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Coachableであれば、スタートアップは「普通の人」でも成功できる

スタートアップの創業者というと、どんなイメージを持つでしょうか。
画期的な技術を生み出す天才、今までにない市場を創出できるビジネスのエキスパート、多くの人の心をつかむデザイナーなど、何かに突出した才能の持ち主をイメージするかもしれません。
しかし、これまでに成功を収めたスタートアップの創業者は必ずしも天才ばかりではなく、普通の人も多いとエンジェル投資家の鎌田富久氏は明かします。

前回に続き、HAX Tokyoアドバイザーの鎌田氏へのインタビューの後編をお届けします。


成長するスタートアップと、伸び悩むスタートアップ

−−鎌田さんがスタートアップに投資する際の判断基準は何でしょうか?

そのスタートアップと、一緒に実現したい未来がそこにあるか—具体的に言うと、社会的なインパクトがあり、何かを抜本的に変えうるものを持っているかは重要ですね。

その次に見るのは創業者とチームメンバー。自分たちがやろうとしていることに使命感を持っているか、厳しい局面が来ても途中で投げ出さないかといった資質を見ます。

アーリーステージのスタートアップに重要なのは「あきらめない心」があるかどうかです。
優秀な人材が揃っているスタートアップでも、自分たちの考えに固執してしまうと、仮説通りに進まなかった時に軌道修正できずに伸び悩んでしまいます。毎日の失敗から学び、うまくいかない理由を分析して前に進める柔軟性を持てるかが重要です。うまくいかないことを人のせいにしたり、言い訳をしたりしていると自分に都合のいい分析になってしまい、どこかで歪みが生じます。

最初は大したことがなくても、学ぶ意欲が強いチームは後から化けます。これは「投資家あるある」ですが、Coachable※かどうかというのは重要ですね。投資家同士でスタートアップについて話す際、
「彼らはCoachableかい?」
「そうだね、今は課題も多いけど彼らならうまく乗り越えられるだろうね」とか
「いや、全然駄目なんだよ。全く聞く耳を持たなくて」
という話はよくありますね。

※Coahable…直訳すると「指導可能な」人。ここでは、「アドバイスに耳を傾けることのできる」人であったり、「指導しがいのある」人という意味

そもそも最初から経営がうまい創業者というのはいなくて、むしろ最初は課題もあるけれど、走りながら学習して成長していく人のほうが多いですね。

投資先の事例を挙げると、エレファンテックはインクジェットによる基板製造というビジョンを掲げて起業したスタートアップです。1年目はピッチコンテストに出まくって、反応があった先と片っ端から組んでいましたが、当初の技術には課題も多く上手く進まない時期もありました。
そこで彼らは積極的に外に出て、他社とのコラボレーションから自分たちの技術を進化させて、応用範囲を広げることに注力しました。その結果、現在のフレキシブル基板製造にシフトし、めっき加工を組み合わせることによって、従来の製造方法よりも環境負荷が低く、応用先も広い基板を製造できるようになったのです。

彼らのように走りながら成長できる人間はスタートアップとして強いですね。

日本のスタートアップが勝負できるフィールド

−−製造業の基盤がある日本にいるということは、ハードウェア・スタートアップをやる上で有利だとのことですが、そういった環境を活かしながら成功するための秘訣はありますか?

グローバルで勝てる領域に対して、ソフトとハードの組み合わせで勝負することですね。ソフトウェアやWebサービスだけでは欧米や中国に太刀打ちできませんが、誰がやっても時間を要するハードウェア開発には日本にアドバンテージがあります。
しかし、ハードだけでは優位性はありません。ハードとソフトを組み合わせ、プラットフォームとしての価値を作ることが重要でしょう。

パーソナルモビリティを開発しているWHILLも、モビリティの製造・販売だけではコモディティ化する可能性がありますが、ここにMaaSや自動運転が絡むとモビリティがサービス化し、さまざまな施設で利用されることでプラットフォーム化していく。このようにハードとソフトの両方でビジネスを考えるというのが、今後のスタンダードになるでしょう。

HAX Tokyoでは現在Batch 2に参加するスタートアップを募集しています(締切:4/14)

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採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen、HAX San Franciscoのプログラムに参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトまで。3月末までオンライン説明会も開催中です。

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文・越智岳人