【怪の蔵】三の蔵~古本市に現れたアルバム
ありふれた日常の怪を収めた蔵の扉を
ひとつひとつ
開け放して覗いてみようではないか
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三の蔵~古本市に現れたアルバム
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ある作家の記事が載る本を求めて
古本市を巡っていた時期がある
そんな中
都内の高層ビルで恒例の古本市が開催されることを知り、期待を大きく抱き、その日を指折り数えて待っていた或る日の夜に
夢を見た
夢の中で自分の求める作家の初期の記事の載った雑誌を見つけ、狂喜している我が姿があった
そして夢の中の我が視線は
その雑誌のすぐそばにあった
軍隊か何かの古い写真が貼ってある
アルバムのような物に移って行った
…雑誌の山の中に個人的なアルバム……
目覚めた後
つらつらと考えてみても
やはり場違いな印象であった
そして約一週間後
会場時間と共に嬉々として古本市に駆け込んだ
会場の端の方から探しにかかった自分は、奥のコーナーで求めていた作家の記事が載った雑誌を見つけた
夢と同じ初期の記事!
…しかしさほど内容に厚みはなく
いささか意気消沈しながら
ふと視界の左側に目をやると
果たしてそこには…
夢と同じく…
古びたアルバムが置いてあった…
内心かなり驚きながら
恐る恐る手に取ってみると
『日本空軍』と筆書きでタイトルが表記されており、夢の中で軍隊らしき写真と思ったものの正体が分かった事に更に驚いた
その中の数多くの色褪せた古いセピアの写真が
少年のような若き青年達の姿を
しっかりと現代に遺していた
その後、
あの手作りの色褪せたアルバムは
誰の手に渡ったのであろうか…と
時の間に間にふと思い出すのであった
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最後まで読んで戴きまして感謝申し上げます。心の中のひとつひとつの宝箱、その詰め合わせのようなページにしたいと思っておりますです。