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「短期的な学びと収穫だけではない三ヶ月間を提供したい」HAX Tokyoディレクターインタビュー

前回に続き、HAX Tokyo関係者へのインタビュー企画です。今回はBatch1から採択企業をディレクターとして支える市村慶信さんと岡島康憲さんにインタビューしました。
ハードウェア・スタートアップの酸いも甘いも知る2人にとって、アクセラレーション・プログラムどうあるべきかを伺っています。

市村慶信(株式会社プロメテウス代表取締役 / 写真左)
法政大学社会学部卒業後、国内電機メーカーの半導体営業・企画部門にて営業として業務を通じて電子機器製造のサプライチェーンの理解を深めた。その後2007年から電子部品商社の経営企画部門に移り会社経営に従事。経営の立て直しを行いながらベンチャー企業への経営支援や提案を実施。2014年に株式会社プロメテウスを創業。これまでの経験を活かし国内外で複数のベンチャー、広告代理店など、非メーカーのプロジェクトの立ち上げ・経営サポートを行っている。

岡島康憲(ファストセンシング株式会社 / 写真右
自身が共同創業したハードウェアベンチャーの経営にも関わりつつ、国内ハードウェアスタートアップを中心に製品開発やビズデブを中心としたサポートをしている。
電気通信大学大学院修了後、ビッグローブ株式会社にて動画配信サービスやIoTシステムの企画開発を担当。2011年、岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発やIoTシステムの企画開発に関する支援を行う。2014年、DMM.make AKIBA立ち上げに参加。エヴァンジェリストとして情報発信や企画を行う。2017年、IoTセンサー向けプラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。2019年より個人事務所を立ち上げ。
日本国内ハードウェア起業シーンを盛り上げたいという意志のもと、ニュートラルな立場でさまざまな活動をおこなっている。

−−まず、HAX Tokyoにおけるお二人の役割から教えてください。

市村:プログラム期間外は全体の設計や進め方の監修を、期間中は採択したスタートアップに経営やチームビルディング、資金調達、開発に関する座学講習の講師を二人とも担当しています。また、並行して各社と個別に定期的な面談を実施し、個々の状況に応じたメンタリングを行っています。現時点ではオンラインでのやり取りが中心です。

岡島:創業間もないスタートアップであれば、どうやって優秀なメンバーを集めるかというところから話しますし、ある程度チームができているスタートアップであれば、経営や事業開発など戦術面のメンタリングをしています。特に前者の場合は優秀な人が集まるようなコミュニケーション能力を創業者が身につけ、何を発信していくかを整えることが重要です。創業者のバックグラウンドやパーソナリティによってアプローチは異なりますので、まずは各社の技術とともに創業者を私たちが深く理解することを心がけています。

−−HAX Tokyoのアクセラレーション・プログラムを運営する上で、大切にしていることはありますか?

市村:短期間で終わるアクセラレーション・プログラムは目に見える撮れ高や実績、手触り感を重視する傾向にあります。ただ、その中には採択したスタートアップにとって重要ではないこともありますよね。シード期であるからこそ、プログラム終了後も資産として残るような情報や気付きを提供するべきではないかと思います。

先日終了したBatch3でもプログラム冒頭で「皆さんが3年後、5年後にどうありたいか議論しましょう」と伝えたのですが、「期間中だけ役立つ・付き合う」というスタンスではなく、その後の成長につながるサポートを心がけています。

岡島:そういったサポートを実現するためには、スタートアップ各社の技術をしっかり理解することが重要です。ビジネス面しか頭に入っていないと安易な売り方の話に終始しがちですが、技術を理解していれば誰も気がついていない市場や、より適切な売り方を議論できます。スタートアップの技術が誰にとって、どういう価値になるかを突き詰めることが、私たちの役割だと思います。

――お二人はHAX Tokyo前からスタートアップの支援に関わる仕事を長く経験されていますが、スタートアップにとって参加する意味のあるアクセラレーション・プログラムとは、どういうものだと思いますか?

岡島:運営側がスタートアップの考えていることや現状をしっかり引き出すこと、そういう努力を惜しまない人たちが集まっていることですね。スタートアップの技術やビジネスモデルを表層的に捉えて、決まった形に当てはめようとするプログラムはスタートアップにとって有益とは言えません。

「こういう条件を満たしていたら、こういう支援をしますよ」という型にはまった支援ではなく、「自分たちはこう思うが、あなたたちは何をしたいか知りたい」というスタンスで、スタートアップと向き合い行動してくれるプログラムは参加する意味があります。

市村:HAX Tokyoでも選考段階では自分たちのスタンスとあわせて、スタートアップにもどの程度時間を割いてほしいか伝えるようにしています。手前味噌になりますが、運営に携わる住友商事やSCSK、SOSVのメンバーもいい意味で官僚主義的ではなく、スタートアップの目線に合わせて行動している印象があります。

岡島:確かに運営に関わるプレイヤーそれぞれが、自分たちがスタートアップのためにできることは何なのかという視点に立って行動していると思います。HAX TokyoはHAXへ進むための予備校のような位置づけですが、その役割だけを意識するのではなく、中長期的に成長するために必要なことを学ぶ場にしていきたいと思います。HAXはニュージャージーに新しい拠点を建築中で、海外進出を目指すスタートアップには最適なプログラムになるでしょう。

−−最後にHAX Tokyoへの応募を検討しているスタートアップに向けて、一言お願いします。

市村:岡島さんが言ったようにHAX Tokyoは海外を目指すスタートアップにとっては、さまざまなチャンスがあるプログラムです。過去の採択企業の中にも住友商事の商流を通じて、ヨーロッパの企業とやりとりしたケースもありますし、シード期のスタートアップであっても事業を前に進めるための機会はたくさんあります。

岡島:参加を検討するスタートアップの方はコア技術やソリューションに目を向けがちですが、どのような顧客のどのような課題を解決するのか?という問いにも同じぐらい時間を割いてほしいと思います。あなたの技術が誰の何に貢献するのかというシナリオを元に議論すると、素晴らしいビジネスアイデアに発展していくと思います。

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HAX Tokyoとは

HAX TokyoはSOSV、SCSK、住友商事の共同運営による、ハードウェアに特化したアクセラレータープログラムです。

採用されたチームには、米国シリコンバレー発、世界的に実績のあるハードウェアアクセラレーター「HAX」にて蓄積された知識やノウハウが提供されます。また、ハードウェアに特化したコミュニティが提供され、ビジネスおよび製品開発の分野で世界をリードする専門家や、住友商事をはじめとする日本のパートナー企業とのコラボレーションの機会が得られます。

さらに、3ヶ月後のDemo Day後には、HAX Shenzhen(中国)、HAX San Francisco(米国)に参加し、ベンチャーキャピタル等から資金を得て事業を拡大できる可能性があります。

詳しくはウェブサイトをご覧ください。

HAX Tokyo オフィシャルウェブサイト https://www.hax.tokyo/
Twitter: https://twitter.com/HaxTokyo
Facebook: https://fb.me/haxtokyo

取材・文:越智岳人