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投資、融資、助成金――スタートアップが知っておきたいファイナンス

スタートアップに限らず、企業を経営する限り避けて通れないのがファイナンスです。
売上のないシード期のスタートアップであれば、エクイティによる資金調達だけでなく助成金や補助金の活用しながら、ゆくゆくはメンバーのスキルを生かした受託開発で売上を積むなど、資金を集める手法についてのノウハウも必要です。CFOや財務業務の経験者がいない場合にはCEOが自ら、ファイナンスの知識を身につけることが求められます。

そこで今回は、スタートアップ向けに財務戦略サービスを提供するカウンティアに「スタートアップが知っておきたいファイナンス」について、新型コロナウイルス(以下、コロナ)による影響も含めて伺いました。

VCとエンジェル投資家

VC(ベンチャー・キャピタル)は投資の原資となる資本を自ら所有しているわけではなく、企業などから調達します。そのため、投資の傾向はVC自身が調達する企業の景況感の影響を受けます。

一方でエンジェル投資家は自らの資本で投資するので、コロナ禍で自らの資産に影響が出れば投資は絞る傾向となります。しかし、エンジェル投資家自身のヴィジョンや志向により投資方針は変わるので、ヴィジョンが一致するスタートアップであれば、その限りではありません。

VCの傾向で言えば、かつてのようなスタートアップ・バブルめいた投資とはトレンドが変わりつつあり、的を絞った投資にシフトしています。投資がついたスタートアップに他の投資マネーが集まりやすく、有望と見なされるスタートアップに資金が集まりやすい傾向にあります。

もともとシリーズA以降の資金調達は難易度が高いと言われてきましたが、新型コロナウイルスの影響を受け、その傾向は更に強まっています。
対面でスタートアップと会えない状況では、オンラインで面談する必要があります。創業者の人柄評価やデューデリジェンスをオンラインで完結させるのは容易ではありません。
他方で、コロナ以降も戦略的に投資を続けるVCも存在しており、調達が進んでいる状況もあります。シード期の資金調達などは、このような状況でも進みやすいという話は聞いています。

シナジー効果が重要なCVC

CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル/企業によるVC)は、投資の本体である企業とのシナジー効果が重要です。一部、VCのようにキャピタルゲイン(株式売却による投資益)を主とするCVCも存在しますが、大半のCVCはシナジーを見ます。

CVCはスタートアップを本業との親和性で評価します。VCは市場や事業の成長性を見ますが、CVCは自社の事業に貢献できるかを見るので、CVCの母体企業と共同研究や開発を行うといった仕事の実績があると投資にも有利に働きます。

コロナ禍で投資を控える傾向が無いわけではありませんが、事業拡大に貢献できる技術を持っているスタートアップであれば、むしろ現状を打破する起爆剤としてポジティブに評価されるでしょう。

事前準備がモノを言う金融機関からの融資

スタートアップと融資の関係で言えば、コロナ以前は日本政策金融公庫の創業融資が活発でした。しかし、コロナ禍の影響を受けキャッシュフローが回らないなどの緊急性の高い問題を抱える企業が増えたことで、公的支援を絡めた融資にも注目が集まっています。
上記のような融資は、経済の保全という意味合いが大きいのですが、「経済のためにスタートアップを守る必要がある」という考えもあるので、スタートアップでも融資が受けられるケースも増えています

創業融資を受けた実績を基に民間の銀行が融資することもありますが、創業以降売上ゼロが続いているスタートアップが融資で調達をするのは困難でしょう。まずは金融公庫の創業融資をもとに、売上を生み出す方向に注力するなど、キャッシュフローをつくることに目を向けましょう。キャッシュフローが回り出せば融資による調達活動も進めて行けます。

コロナ禍における融資の動向ですが、たくさんの公的支援が急に準備された関係で窓口がパンク状態にあるため入金までに数ヶ月を要する場合もあります。相談できる機会も以前に比べ限られてきますので、融資を受ける場合は限られたチャンスを有効にするための事前準備が重要です。

具体的には、まずは会社の管理業務をきちんと行い、バランスシートの中身を把握しておくことが基本です。月々の売上、人件費や固定費、粗利益、借り入れの状況などを大まかにでも把握していない経営者は金融機関から信頼を得られません。

また、いざという時のリスク回避の手段として、ビジネスローンも利用できます。
公的機関からの融資の金利と比較してビジネスローンの金利は高いというデメリットはありますが、審査が早く、数日中には入金されるので、急場をしのぐ最終手段として知っておくべきでしょう。
しかし、急場が来てから情報収集するようでは遅すぎます。早いうちから情報収集し、元気なうちにビジネスローンのカードをお守り代わりに持っておくだけでも十分です。

金融機関からの調達は時間を要します。説得するロジックもVCやCVCとは異なりますので、早い段階から準備しましょう。

コロナ禍で狙いたい助成金

ハードウェア・スタートアップの創業者であれば、「ものづくり補助金」が最も馴染みのある助成金だと思いますが、スタートアップ向けの助成金として近年使いやすくなっています。
応募受付の頻度が年1回から四半期に一度になり、採択率も大幅に上がり、スタートアップでも使いやすい内容になっています。

融資や投資と異なり、助成金は企業が特定の目的で支払った金額に対して、半額から三分の二を規定額の範囲で後日支給する制度です。そのため、助成金を利用して機材を購入する場合には、そのための資金を事前に全額を自分たちで用意する必要があります。

コロナ禍においては、支給対象であれば持続化給付金は必ず申し込んでおきたい制度です。書類申請を代行する社労士や税理士などの事業者も存在しますが、代行手数料について不透明なケースがありトラブルが発生したケースも聞いています。申請はオンラインで完結し作業自体も比較的容易にかからずに終わりますので、自分たちで申請することをおすすめします。

また、直近では家賃の半年分の給付金を支援する制度も準備が進んでいます。賃貸借契約書があればコワーキングオフィスでも有効なケースも考えられるため、シード期のスタートアップであっても条件が合えば支給されます。

※「家賃支援給付金制度」は令和2年度第2次補正予算の成立後に執行される予定の制度です。

コロナ禍による助成金制度は、コロナ以前ではありえないほどスピーディーに情報がアップデートされています。常に最新の情報をキャッチアップしておくようにしましょう。

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取材協力:カウンティア

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(取材・文:越智岳人