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エンジニア夫婦がスマートベビーベッド「Cradlewise」を開発した理由

スタートアップが生まれる背景やチーム構成は千差万別。一人で立ち上げるケースもあれば、大学時代の仲間や研究室のメンバー、同じ会社の同僚とスピンアウトするケースなど、さまざまな形があります。

今回紹介する「Cradlewise」は2016年に夫婦で創業したスタートアップです。2019年にHAXに採択され、最初のプロダクトとなる乳幼児向けスマートベビーベッドの製品化に成功。2020年にはTIMEが選ぶ「The Best Inovations of 2020」でも紹介されるなど、発売前からメディアの注目を集めます。2021年3月から遂にアメリカでプレオーダーを開始(販売は同年10月を予定)するなど、これからの活躍が期待されているベビーテック企業です。

同社が開発したスマートベビーベッドは赤ちゃんをモニタリングする暗視カメラとセンサー、ゆりかごのように揺れる動力機構を備えていて、0歳から2歳児(生後24ヶ月)までの乳幼児を対象としています。

親が抱いて寝かしつけるような動きを模した揺れ方で乳幼児の眠りをサポートし、眠ったタイミングで自動的に動作をストップ。睡眠中の様子はカメラを通じてスマートフォンのアプリでモニタリングも可能です。

共同創業者でCEOのRadhika PatilとCTOのBharath Patilは二人ともエンジニアのバックグラウンドがあり、二人の子供を育てる夫婦でもあります。CEOのRadhikaが「職業人としての自分たちと、子供の親としての自分たちが、ある日突然こんな風にして結びつくなんて全く想像していなかった」と振り返るCradlewiseの創業ストーリーを紐解いてみましょう。

きっかけは子育ての睡眠不足

Patil夫妻はインド科学大学バンガロール校の同級生で、大学卒業後に渡米。二人とも電気系エンジニアとして妻のRadhikaはクアルコムで、夫のBharathはテキサス・インスツルメンツで働いていました。

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Cradlewiseの共同創業者の二人
CEOのRadhika Patil(左)とCTOのBharath Patil(右)

やがて二人は子供を授かり、長女を出産。働きながら子育てするようになった夫婦に転機が訪れます。

「娘の睡眠パターンはとても不安定で、私たちは寝かしつけるために多くの時間を費やし、いつの間にか自分たちも寝不足に陥っていたのです」
mediumより引用・抄訳)

娘のためにベビーベッドを探していたPatil夫妻は、市販のベビーベッドの大半はフラットな平面で、寝付けない子供には向いていない事に気づきます。ゆりかごのように揺らそうとすると、子供も左右に転がってしまい、それを防止するために体勢を固定する器具を取り付けたものの、快適さに欠けるのか逆にぐずってしまったそうです。

さまざまなベッドの形を検証したところ、優しく乳児を包み、抱かれているような居心地の良さがあるハンモックがベストであることを突き止めます。ただ、市販品に最適なものは無かったようで、Patil夫妻は親から譲り受けた古いサリー(インドの女性が着用する民族衣装)と市販の金属のパイプとバネ、接続用のパーツを組み合わせてゆりかご型ベッドをDIYで作りました。

その後、ベッドが自動的に揺れるようモーターを取り付けたり、音楽プレーヤーを取り付けたりと機能が追加され、生後五ヶ月になりベッドの中で体を動かすようになると、離れた場所からモニタリングできるようにしました。

自分たちのニーズから自家製のベッドを作り、プロダクト開発につながったのは、とても自然なことでした。私たちは昔ながらのハンモックの快適さと、現代のテクノロジーをかけ合わせたゆりかごを作ることに全力を注いでいます。私たちが目指しているのは、赤ちゃんが揺りかごの中で過ごす時間を長く楽しめるようにすることで、親御さんにも必要な睡眠をとってもらうことです。
(mediumより引用・抄訳)

自分たちの娘が眠れないという身近なニーズを解決すべく、エンジニアとしてのスキルをフルに駆使したベビーベッドを開発したPatil夫妻。その課題は二人だけのものではなく、世界中のパパ・ママの課題でもあることに気づくのに時間は要しませんでした。

今まで無かったベビーベッドに可能性を見出した夫妻はスタートアップとして起業することを決意。2016年にCradlewiseを創業し、HAXのサポートを経て製品化にこぎつけました。

現在はベビーベッドの開発・販売と並行して、故郷のインドで増え続ける新型コロナウイルス患者向けに人工呼吸器のスプリッターを開発しているそうです。また3月16日からオンラインで開催されるSXSWでも、ピッチコンテストの最終候補に残っていますので、興味を持たれた方はぜひチェックしてみて下さい。

誰でもスタートアップできるエコシステムを目指して

完成したベッドをユーザーに届けるPatil夫妻

今回紹介したCradlewiseのように、自分たちの抱える課題をきっかけに起業を志すケースは少なくありません。また夫婦や姉妹・兄弟など、お互いの性格やスキルをよく理解している間柄でチームを作るというのも、スタートダッシュにおいては有利に働く場面もあるでしょう。

ちなみに本日3月8日は国際女性デー(International Women's Day)です。CradlewiseのRadhika のようにハードウェアとテクノロジーを通じて、課題を解決したい女性起業家をHAX Tokyoはサポートします。優れたソリューションの「種」をお持ちの方は是非ご連絡下さい。

文:越智岳人

【無料オンラインイベント(英語)】

HAX Tokyoを共同運営するSOSVが3/8(日本時間:3/9 10:00-11:00)に女性起業家にフォーカスしたオンラインイベントを実施します。

チケットは無料で登壇者によるパネルディスカッションに加え、オンラインでのネットワーキングタイムもあります。詳細・お申し込みは下記URLまで!

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