2023年1月の選歌
帰省せし子ら帰りたる家の中に時計の音がゆっくり響く
森田郁代
人気(ひとけ)なき実家をひとり訪れてそれぞれの部屋に父母の声聞く
鵜川登旨
まっすぐに背を伸ばされし海老天よ頬ばる我の背は丸まりて
藤代敏江
我を見て視線定まる母の手を握りて呑み込む熱き涙を
六甲もこ
かぎ針で一目一目と編みすすむ穏やかであれ新しき年も
関本なつ
初春に洗濯物は陽をうけて隣の媼(おうな)の生を知らせる
小野貴子
草の実はたわわに実りて鳥たちの食べ放題のブッフェとなりぬ
藤代敏江
富士山の裾にパンダの座る絵をほっこり眺める上野の銭湯
大室やよい
携帯に爺婆見つけし幼子の指がいきなり画面を覆う
筒井みさ子
籠もる我を見舞いし友のお雑煮に心の芯まで温められる
岡まなみ
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