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" MaaS "は満員電車に対する特効薬

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)に関する本を読んだ。

*記事前半は書籍の要約、後半は持論です。MaaSの基礎知識は十分知ってるよ!という方は後半からご覧ください

そもそも"MaaS"とは

皆さんはそもそも"MaaS"という言葉をご存知だろうか。"MaaS"とは Mobility as a Service の略であり、直訳すると「サービスとしての移動」だ。
簡単に言えば、マイカーを所有して移動する時代から、公共交通手段やカーシェア(車を複数人でシェアし、個人が使いたい時間に予約をして使う)、ライドシェア(同じ目的地やルートを通る複数人が同じ車に乗り合う)、配車サービス(個人がハイヤーを呼び出し目的地まで最短で移動する)を最も効率的に利用して移動する時代になる、ということである。
"Maas"の発達した社会において個人はマイカーを持たない。その代わりに、自動運転で運行される車を呼び出したり、マッチングサービスによって同じ目的地に向かう人々が一つの車に乗り合ったりして、マイカーと同等あるいはそれ以上の利便性を確保する。
しかし、車の呼び出しや移動者のマッチングはどのように行うのか。この鍵を握るのが、MaaSオペレーターである。

鍵となるMaaSオペレーター

MaaSオペレーターとは、日本で普及しているYAHOO!乗換案内やNAVITIMEのような経路検索アプリに、予約・決済機能を付加したサービス(あるいはその事業者)のことである。現在普及している経路検索アプリは出発地から目的地までどの交通機関を使って行けばいいのか、所要時間、料金を比較して教えてくれる。
Maasの発達した社会においては、検索した経路の交通料金をアプリ上で一括購入することが出来、乗り換えの度に切符を買ったり、Suicaにチャージする必要がない。さらには、月ごとに一定料金を払えば全ての公共交通機関を使い放題にすることもでき、移動する際に料金を払うというアクションは存在しない。
すでにフィンランドでは、49€(日本円で約6000円)の定額プランに加入すれば公共交通機関(電車、バス)と自転車シェアリングを使い放題というサービスが実用化されている。このプラン加入前後ではマイカー利用率が約半分に減少したと報告されており、マイカーの所有率低下と自動車メーカーに対する打撃は不可避である。

MaaSが都市交通の全体最適を図る

日本の大都市、特に首都・東京では乗車率150%を超える満員電車が慢性化し、朝の通勤地獄は日本人ビジネスマンの能率や幸福度を著しく下げているとも言われている。
東京に人口が集中しすぎていることが大きな原因であることは間違いないが、私はMaaSの実現により問題が幾分緩和されるのではないかと期待している。
MaaSオペレーターの提供するアプリは交通費や所要時間を勘案した最適ルートを提示してくれるが、オペレータが勘案する要素に「都市全体の最適な人の流れ」というものを追加すればどうなるだろうか。MaaSオペレーターは、利用者の交通費と所要時間に加えて、各鉄道路線の混雑状況をリアルタイムで把握し、人々が特定の路線に集中しないよう各利用者に交通ルートを提示する。
鉄道に集中しがちであった通勤者を、MaaSオペレーターがバスやライドシェア等の代替交通機関に誘導することで鉄道の混雑率を緩和する。こういったことも可能である。

本当に可能か?

MaaSオペレーターの働きにより都市交通の全体最適を図る。この構想には確かに多くの障壁があるだろう。
例えば多くの人はたとえ混雑していても最安の経路で会社まで向かいたいかもしれない。
そこで私は、東京都が率先してこの問題に予算を投入するべきだと考える。
これだけの路線数が張り巡らされている東京近郊圏においては、大抵の移動において代替手段が存在する。混雑しているが割安なルートAより、空いているが割高なルートBを使用する場合の差額をMaaSオペレーターが肩代わりし、その原資は東京都の補助金とするのだ。
なんでもかんでも税金に頼るのは頭の悪そうな主張かもしれないが、日本の満員電車が明らかに人々の幸福度を下げ、さらに仕事の効率を落としているとすれば、満員電車問題を解決することが国家のGDPにも影響を及ぼすことは間違いない。国家のGDPに影響を及ぼすのであれば、経済政策として税金を投入するに値する問題だろう。
小池百合子東京都知事は都知事選に立候補した際、通勤電車2階建て化による満員電車ゼロの実現を公約に掲げた。さすがにこの構想は現実的でないにせよ、満員電車ゼロという目的自体は確実にニーズがあるからこそ、このような公約が登場し、公約の主は現に当選を果たしている。(無論、この公約は実現可能性が低いため当選に果たした役割はかなり小さいだろうが、小池氏の満員電車に対する問題意識それ自体が的を射ていたということは言えるだろう。)
通勤電車2階建て構想に比べれば、MaaSによる都市交通の全体最適化ははるかにハードルが低く、実現可能性が高い。
MaaSの実現は、社会福祉にも経済にも大きなインパクトを与える鍵になるに違いない。


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