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日本に必要なのは外から変革を起こす人と、それを受け入れる企業

HAX Tokyoでは多方面のプロフェッショナルが集まり、シードステージのスタートアップをサポートしています。

その中の一人であるHAX Tokyoアドバイザーの鎌田富久氏は、エンジェル投資家として数多くのスタートアップへの投資と起業支援を行っています。
言わばスタートアップ支援のエキスパートである鎌田氏に、ハードウェア・スタートアップを取り囲む現在の環境や、注目のテクノロジーについて伺いました。

鎌田富久氏のウェブサイト


大企業が成長の中心にいる時代は終わった

――鎌田さん自身、1984年にACCESSの創業に参画し、開発したWebブラウザを世界中の携帯電話に普及させるといった起業家としての実績があるわけですが、その頃と比べて現在のスタートアップを取り巻く環境をどう思われていますか?

スタートアップにとって非常にやりやすい環境になっています。ハードウェア開発でもオープンソース・テクノロジーが普及していますし、AIやクラウドでも使いやすいプラットフォームがある。私がACCESSを創業した頃は、自分たちで何もかもやらなければいけない状態でした。その頃に比べるとアイデアさえあれば、お金をかけずに最初の一歩を踏み出せるようになったと思います。
技術だけでなく、バックオフィスもクラウド系のサービスが充実していますから、必要最小限のチームで、会社を経営できるのも大きな違いですね。

同時にスタートアップにとって追い風となる社会的な変化も日本では起きています。
大企業が中心となって右肩上がりで成長していた時代が終わり、経済の停滞に加えて少子高齢化と人口の減少が加速しています。

――これまでの成長を担っていた社会の仕組みが機能しなくなったということは、大企業以外のプレーヤーが社会を変えていく存在になるのでしょうか

はい、新しい時代に向けてトランスフォームしていくためには、既存の仕組みの中からではなく、外からディスラプト(変革)を促すほうが有効です。

大企業主体の成長モデルの中から何かを変えようとしても、既得権力を守りたい既存の勢力に阻まれてしまいます。そういう意味では大企業を飛び出して、スタートアップとしてやりたいことをやるほうが、結果的に楽だとも言えます。

――大企業にいても、起業しても苦労することに変わりないのであれば、やりたいことが実現できる確度が高いほうを選ぶべきだというわけですね

社会全体で大企業とスタートアップの間に流動性を高めることも効果的だと思います。社内の優秀な人材をスタートアップとしてスピンアウトさせているサムスンのように、大企業の中でスピード感を維持しながらやりきれない事業があるのなら、一旦組織ごと外に出してみるというのも有効だと思います。成長すれば事業部として買い戻してもいいし、株を売却してキャピタルゲインを得れば良いわけです。大企業発スタートアップですね。
もし、失敗したとしても、VCなど投資家であれば単なる損失ですが、事業会社から見れば、失敗を経験した人材というのは非常に貴重な戦力です。大きな組織というのは、失敗することができないような仕組みになりがちです。

例えば数千億円規模の会社から見れば、1億程度の損失は問題になりません。失敗しても問題ない規模の事業をどんどんやらせてみるというのも、これからの時代における大企業の役割だと思います。

差し迫った課題と相性のいいスタートアップ

どういった領域であれば、大企業ではなく、スタートアップが主役となりうると思いますか?

まずは差し迫った需要がある領域でしょうね。具体的には少子高齢化に伴う医療やヘルスケアは、先程言ったような外から変えていく存在が必要です。また、AIロボットゲノムなどの新しい技術を持つスタートアップも、課題を持った企業と組むことで社会課題を解決できるキープレイヤーになりうると思います。

スタートアップを成長させていくためには、リードカスタマーの存在が重要です。
どんなに素晴らしい製品や技術も使われないと進化しません。新しいものを導入するというのは慎重になりがちですが、「新しいことを試していこう」という気持ちで、多少問題があるプロダクトでも使っていきながら一緒に改善していくというのが、これからの大企業の役割だと思います。

――住友商事とSCSKがSOSVと運営するHAX Tokyoも、広義の意味では近いものを感じます

BtoBのビジネスでスタートアップがリードカスタマーを開拓するというのは非常に難しいので、住友商事やSCSKが持つ商流の中でリードカスタマーを開拓できるようになるといいですね。
大企業とスタートアップがともに前に進むという事例が生まれることを期待しています。

日本のハードウェア・スタートアップにとって、製造業の一通りがそろっている国にいるというのは大きなアドバンテージです。量産は中国であっても、イメージをコンセプトに落とし込んで試作するぐらいまでなら日本で進めるのが最も手軽です。

ビジネス面でも先に挙げたような医療・ヘルスケア市場は、日本が世界に先がけて課題を抱えているので日本でシェアを取って実績を残せば、海外でも成功する可能性は大きいでしょう。そういった状況で海外進出までを視野に入れられるHAX Tokyoのようなアクセラレーター・プログラムから、どんなスタートアップが生まれるか楽しみですね。

※後半は次週掲載します。


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HAX Tokyoでは現在Batch 2に参加するスタートアップを募集しています。

採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen、HAX San Franciscoのプログラムに参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトまで。3月末までオンライン説明会も開催中です。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
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文・越智岳人