見出し画像

スタートアップの質問箱 ― チームで揉めると、代表なのに丸め込まれてしまう

HAX Tokyoチームがスタートアップが抱える悩みに回答する企画をスタートします。

今回のテーマは、多くの経営者が感じるであろう「チームで揉めた時、いつも丸め込まれてしまう」という悩み。自分の会社のはずなのに、なぜか議論に勝てない。そんな悩みの背景には、スタートアップが成長する過程で対応していくべき変化が潜んでいました。

まずは「丸め込まれる」理由を考える

――「チームで揉めた時、自分が代表なのにいつも周りに丸め込まれてしまいます」。スタートアップの経営者からこんな相談を受けたら、どのように答えますか?

岡島:周囲に丸め込まれてしまう時点で、「その程度の熱意しかない自分が代表で良いのだろうか」と自問すべきでは?という、身も蓋もない返事になってしまうのが正直なところです。どうしてもこれをやりたいという強い気持ちやスピード感があれば、丸め込まれるような隙は生じないですよね。

市村:僕も同じように感じますが、質問に対して「お前はリーダーを降りるべき!」で終わってはいけないと思うので……(笑)。まずはなぜ丸め込まれてしまうのかを考えてみましょうか。自分の意見を通すと相手に嫌われてしまうからでしょうか。辞められてしまうのが怖いからでしょうか。

そういった感情論でないのであれば、ロジカルな面ですれ違いが起きているのかもしれません。論点がずれているのか、伝え方が相手にフィットしていないのか。あるいは、会社はバックグラウンドの違う人間が集まって構成される組織ですから、個人として達成したい目標と、会社としての優先事項の間に乖離が生じることもあり得ます。その場合、トップに限らず、経営層の誰かが「丸め込まれてしまった」と感じるケースもありそうですね。

テクノロジーの追求と経営判断はイコールでない

市村:僕自身の肌感覚としても、共同創業者ではあるけれどCEOではないNo.2やNo.3ポジションの人たちが悩んでいるケースによく遭遇します。

岡島:「技術がわかるCEO 対 ビジネスがわかるCOO」という構図も定番ですね。テック出身の人がビジネスに強い人とチームを組み、そのまま代表を務めているパターンです。ビジネス面を相方に任せていった結果、もともと作りたかったものを売ることが叶わず、個人的には気乗りしないものを作っているので楽しくない、といった話はよく耳にします。

こうしたテックに強い代表がビジネスサイドの人に丸め込まれる状況の根っこには、視点の偏りという問題もありそうです。CEOが為すべきことは、自分たちのプロダクトを世に広げて、良い価値を提供して、お金をもらって組織を維持運営させるということ。そのための生存戦略を考えることであって、必ずしも技術の追求とイコールではありません。

――技術的な挑戦よりも、経営的な判断が優先されるケースは多そうですね。

岡島:経営責任者である限り、技術的に自分でやりたいことがあったとしても、ビジネスの視点で会社が存続できる選択肢をとらなければいけません。他方で、「会社を経営する上で、技術の追求が欠かせない」というロジックを組むこともできるはずです。たとえば、じっくりと技術開発に時間を費やして、目先の利益ではなく将来の大きい資金調達につなげていく、といったものです。会社の代表として技術が重要だと思うのであれば、それを追求するためのロジック構築にも同等の力を注ぐべきでしょう。

それでも毎回相手の意見が通るのであれば、丸め込まれてしまうと不満を持つのではなく、「正しい意見を持つ仲間がいて良かった」と思うべきかもしれません。自分で合理的に理解できるのであれば、その意見は受け入れた方が良いでしょう。

意思決定層のフォーメーションを再点検する

岡島:スタートアップの創業期には、個人的なモチベーションと会社で為すべきことが合致していたはずです。そこにずれが生じてしまったのであれば、組織として調整していくほかありません。

どうしても技術をやりたいならCTOに移行して、代表としての判断を別の人に任せたり、数値を追うならCOOになったりと、意思決定層のフォーメーションを変えていくことがひとつの答えになるかもしれません。実際にCEOとCTOのポジションを交換するスタートアップは存在しますし、CTO的にピュアな技術研究者として創業した人が、後からCEO的な経営センスを急成長させるようなパターンもあるので、役割は必ず固定されているとは考えない方が良いでしょう。

市村:創業期と成長期と維持期で、それぞれの役職に求められる能力も変わってきます。取締役間の関係が長期に渡ってしっくりこないのであれば、個人間の関係だけでなく、「会社のステイタス」という一歩引いた視点も加えてみると良いのではないでしょうか。

当たり前のことですが、たとえば社員が3人の時と10人の時では、会社の最適な在り方も変わるはずです。人数を増やした結果、今までと同じ進め方では立ち行かなくなったのであれば、現状に即してロールやメンバーを組み直したり、企業文化も含めて見直したりする良いタイミングなのかもしれません。(聞き手・文:浅野義弘)

回答者プロフィール
株式会社プロメテウス代表取締役 市村慶信

国内電機メーカーの半導体営業・企画部門にて営業業務を通じて電子機器製造のサプライチェーンの理解を深める。その後2007年から電子部品商社の経営企画部門に移り会社経営に従事。経営の立て直しを行いながらベンチャー企業への経営支援や提案を実施。2014年に株式会社プロメテウスを創業。これまでの経験を活かし国内外で複数のベンチャー、広告代理店など、非メーカーのプロジェクトの立ち上げ・経営サポートを行う。

ファストセンシング株式会社 岡島康憲
大学院修了後、動画配信サービスやIoTシステムの企画開発に従事。2011年にハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事(株)を創業。企業向けにハードウェアプロトタイピングや商品企画の支援等も行う。2017年には、センサーにより収集した情報の可視化プラットフォームを提供するファストセンシング(株)を創業。並行して、様々なスタートアップ支援プログラムの立上げ・運営を行う。

スタートアップからの相談にこたえるオフサイトイベントを開催しています

HAX Tokyoでは起業予定の方や既にスタートアップとして活動されている方、ハードウェア・スタートアップとの事業開発に興味がある大企業の皆様向けに、カジュアルな相談会を実施しています。

相談会ではHAX Tokyoでスタートアップをメンタリングするディレクターやメンター、大企業とスタートアップをつなぐHAX Tokyoスタッフが聞き手となり、大企業との連携のコツや試作開発の進め方、創業期の事業開発など、さまざまな相談をお受けします。

今後の開催予定はHAX Tokyo公式SNS及びニュースレターでご案内しますので、ぜひご登録ください。

https://twitter.com/HaxTokyo

Facebook: https://fb.me/haxtokyo

ニュースレター申込
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd0ibS6wd3YnxUTi8MgnlAy9c9_I4Cw2Wr0eWa4tRxEoPKP6g/viewform?usp=sf_link