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コロナ禍の今、注目すべき技術と企業のあるべき姿

HAXとHAX Tokyoは2020年5月19日にオンラインイベント「新型コロナウイルス禍(以下、コロナ禍)におけるハードウェアイノベーション」と題したイベントを開催しました。今回はHAX Shenzhenのダンカン・ターナーによるキーノート・セッションと、スタートアップとの協業やオープンイノベーションに関心を持つ企業担当者からの質疑応答の様子をレポートします。

コロナ禍におけるHAXから見たハードウェアイノベーション

コロナ禍によるビジネスへの長期的な影響は少なくとも1年はあると私たちは認識しています。しかし、人類が危機に直面しているときこそ、真のイノベーションが生まれると信じています。

HAXが拠点を置く中国でも、使用済みマスクのリサイクルやデリバリードライバーの体温測定や、消毒ロボットの稼働など新たなライフスタイルが生まれています。
都市のロックダウンによって、あらゆる共同での活動が制限され、貿易赤字など経済が打撃を受けるだろうというネガティブな予測がある一方で、インフルエンザ感染者の減少や、ワークスタイルの柔軟性や密集した都市そのものの必要性が下がると言ったポジティブな予測もあります。

企業の働き方にも変化が生まれています。Twitterではコロナ終息後も永続的にリモートワークを認めると発表しました。日本でも接触人数や移動時間を80%以上削減したトヨタ自動車・豊田章男社長の新しい働き方が注目されています。

コロナ禍を乗り越えるためにも、各企業はイノベーションに焦点を当てるべきだと私たちは考えています。

HAXが注目する4つのキーワード

HAXが特に注目しているのはデジタルヘルス、ディーセントラリゼーション(分散化)、労働力の自動化、製造業の脱グローバル化です。

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ヘルスケアにおいてはHAXの姉妹アクセラレータであるIndie Bioとも連携して検査キットの開発をサポートしています。特にHAXではメンタルヘルスや糖尿病など、コロナ禍でリスクが高まる領域に注目しています。

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HAXが支援している医療系スタートアップ2社の事例

VHSビデオの普及によって映画館の需要が減少したように、消費者ニーズに合わせて家庭での体験を豊かにするテクノロジーが今後ますます発展していく可能性があります。
特定の場所にアクセスする必要があったサービスを、ユーザーの自宅で完結させる「ディーセントラリゼーション(分散化)」ビジネスは、小売や外食産業から公共交通機関、オフィス関連のサービスに至るまで幅広い業界に影響を及ぼすでしょう。

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ディーセントラリゼーションビジネス領域でHAXが支援するスタートアップRobomart

その一つがオフィスワーカーの在宅勤務です。当初に懸念していたほどの混乱を招くことはなく、むしろ新たなワークスタイルとして認知されたのではないでしょうか。しかし、リモートで働く従業員の生産性を維持しながら適切にマネジメントする上で、メンタルヘルスケアは重要な課題だと私たちは認識しています。

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従業員のメンタルヘルスを支援するデバイスを開発するFeel

コロナ禍以降、不特定多数が利用する共有スペースでは、より清潔な環境を維持することが求められています。米マクドナルドでは店内飲食を再開するにあたって、多くの人が触れる壁やトイレを30分おきに清掃するほか、注文用端末を1回使用する毎に拭くといった対応をガイドラインとして定めています。

こうした事から、人がやりたがらない・すべきではない作業を代行するロボットのニーズは高まっていくでしょう。

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HAXが支援する作業代行ロボット関連のスタートアップ2社

グローバルサプライチェーンがコロナ禍によって分離されたことにより、効率性を追求する方向から柔軟かつ強靭な体制が求められています。新しいサプライチェーンを迅速に立ち上げる手段としての「自動化」は、今後ニーズが高まることを見込んでいます。

HAXでは自動化を支えるテクノロジーとして、リモートロボット、ARによるパスプランニング、画像認識、ロボットタッチに関連するスタートアップに2020年は投資していく予定です。

HAXが日本に期待する4つの理由

新しい需要をテクノロジーで実現するスタートアップを支援するにあたって、HAXは日本に期待しています。強力な資本市場を持ち、スタートアップとの連携に積極的であること、サプライチェーンのグローバル化・多様化が進んでいること、そして、自動化に対する重要性を深く理解している点にあります。

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※本記事の内容は、2020年5月12日に公開した「新型コロナウイルス(COVID-19)に伴う、HAXの投資環境見通し」でも詳しく紹介しています。

QAセッション

イベントの後半では参加者からの質問にHAXチームが回答するQAセッションの時間が設けられました。

――コロナ禍のスタートアップにとって最も難しいことは?それに対して、HAXはどのような貢献ができるか

三ヶ月後、半年後の見通しがつかない状況かつ経済全体の動きが遅くなっている中で、スタートアップにはできるだけ早く走ることが求められています。なかでも重要なのは資金調達、製品・サービス開発、大企業との協業の3つでしょう。

HAXとしては引き続きスタートアップへの投資を継続しながら、大企業とスタートアップとのパートナーシップが途切れないよう、パイロット案件実施のサポートを通じてイノベーションの創出を支援しています。また、開発面でもHAXのスタッフがリモートワークで深センからサポートしています。

――HAXは教育市場にも目を向けているか
はい、今後も継続して積極的に投資予定です。一例をお伝えすると、3~9歳の児童に第二言語として英語を教えるロボットを開発するEmysに投資しています。

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――日本の大企業が世界で生き残るために、中国や中国企業から学べることは?
一言で言えば、意思決定の早さです。中国では大企業からスタートアップに至るまで、総じて意思決定から実行までのスピードが早く、日本企業も学べる点は多いと感じます。重要なのは、イノベーションが生まれるチャンスは「早さ」から生まれているということを認識することです。

例えばBYD(中国の大手電気自動車メーカー)は現在で世界でも最大手のマスクのサプライヤーになっています。BYD以外にもコロナ禍の中で宅配事業から自動販売機にシフトした企業や、紙のリサイクルを手掛けていた企業はマスクのリサイクルに着手するなど、「早さ」を損なわずに、新たなビジネスに進出する企業が多々あります。

――直接人と会うことができない状況で、イノベーションを生み出すために企業ができることとは?
あらゆる企業において仕事への取り組み方が変わっています。リモートワークなど新しいワークスタイルに慣れることも大事ですが、信頼関係の構築や事業開発の推進をオンラインベースでいかに進めるかが重要になります。

――コロナ禍の影響を受けて、新規事業やイノベーション創出に係る予算に制約が発生する可能性も企業によってはありうると思う。そういう状況下でイノベーションを加速することの重要性を、どのように社内に伝えていくべきか。
コロナ禍を受けて、コストカットに進む企業とイノベーションの加速に舵を切る企業の2つに分かれることが予想されます。
大企業は、この先の新しい市場を生き抜くために、否が応でも変革を求められる可能性があります。一方で変革を実現するための技術を、スタートアップが持っている可能性があります。

今のこの時期を、アフターコロナ社会の変革を見据え、優れた技術を持つスタートアップとの実証実験を行う期間として活用をすることを大企業の方にはお勧めます。
試すことのハードルを今のうちに社内で下げておくことで、状況が落ち着いたあとにイノベーションの加速させることができるでしょう。

HAX Digital Camp

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HAXは大企業とスタートアップの両方を支援するためにDigital campを立ち上げました。ご興味ある方は、是非下記のリンク、もしくは上記画像のQRコードよりお問い合わせください。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
Twitter: https://twitter.com/HaxTokyo
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取材・文:越智岳人