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【呑みながら書きました】眠れぬ夜の奇妙な話

はい!ということで、2度目の参加です!

呑みながら書きました

今回はノンアルと緑茶と栄養ドリンクを呑みながら書きました!

アルコール入ってないので、どシラフですが、0時過ぎてから書いてるので酔って書いてるようなモンですよ。

人生で初めて小説?創作文?物語?にトライしてみました。

いろんなモノからちょこっとずつかいつまんで、ビュッフェ式にオマージュしてますよ。

鬼滅とかクリオネさんの茶の話とか磯貝さんの「白目様」とかね…( ̄▽ ̄)♪


けっこう長くなっちったので、マリナさんの呑みながら読みましたが発動やもしれません…!笑

では、最後までお付き合いいただけましたら幸いです!

収穫祭

「行ってきます。」
履き慣れたウォーキングシューズに足を入れ、私は玄関の扉を開けた。
「行ってきます。」とは言ったものの、私は一人暮らしをしている身なので当然それに応えてくれる声はないのだが。

扉を開けるとすぐに、少しだけ湿った生ぬるい風がほおを撫でた。
天気予報では夜の降水確率は30%だったから、それなら大丈夫かな?と、夜の散歩に出ることにしたのだ。

まぁいいや、今日はショートコースにして、もしも途中で降られたら走って帰ろう。
気を取り直していつものコースを歩き出す。

家を出てすぐ田園地帯に入る。
時刻は21時、今は5月中旬。
黒い田園地帯からは、早くもカエルの鳴き声がゲッゲッゲッと折り重なり、心地よい音量で私の鼓膜を打つ。

ウォーキングコースはのどかで、コース内の道路はいずれもそれほど太くないことと、この時間のためか車の流れもまばらである。
カエルの合奏を背にする頃、右前方に神社が見えてきた。
敷地内には立派な杉の木がうっそうと茂っている。
白い石の鳥居を横目に見ながら、私は足早にそこを通り過ぎた。
どうも夜の神社って、不気味なんだよなぁ…なんてことを考えながら、無心になって足を運ぶ。

私は幽霊とか悪魔とか妖怪とか、そう言った非科学的な存在を信じているわけではない。
実際これまでにオカルト体験をしたことは一度もないので、きっと霊感のようなものを持ち合わせていないのだろうと自分で思っている。
でもやはり夜の暗がりからは何か得体の知れない恐怖を少しだけ感じてしまう。
それなら1日の終わりに歩くのをやめれば良いだけなのだが、この時間しかウォーキングに充てることができないのだから仕方がない。

神社を超えると線路にさしかかる。
12分間隔で走っている電車は通常わずか2両編成。
通勤・帰宅ラッシュ時のみ4両編成となる小規模な鉄道である。
足早に踏切を渡り、この辺りで唯一のコンビニの前を通り過ぎる。
駐車場には数台車が停まっている。
中年男性が外の灰皿でタバコを吸っており、煙が風に乗ってかすかに私の鼻まで届いた。

空を見ると、うっすらと雲が出ているが幸い雨が降ってきそうな気配はない。
これならロングコースに変更しても大丈夫かな…。
ショートコースはこのコンビニを超えてすぐの信号で引き返すという設定なのだが、天気がもちそうなので急遽ロングコースへと変更することにした。
コンビニを過ぎてしばらく歩くと緩やかな上り坂にさしかかる。
頂に近づくにつれ広大な茶畑が視界に広がった。
時期的には一番茶の収穫もそろそろ終わりを迎える頃だろうか…?
つい先日、行きつけのお茶屋さんで買った今年の新茶も美味しかったなぁ…と、その瑞々しい色と香り、味を脳内に再現しながら、茶畑の間の細い未舗装の道へと入った。

ジャリ、ジャリと、足元の小石が歩みに合わせてリズミカルに音を立てた。
たわいもないことをあれこれ考えながら歩いたので、視線がどこかうつろになっていたのだろう。
ジャリ道を進んで5分ほど経過した頃、私は前方のそれに気づいた。

茶畑横の細いジャリ道には等間隔に街灯が設置されていたが、その間隔は広く、70〜80mはあるだろうか?
したがって街灯と街灯の間は夜の闇が覆いかぶさっている。
だが、夜道を歩いてそろそろ25分にもなるため、目が慣れてきており覆いかぶさったその闇の中に、さらにもう一段階濃い闇が5〜6ほど転々と存在しているのが見えたのだ。


私はギョッとした。
何…?あれ…?
目の錯覚?

足を止めて点在する濃い闇を凝視する。
それは細長い。そして高さは1mほどだろうか?
さらに凝視を続けると、それはヒトの形をしており、丸くなって手を取り合って回っているのがわかった。
こんな時間にこんな場所で、何をしているのだろう?
暗くてはっきりとは見えないが、茶農家の人が立ち話でもしているのか?
それにしては静かで、話し声が全くしない。
それ以前に、農作業をこんな時間までするだろうか?
そもそもあの身長だと子ども…?
ものすごい速度でいろいろな考えが矢継ぎ早に頭を巡る。
その間にも目の前の黒いヒトガタ達は無言でくるくると回っているのだ。

え…まさか……幽霊…?
私の心の表面を、恐怖心が光の速度でほとばしって覆っていった。
心拍数が急上昇していくのが自分でもわかった。
どくん、どくん、どくん、どくん…。

恐怖に足がすくみ、どのくらいそこに立ち止まっていたかはわからない。
けれど、本能的に「そのヒトガタの輪に近づいてはいけない」と感じ、私は引き返そうとしてそのままヒトガタを睨みつけつつ一歩足を後ろに引いた。
その時、ジャリリ!と足元で小石が大きめの音を立てた。

すると、まるでその音に反応したかのように、目の前の5〜6体のヒトガタ達は、一斉にピタリと一瞬だけ動きを止めた。
次の瞬間、それぞれがバシュッ!と音を立てて空気中に無数の塵となって舞い上がり、そのまま横の茶畑にずぞぞっと吸い込まれていったのだ。
え…?!
雲散霧消とでも言おうか。
先ほどまでのヒトガタが一瞬にして吹き飛んで消えたのだ。
目の前で起きたことの説明が何一つとしてつかないまま、私は足を一歩引いた体制のまま数秒間その場に立ち尽くした。
というか動くことができなかったのだ。
だが、さらに数秒後には弾かれたようにターンして、もと来たルートを一目散に走った。
新記録ではなかろうか?というほどの短時間で、私は家までたどり着いた。

言うまでもなく、その夜は恐怖が心を支配してまんじりともせず朝を迎えた。

今日は土曜日。
仕事は休みだったが、一睡もしなかった私は6時には布団から出て活動を開始した。

睡眠不足で頭がぼーっとして、軽い頭痛がする。
濃いめの緑茶を淹れ、ソファに浅く腰掛けてゆっくりとそれを飲んだ。
一口、二口とすするうちに頭が徐々に覚醒してきた。

「昨夜私が見たものはいったい何だったのだろう?」

夢ではない。洗濯機には昨晩着て歩き、汗が染み込んだジャージと七分袖のTシャツが放り込まれている。

あんなに怖い思いをしたのは人生で初めてかもしれない。
だが、睡眠不足で多少ハイになっていたのか、それともあまりに突飛な経験をしたので脳が麻痺していたのか、「もう一度あの場所に行ってみたい。」という好奇心が湧き上がったのには自分でも驚いてしまった。

何かの見まちがいだったのかもれしれないし、日の光のもとで見たら事態がすべてカチッと納得のいく形に当てはまり、解決するかもしれない。

時計を見ると7時を回っていた。
私は手早く身支度をして、昨夜歩いたルートを再びたどった。

茶畑に向かい緩やかな坂を登っていく。
現場に近づくほど、心がざわざわと波立ってきた。

大丈夫、幽霊は昼間は出ないだろう。
そんな根拠のないことを自分に言い聞かせながら、さらに歩を進めた。

茶畑ではすでに農家の人たちが新茶の摘み取り作業をしていた。
人がいるのを見て、とたんに心が落ち着いた。
と同時に冷静さが舞い降りてきた。

「おはようございます!」
私は大きな声で一番近くにいた農家のおばさんに挨拶をした。

「おはようございますー!」
おばさんはにこやかに返してくれた。

いつもなら、初対面の人に対してあまり自分から話しかけることはしない私だが、自然と言葉が口をついた。

「あの…、ちょっとお尋ねしたいんですが、昨夜21時半頃ですかね、まだこちらで作業されてました?」

おばさんは手を止め改めて私をじっと見てきた。
「昨夜ですか?いえ、さすがにその時間にはもう仕事はしてませんねぇ。いつも陽が沈む前には終わりにしてるんですよ。」
「あぁ、そうなんですね…。」
あれが人間ではなかったことが確定してしまった。
するとやはり幽霊?
私が考え込んだのでしばし沈黙が流れた。
「何かありました?」
おばさんが不思議そうに私の顔を覗き込んできた。
「あー、私時々このあたりを夜ウォーキングしてるんですけどね、なんか、昨夜なんですけど通ったら誰か複数の人がいたみたいに見えたものですからね…。あ、でも見間違いかもしれないんですけどね。」
つい早口でまくし立てた。
変なこと言うやつだと思われただろうか?

しかし、おばさんはむしろそれを聞いて顔を綻ばせた。
「ちょっと小柄な人たちじゃなかったですか?」
「あぁ、そうです!多分1メートルくらいですかね?え…、やはり作業されてたんですか?」

おばさんはもう満面の笑みを見せながら続けた。
「それは茶柱さまですね。」

「茶柱さま…??え、何ですかいったい。妖怪…とかですか?」
耳慣れない言葉に私は戸惑った。


「私らお茶を作ってる人間はけっこう見る人が多いんですけどね、まぁ、言ってみたらお茶の神様というか、妖精さんと言うかねぇ。だいたいいつも一番茶の収穫の時期にお出ましになるんですよ。私なんかも若い頃はよくお見かけしたんですけどねぇ。
小さくて、体がお茶の葉でできていて、一番茶の茶葉の収穫が済むと現れなくなるんですよ。
私が思うに、あれじゃないですかねぇ。今年も良いお茶ができたって喜んでいるのか、はたまた出荷されることで仲間たちと別れ別れになることが寂しくて、お別れ会でもしているのか…。想像でしかないけどねぇ。」

「はぁ…。え?じゃあ幽霊とか妖怪じゃないんですね?」

「いやいや、そんな悪いもんと違いますよぉ!むしろ私らにとっては茶柱さまは縁起のいい守神さまみたいなもんですよぉ。それに、みんながみんな見えるわけじゃないですからねぇ、むしろお姿を拝見できたならその人はラッキーですよ。お茶に茶柱が立つと縁起がいいって言うでしょお?あんな感じですよ。あなたはきっと心の清い人なんじゃないですか?だからきっと茶柱さまが見えたんですよ。良かったですねぇ。」
おばさんはにこにこしながら嬉しそうに教えてくれた。

茶柱さま…。茶産地に住んでいるのに、そんな都市伝説みたいな話、これまで知らなかったなぁと狐につままれまような気分で、とぼとぼと帰路についた。

誰も見ていない夜、茶畑から抜け出して仲間同士で和気藹々と夜の宴を楽しんでいる茶柱さま。

思い起こせば昨夜の光景は、5〜6人で輪になって踊っていたのかもしれない。
私が音を立てたことで、驚いて茶畑に帰ってしまったのだろう。
なんだか申し訳ないことをしたような気持ちになった。

家に帰ると、私は真っ先にもう一度お茶を淹れた。
少しぬるめのお湯で、香りと風味を最大限に引き出すように丁寧に淹れた。
茶は、最後の一滴こそ旨味が最も濃縮された至高の一滴。
その最も大切な一雫を、創った仏さまに魂を入れるような心持ちでぽちゃんと湯呑みに落とした時、トプンと一本の短い茎が滑り落ち、そのまま垂直に浮いた。
茶柱の立った湯呑みを両手でそっと持ち上げて覗き込む。
恐怖などまさに雲散霧消した面持ちの私の顔が映り込んでいた。
いつのまにか私は笑っていた。
茶柱さま、美味しいお茶を今日もありがとう。
いただきます。

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駄文かつ長文にここまでお付き合いくださり、誠にありがとうございました!!



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