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スタートアップの質問箱――良いエンジェルと悪いエンジェルの見分け方を知りたい

HAX Tokyoチームがスタートアップの抱える悩みに回答する本企画。

今回のテーマは「良いエンジェルと悪いエンジェルの見分け方」です。個人投資家(エンジェル)は創業期のスタートアップにとって資金面のサポートだけをするわけではありません。エンジェル自身が起業家としての経験がある場合には、事業面でのアドバイスや経営者としての心構えなどメンタル面でも支えてくれる心強い存在です。しかし、個人ならではの身軽さや懐深さが、時には思いがけないトラブルを生むことも。良いエンジェルの見つけ方や付き合い方について伺います。

リテラシーを身につけて、外部に相談相手を持つ

―― VCやCVCと比較して、エンジェル投資家との契約はトラブルが起きやすいのでしょうか。

市村:VCがおかしな契約をすると組織としての評価を損ねるので、ある程度の規模になれば内部でガバナンスが効いています。エンジェル投資家は個人で活動するため、そうした機能が働かないこともあるのか、契約したときは大きな問題にならなかったものの、後々になってトラブルに発展してしまったケースを何度か耳にしたことはあります。

岡島:たまにビックリするような契約内容を耳にします。ですが、あらゆる契約の前提として、どんな内容であっても両者が等しくWin-Winにはならず、微妙な差であってもどちらかが不利を負うものです。それを理解し、リスクとリターンを正しく判断した上で契約を結ぶのであれば、どんな契約でも問題ではないとも言える。すべては条件を判断する起業家のスタンスとリテラシー次第です。

市村:投資家の「お金を入れてくれる」という機能や、「自分に対する高い評価」だけに目を奪われると、リスクを見落としてしまうかもしれない。スタートアップとして納得できる契約内容を検討するためには、ファイナンスの知識を身につけ、資本政策を相談できる人を持つなど、”持たざる者”として最低限の武装が必要です。

岡島:独学でも『起業のファイナンス』といった書籍などから知識を得られますが、外部に相談相手を持つことも重要です。大学とのつながりがあるなら、学内の産学連携部門やベンチャー支援部門を通じ、最低限の作法やノウハウ、これまでの事例やトラブルなどを聞いておきましょう。地方自治体など公共性の高い組織が設けている相談窓口や、実績のあるベンチャーキャピタルなども良い相談相手です。こうした複数の相手に相談し、それぞれが良いと判断するのであれば、そのエンジェルからの支援は前向きに検討できると思います。

注意すべきは、ひとつの相談先で100%解決するとは思わないことです。すべてを専門的に答えられる人はいないので、担当者が分からないのであれば別の詳しい人や組織を紹介してもらうなどして、信頼できる相談先を増やしてください。HAX Tokyo でもいただいた相談には全力で答えますが、トピック次第では他の専門家におつなぎすることも珍しくありません。

こんな契約条件には要注意!

―― 具体的に気をつけるべき契約の文言や条件があれば教えてください。

岡島:株式の2割以上を保有するような条件は、どんなステージであれ警戒すべきです。特に初期段階で大量の株式を条件とした出資を受けてしまうと、それ以降に渡せる株式が減り、資金調達が非常に困難になります。

会社をクローズした後の条件が含まれているものにも要注意です。「会社を畳んだら、出資した金額を返す」といった条件はメジャーではありませんし、借金を背負わせるのはもはや出資とは言い難いですよね。

同様に「会社を畳んだら、出資者の会社で働く」という条件は、見方によっては働き口が残る安全な契約かもしれませんが、期間や労働形態が理不尽なものになっていないか、気をつけて確認しましょう。

市村:普段から契約書に見慣れていないと、それがイレギュラーな条件なのかどうかも判断できません。出資金の返還義務や雇用に関する表記、議決権への言及などは、盛り込まれていたら気にすべきポイントです。

岡島:投資家に悪気はなかったとしても、あやふやな認識で作られた契約書には注意が必要です。契約内容の意図を聞いて、理路整然と答えてもらえるなら良し悪しを判断できますが、そうでないなら危険信号。あたりまえですが、自分が用意した契約書の内容を理解していない人とは契約してはいけません。

大切なのは、個人としてのコミュニケーション

―― パートナーとしてふさわしいエンジェル投資家だと判断する方法を教えてください。

市村:VCとの付き合いであったとしても、実際には投資対象ごとに担当のキャピタリストがいて、その「個人」が案件を持ってきます。個人としてしっかり付き合える相手なのか、会社を伸ばしていくパートナーとして的確かどうかを判断するのは、相手がエンジェル投資家でもVCでも変わらないポイントです。

岡島:お金以外の話をすると、その人の本性が見えてきます。「お金を出すから事業の内容を考えてよ」というスタンスの人は、そもそも事業のパートナーとして向いていない。事業開発の話を皮切りに、趣味なども含めて広く相談して、自分を裏切らない人だと思えたタイミングで、ようやくエンジェル投資家の候補に入ると考えましょう。

市村:心の底から尊敬できて、苦しい状況でもこの人となら乗り越えていける。そう思える相手でないと、あまりうまくいきません。契約する前にしっかり期間を設けて、こちらが相手を値踏みするようなスタンスで臨むと良いでしょう。

起業家と投資家の契約は、婚姻関係に例えられます。恋人として一時的に付き合うのではなく、良いことも悪いことある長い結婚生活を共に歩むパートナーになる。株式の分配は血肉を分かつようなものですし、婚姻関係は結ぶのも解消するのも大変です。1度や2度会っただけで結婚相手を決めないのと同じように、付き合う投資家との相性も、慎重に時間をかけて見極めていきましょう。

(取材・聞き手:淺野義弘 / シンツウシン)

回答者プロフィール
株式会社プロメテウス代表取締役 市村慶信

国内電機メーカーの半導体営業・企画部門にて営業業務を通じて電子機器製造のサプライチェーンの理解を深める。その後2007年から電子部品商社の経営企画部門に移り会社経営に従事。経営の立て直しを行いながらベンチャー企業への経営支援や提案を実施。2014年に株式会社プロメテウスを創業。これまでの経験を活かし国内外で複数のベンチャー、広告代理店など、非メーカーのプロジェクトの立ち上げ・経営サポートを行う。

ファストセンシング株式会社 岡島康憲
大学院修了後、動画配信サービスやIoTシステムの企画開発に従事。2011年にハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事(株)を創業。企業向けにハードウェアプロトタイピングや商品企画の支援等も行う。2017年には、センサーにより収集した情報の可視化プラットフォームを提供するファストセンシング(株)を創業。並行して、様々なスタートアップ支援プログラムの立上げ・運営を行う。

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