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xRoboticsから学ぶべきことと、Zumeが失敗した理由

本記事はHAXのブログに投稿された「Lessons On Automation From Our Investment In XRobotics, And Notes On Why Zume Failed」を翻訳したものです。HAXが投資したxRoboticsと、2020年に事業撤退したZumeを比較しながら、両者が開発したピザ製造ロボットの違いを分析しています。

xRoboticsはピザを製造するロボット(以下、ピザロボット)をローンチすると発表しました。私たちは彼らへのハンズオンでの支援を通じて、アーリーステージのスタートアップにとって、ロボットによる自動化ソリューションの開発がいかに難しいかを学びました。

2020年初頭にZume※がピザ関連の事業から撤退したことで、多くの人はピザロボットや食品製造の自動化は時期尚早だったと受け止めました。

一方で私たちは、その知らせを受けた数ヶ月前にxRoboticsに投資したばかりでした。当時、彼らはサンフランシスコとモスクワに拠点を置く小さなチームで、Zumeと同じ事業に取り組んでいましたが、課題に真摯に向き合い、合理的に解決策を導き出していました。出会った当初から、彼らには世界中のあらゆるピザ屋のキッチンに革命を起こす力が備わっていました。

※Zume…ピザロボット開発や宅配サービスを手掛けるスタートアップとして2015年に創業。400億円以上を調達したものの、2020年に撤退。ちなみに米国のピザ市場規模は5兆円以上と言われている。


xRoboticsにとって最初の製品となるxPizza Oneは、小型のピザロボットです。

特定の環境に設置し、予想できないタイミングで来る指示を決まった動作でこなすロボットを低コストで開発するノウハウと、外食ビジネスが抱える制約を、このロボットはクリアしています。

営業中にキッチンの作業を止めることはできないので、洗浄作業は15分で終わるように設計しています。また、パーツが破損した場合でもパーツがすぐに交換でき、スピードを落とさずに稼働できるように作られています。世界中のピザ屋が使う業務用冷蔵庫と同じサイズなので、あらゆる店舗で導入しやすいサイズであることも特徴です。

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xRoboticsが開発したピザロボット「xPizza One」

ローンチ時点で23種類以上のトッピングと5種類以上のソースを扱い、最大で1時間に150枚(標準的なピザ店の製造量は約60枚とされています)を製造できます。また、人間が得意とする作業はあえて人間に任せています。一部の工程は自動化しながらも、生地を伸ばしたり、材料をカットする作業や、接客は人間が担います。こうしてオーナーは人間が担うべき作業や経営に集中できるようになるわけです。


なぜHAXは、Zumeが失敗した事業でxRoboticsが成功すると考えているのか

Zumeが開発したピザロボットの基幹となる工程を見てみると、彼らはロボットの得意なやり方に合わせてピザ製造を最適化するのではなく、人間がピザを作る方法をそのまま模倣しようとしていました。 ロボットアームにはスプーンと刷毛が取り付けられ、ソースを生地に塗り、ピザをオーブン出し入れできるよう設計されていました。

もう1つの重要なポイントは、彼ら製造業の現場で使うような精密な機械を採用していたことです。6軸のロボットアームだけでも数千万円ものコストが重くのしかかります。加えて彼らのピザロボットは大半のピザ屋には収まらないサイズでした。

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そして、彼らが自動化したのはピザ生地にソースを塗り、オーブンにピザを置くという、さほど時間を要しない作業で、キッチンスタッフの労働時間の95%を占めると言われるトッピング作業には対応していませんでした。

HAX Tokyoからの補足
Zumeが高コストなロボットアームを採用し、自動化の優先順位が低い作業にフォーカスした一方で、xRoboticsはキッチンスタッフにとって最も自動化ニーズが高いトッピングにフォーカスしています。作業員が生地をトレイに乗せ、タブレットからトッピングを選択すると個々に収納された容器からピザソースやチーズ、トッピングがむら無くトッピングされます。
こうした現場のニーズに即した設計思想をHAXが評価したことが伺えます。

ほとんどの店はテイクアウトやデリバリーに偏っているので、ピザを作る派手なロボットはあまり売り文句にはなりません。xRoboticsの開発パートナーの一社だったDodo Pizzaでは、先週売り上げのうち、70%以上がテイクアウトやデリバリーでした。Dodo Pizzaは、美味しいピザを迅速かつ一貫した方法で提供することに注力しており、xRoboticsのソリューションが支えています。

xRoboticsはHaaSモデル※を採用しています。取引先となるピザチェーンは、機器を導入する初期費用に加え、24時間年中無休の技術サポートを含むシステム利用料をサブスクリプションで支払います。

※HaaS…Hardware-as-a-Service.月額課金でハードウェアを提供するビジネスモデルのこと

彼らの一号機はミシシッピ州オックスフォードにあるDodo Pizzaに設置される予定です。2021年初頭には全米で50以上の店舗に設置される予定で、2021年度末に向けて400以上の店舗への導入に向けた準備が進んでいます。

HAXはハードテックに年間25億ドルを投資しています。ロボットや自動化で事業化を目指すアーリーステージのスタートアップからの連絡を心よりお待ちしています。

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HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/



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