。代わりは常田が適任か。空中戦と力強さという観点から大野より乾をチョイスした。

<MF>
サイドは疲労も考慮しつつ、単独勝負も得意で運んでクロスも入れられる2人に。タッチライン際はある程度持たせてくれるので山本龍にもチャンスはある。

ボランチは藤田・久保田を休ませる意味でも米原と前に。これまでよりは保持の時間は多くなるはずなのでビルドアップとサイド展開を期待。CBとしての空中戦は決して得意なほうではないが、ボランチとしてなら話は別。ロングボールに対する"第一壁"になれるのも選考理由。

もしも藤田・久保田でいくなら空中戦はある程度仕方ないが、セカンドボールは全力で回収したい。

<FW>
シャドーは間受けとそこからのボール運びが有効。またミドルシュートは積極的に狙っていきたい。守備や連係との天秤になってくるがアウグストは先発で試して欲しくなるプレーを見せている

CFWは阪野が連戦になっているので休ませるとなると、先発なら榎本が2番手か。裏抜けよりもDF間で受けるプレーやクロスボールが多くなりそうなのでこれまでとは違った存在価値を示したい。

<千葉>

さきほども書いたようにメンバーは読めない上、前節不在の熊谷・鳥海らが怪我なのかは不明(尹監督が怪我人が出たことを話していたそうなので負傷欠場かも…)。

選手選考のポイントはキーマンとなる田口や川又、守備の要のチャン・ミンギュあたりも休ませるのかどうか。さらにクレーベが復帰していればここ数試合にはなかった脅威になる。

■千葉戦の3つのポイント

①3バックを生かせ!キーは「浦田過労死システム」

先ほど3バックの相手に勝率が悪いことには触れたがその理由を考察する。

まず、千葉の守備の特徴だが「まずはゴール前を埋める」「44ブロックの徹底」「人よりも自分の担当スペースを優先」

ただこの時に3バック(もしくは可変でこの形を取る)チームを相手にすると44ブロックの間や幅を使われやすくなってしまい、ズレが生じやすくなる。

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ここからは2つの局面に分けて分析する。

・サイド展開

幅を使った攻撃をされた時の千葉のスライドは「ゴール前を固める」という意識のためかかなり特徴があり、ここを浦田のいる左サイドを使って突きたい。

例えば、前節山雅の得点シーンのように右で作って左に展開したような形の時に…

千葉スライド

2列目は通常通り横ずれスライドをするのだが、千葉の最終ラインはとにかくゴール前を圧縮してくる。

千葉スライド2

基本的に相手のSB(WB)との勝負はSHに任せて、場合によってはカバー無しの状態にしてしまうことすらある。上記の反町山雅に似た哲学というのは要はこの「極端なまでにサイドはやられても中はやられない形をとる」という点。

ここでこちらの左右CBの出番。相手のSHは高橋に加えて浦田まで上がってきたら1対2になってしまうので飛び込むことができず、ずるずると下がらざるを得ない。こうなればサイドは取ったようなものである。

その後は高橋がサイドから高精度クロスをあげるも良し、浦田を使って相手のサイドバックをゴール前から引きずり出すも良しとなってくる。

もしサイドバックを引きずり出せればこの後に書く攻撃パターンも出しやすくなる。

・アタッキングサード

アタッキングサードに入るとボランチを使ったサイドチェンジ展開が何度もできるわけではない。しかし、局地戦でもこの左右のCBの攻め上がりは変わらず効いてくる。

これは金沢戦のシーンだが……
CBは基本ゴール前にいるので右SBゲリアが出た時にボランチがそのスペースを埋めるのだが↓

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バックパスと同時にボランチは元の位置に。
その瞬間に千葉右SHがついているはずの金沢の左SB杉井が斜めの動きを見せる↓

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そこからロングボールが出てきてほぼどフリーに。誰がついていくかが構造上難しい。

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図解すると↓

CBはゴール前を固めたいのでCB-SB間をDHが埋める。ここではサイドが広がっているので44ラインではないが綺麗に2列になっている。

千葉図解

ただし相手が戻した瞬間にはDHは再び44ラインをつくりに1列前に戻る

この瞬間、最終ラインのSB-CB間のスペースは通常ではありえないほどぽっかり空く。44ラインを守っているDHもSHも攻めあがる金沢のSBに付いていく意識はない。

千葉図解2

これは「まずはゴール前を埋める」「44ブロックの徹底」「人よりも自分の担当スペースを優先」という千葉のもつ守備構造の全ての逆を突かれた形である。

つまり、この形を山雅に当てはめてみると千葉のSBをサイドに釣りだしておいてCBと隔離した後、その間にWBや後ろのCBが走りこむといった感じか。(ただ右CBでこのアクションはなかなか難しいので攻撃センスをもつ浦田が適任だろう)

浦田は常に行ったり来たりと大変になるがこの回数を増やせるかが1つのポイントになる。

②狙いたい「影」からの攻撃

①が長くなってしまったので②は端的に。結論から言ってしまうと、WBのいるチームを相手にすると今の千葉の守備網には明確な穴ができる。

それはWBがペナルティエリアに入ってきた瞬間。どの3バックのチームと対戦した時もこれで大ピンチを招いている。

特に甲府は対千葉を意識した攻めをしていたので参考になるのだが、例えばこのシーンでは誰も右のWBを見れていない。厳密にいうと左の安田は視覚的には見えていたのだが最終的にフリーでトラップされているし、SHの選手も「44ライン」に戻ろうとしているだけでそこにつくような素振りはない。

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またこちらの東京V戦のシーンも分かりやすい。

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東京Vは攻撃時にSBがWB化するような攻め方をしていたのだが、中を固めるだけでほぼ見れていない。

ここではクロスからのシーンを取り上げたが、WBが上がってもSBもSHもついていかず、「中を固める」ために「WBを捨てる」傾向にある。

CKの大外もこういう傾向があるので中の選手を通り越して「影」から選手が飛び出してくるような攻撃にはかなり後手を踏んでいる。

③今度こそ潰したい2つのポイント

ここからは相手の攻撃の話。
千葉の主な攻撃パターンの1つ目は2トップへのロングボール。

厄介なのは2トップのどちらにも「そのボールをヘディング」もしくは「収める」のが上手い選手を起用してくるという点(このあたりが船山がFWで使われない、SHで使われる理由だろう)

前節は"出し手の精度"と"ジュビロの2トップの万能性"に後手を踏んで苦しめられたが、千葉の場合は状態が悪くても優位性がそれほどなくても、とにかくここに「強さ勝負のボール」を入れてくる。

つまりは単純に①松本CBと千葉FWの競り合い→②セカンドボール回収で勝てるかどうかに大半がかかっている。前節よりはCBの役割はシンプルだが、その分そこでの勝負に負けるとずっと押され続けてしまう。ボランチと協力しながらうまく抑えたい。

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またそのパターン以外で脅威なのが(先ほども述べたが)田口の攻撃センス。自陣から正確な長いボールを入れることができ、サイドチェンジも正確。奪われた後はまず近くの人が田口を消すことを徹底したほうが賢明だと思うほどカウンターのスイッチになっている。(ここを消せば遅攻かロングボールに切り替えがち)

ここ3試合は2失点続き。極端な話、無失点なら連敗は止まるのでそろそろクリーンシートを期待したい。

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プレビューは以上です。

怪我人は徐々に戻ってきつつありますが、怪我人が戻ってきて勝ち出せばOKだとは思いません。復帰は待ち遠しいですが若手やここまで勝てていなかったメンバーの奮起により、山雅のレギュラー争いの水準を1つあげられるようにしてほしいのが正直なところです。

そのためには「内容」だけではなくて「結果」。明日こそどんな形でも勝って、また1つになって連戦を戦っていきましょう!One sou1!

END

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