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資金調達前に知っておきたい「資本政策」とは

HAX Tokyoでは採択したスタートアップに対し、各社の技術シーズとビジネスニーズを引き合わせる場を提供すると共に、スタートアップ経営の基礎を学ぶカリキュラムを提供しています。

今回はスタートアップ向けのファイナンスに関する講座の中から一部抜粋して、「資本政策の作り方」について紹介します。

資本政策とは

事業計画を達成するための資金調達や株主構成に関する計画を指します。
英語ではCap Table(キャップテーブル) や Capitalization tableなどとも言います。

スタートアップは売上がない状態から経営が始まります。
銀行などの金融機関は売上がない事業者への融資はリスクが高いため積極的ではありません。そのため、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)などのエクイティ投資家の存在が欠かせません。

エクイティ投資家から資金を調達する前に、将来の株主構成やエクイティからどれだけ調達するのかを計画することで、資金調達を円滑に行うことを目指します。

※エクイティ…株主資本。株式等によって調達する、返済義務のない資金

資本政策の作成例

一般的なケースでは
・発行株式数
・各株主のシェア(比率)
・調達額
・株価(バリュエーション)
の推移を、表計算ソフトなどを用いてシミュレーションします。

図1

※資本政策シミュレーションの一例。他の形式もありますが、各指数をシミュレーションするのに、この形式がより良く推移を表現できます。

上記の図では創業期に代表取締役が500万円の資金をもとに500万株を発行、シェアは代表一人が100%持つ形で創業した形になっています。

その二ヶ月後に1社目のVC(VC1)に対して50万株を発行し、2000万円を調達しました。これにより各株主のシェアは代表取締役が90.91%、VC1が9.09%になります。

全体の9.09%に当たる株に2000万円という価格がついたことにより、このスタートアップの時価総額(全株式の評価額)は2億2000万円という計算が成り立ちます。
そして株価は時価総額÷発行済株式数で計算しますので、1株あたり40円ということになります。

同様に次のシリーズに進むたびに発行する株式数と調達額が増え、それに沿って株主比率と時価総額、株価も変動しているのがわかります。

資本政策の作り方

資本政策を作るにあたっては数値計画にあたる損益計算書(P/L)が必要です。
今後、どのような収益や費用が発生し推移するのかを、月次で表にまとめた数値計画をもとに計画を実行し、目標を達成するために必要な資金額や調達タイミング、キャッシュ残高がなくなるタイミングを導き出します。

図2

数値計画をまとめた損益計算書(P/L)の見本

以前にファイナンスを管理する上で、経営者が見ておくべき指標としてバーンレート(経営に必要な一ヶ月あたりの資金)とランウェイ(資金が尽きるまでの残り期間)について解説しましたが、こういった数値計画を作成し、自社の経営状況と計画を可視化しておくことは金融機関や投資家とのコミュニケーションにおいて避けては通れません。

こうして、資金調達が必要なタイミングがわかったところで、エクイティによる調達を計画します。ちなみに銀行からの借り入れなどデット(負債)での調達の場合は資本政策を作成する必要はありません。

資本政策の作成にあたっては経営者と外部株主の持分比率を、フェーズごとのリスクや貢献度合いなど総合的に勘案して考えます。

例えば経営上のリスクが高い時期に出資した株主には、他の株主よりも多く株式を発行することで、イグジットする際のキャピタルゲイン(株式の売却益)が多く入るようにするといったように関係性を考慮しながらバランスを配慮することが重要でしょう。

創業者は過半数のシェアを持つようにするべき

最後に会社の創業者(代表取締役)の株主比率は、どの程度にしておくべきでしょうか。

一般的に企業がIPO(上場)するまでに必要な調達額は10〜20億円と考えておくと良いと思います。20億円を調達した際に創業者のシェアが50%以上になっていると理想です。

上場時に代表取締役のシェアがあまりにも低い場合、経営や株価の安定性が低くなるため、上場が困難になる可能性もあります。

取材協力・監修:カウンティア

取材・文:越智岳人

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