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ハードウェア・スタートアップが選ぶべき提携先企業とは

HAX Tokyoでは日本で活躍するハードウェア・スタートアップを招くトークセッションを不定期に開催しています。今回は2019年12月に住友商事本社で開催されたイベントから、ZMP代表取締役社長 谷口恒氏によるトークセッションの様子を2回に分けてレポートします。

ZMP
2001年に設立。家庭向け二足歩行ロボットや音楽ロボット開発・販売からスタートし、2008年から自動車分野に進出。自動運転技術の研究開発と並行して、メーカーや研究機関向けに自律走行車両の提供を行う。現在は輸送ロボットや高齢者用の一人乗りモビリティ、警備ロボットなどの開発・製造・販売を手掛ける。

シード・スタートアップが成長する2つのルート

スタートアップが成長していく方法として、2つのルートがあります。一つは大きなビジョンを掲げて大型の資金調達を行い、売り上げがない段階から大きなチームを作っていくやり方。もう一つは収益のベースとなるようなビジネスを立ち上げ、その売り上げ規模にあわせて必要な人材を採用していく堅実なやり方です。

特に近年はスタートアップに対する投資環境が良いので、前者でロケットスタートするスタートアップも少なくありません。ただ、ZMPの場合は後者を選びました。
研究開発型のスタートアップの場合、大きな売り上げが見込めるまでには時間を要します。仮に大型の資金調達をして人材を集めたとしても、アウトプットが無いと自分たちが苦しくなります。

ZMPが全自動運転の自動車開発を目指して開発を始めた際も、いきなり自動車から入ったわけではありません。最初に10分の1サイズのモデルを出して売り上げを着実に積み上げながら、反応を見て、一人乗りの電気自動車に着手し、自動車やバスとステップアップしていきました。一足飛びに進めずに、段階を踏んで一つ一つ成功させていくことがハードウェア・スタートアップには重要です。

もちろん、大きなビジョンを掲げて最初からアクセルを踏んでいくというやり方もあり、それを否定するつもりはありません。大事なのは自分たちのビジネスに合うやり方を選ぶことと、収益と投資の按分に気をつけることですね。

自前主義のメーカー企業との提携は注意が必要

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ハードウェア・スタートアップが成長していく上で大企業との共同研究や事業提携、出資は避けて通れません。ハードウェア・スタートアップにおいて、理想的な提携先はいくつかパターンがあります。

一つ目はスタートアップの製品を使ってくれる企業。スタートアップは開発に専念し、ユーザーである企業からフィードバックを受けて改善を積み重ねていくという関係です。
そして、もう一つは商流を持っていて販売してくれる企業です。ZMPは2017年にHAX Tokyoを運営する住友商事から資金調達していますが、ビジネスに対する目利きが鋭い商社から声がかかるというのは、スタートアップにとって非常に重要です。

逆に慎重を要するのは完成品を製造するメーカーとの提携です。特に日本は自前主義の傾向が依然として強く、スタートアップと提携しても途中から独自に実施する道を模索し始めることがあります。

本流のビジネスを持ち、大きな組織体で動く大企業からはイノベーションが生まれにくいと、よく言われます。
だからこそ、オープン・イノベーション志向でスタートアップからのアイデアを求めるわけですが、途中から「これなら自分たちでできるじゃないか」とスタートアップを切り離す方向にシフトしたり、内部の根回しや意思決定に時間がかかりすぎて、スタートアップと足並みが揃わなくなったりする傾向が多いように思います。

もし、オープン・イノベーションとして提携するのであれば、海外に提携先を求めるのも一つの手段です。海外企業はオープン・イノベーションに対する理解が深く、お互いの役割分担が明確で、情報開示もきちんとしてくれるので、スタートアップにとってはやりやすいと思います。

ZMPでも中国最大手のバス車両メーカーであるANKAIと提携していますが、トップダウンで意思決定するスピード感もあり、私たちを尊重しながら一緒に成長していこうという姿勢で接してくれるので、非常に心強く感じています。

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文・越智岳人