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起業した研究者が知っておきたいチームビルディング

経済産業省が「大学発ベンチャー1000社計画」を発表した2001年から20年近く経ち、大学発ベンチャーの数は2278社(経済産業省2019年度調査より)まで増加しています。

研究者が起業するにあたっては、アカデミックとビジネスの間にあるギャップを乗り越えることが重要です。そこで今回はHAX Tokyoのアドバイザーであり、研究者と起業家の両方に詳しい鎌田富久氏と、村井純氏に「研究者が起業する際、どのようにチームを作るべきなのか」を伺いました。

やるならフルコミットで、退路は絶とう−−鎌田富久氏(エンジェル投資家/TomyK代表)

起業を考えている研究者には、常々「大学との兼任はやめなさい」と言っています。
やるならフルコミットすべきであり、大学に残りたいなら創業メンバーではなく、技術顧問かマイノリティな比率での株主として、起業した仲間を支えなさいというのが基本的な考え方です。

大学や研究所と二足のわらじを履くということは、事業で失敗しても逃げ道があるということですよね。それは「自分の事業に対してリスクが取れません」と言っているのと一緒です。

そもそも大学との兼任で成功しているスタートアップは、ほとんどありません。CEOと教授を兼任するスタートアップは毎年現れますが、筑波大学の山海嘉之教授が設立したCYBERDYNE以外、国内での成功例が無いのが実情です。大企業の新規事業でも出向ではなく、転籍にして事業にフルコミットさせたほうが成功の確度は上がります。スタートアップは起業してから成功するまでに10年かかるかもしれない。「ダメだったら、また研究者に戻ろう。それまでは必死にやろう」というぐらいのマインドを持たないと成功しないでしょう。

チーム作りにおいても、目標が大きければ大きいほど良い人が集まります。「あったら便利だよね」というレベルの目標では、今の仕事をやめてチャレンジしようとする人はいない。「こんなの無理でしょう」という目標のほうが人は集まります

アカデミックからビジネスに移るにあたって、アカデミックの常識や研究室の中で通じる以心伝心のようなものは切り替える必要があります。CEOはそれを率先して行動に移し、周囲に伝える義務があります。起業家はプライドが高いので、周りがアドバイスしても聞く耳をなかなか持たないのですが、自分で足りない部分を省みることが大事ですね。
例えばHAX Tokyoのようなスタートアップが集まるところに参加して、他社のピッチを聞いて自分たちに足りないことは何なのかを考えてみるとか、そういった日々の出来事の中から実践することもできます。

積極的に場数を踏み、自分たちの甘い部分に気づき、アップデートしていく気概を大学発スタートアップの創業者たちも持つべきでしょう。

現場を知る仲間を作ろう−−村井純氏(慶應義塾大学教授)

課題のある現場に入り込むこと、それができる人と一緒に起業することが重要です。

現場に足を運び、それも一度ではなく、長期に渡って課題を掘り下げていくべきだと思います。2011年の東日本大震災で日本中の大学から学生や研究者が復興支援で被災地に向かいました。慶應義塾大学からもたくさんの人間が被災地に行きましたが、そこで初めて被災者が何に困っていて、しかも希望が見いだせない状態で打ちのめされているかを知ったわけです。

震災復興では宮城県山元町で「ミガキイチゴ」という一粒千円のいちごをプランター栽培で生産したGRAが有名ですが、彼らはセンサーでハウス内の二酸化炭素の濃度や温度、湿度を制御し、高付加価値ないちごの栽培に成功しています。しかも、畑ではなく腰の高さまであるプランターでの栽培に切り替えたことで、農家の腰の負担まで軽減し、働きやすい環境にすることもできた。この事例から学ぶべきなのは、現場に入ることの重要性であり、現場を見て、初めて課題と技術を結びつけることができたわけです。
アクセラレーション・プログラムに参加する場合も、現場に足を運び、課題を知る時間に多くを割ける時間があると望ましいですね。インターンシップのように長い時間をかけて、生活感のある環境の中から見つかる課題もあると思います。

ただ、それを実行するにあたって研究者が全て自分でやる必要はありません。SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では「一人で悩むな、好きなことだけやろう、その代わり、人とは仲良くしよう」という教育ポリシーがあります。

つまりアイデアや技術を持っているのであれば、現場を知っている人間を仲間に迎え入れればいい。それぞれが自分の得意な部分でチームに貢献することが大事なのです。
一つの技術を突き詰めることが得意な人間もいれば、現場を巻き込むことが得意な人間もいます。自分とは異なる個性を持った人間を集めてチームアップしていくことが不可欠だと思います。

(取材、文:越智岳人

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