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貴女をエスコートに選んだ理由

「私のお義姉さんになってくれてありがとう。
私達は家族です」

花嫁がお色直しのエスコートに選んだのは、
お兄様の奥様でした。
お色直しが無事に結んだ後に、お義姉様のお席まで行き、花嫁がなぜ貴女を選んだのかを伝えに行きました。
まだ泣いてらっしゃって、ハンカチで声をおさえて 涙を流しながら
「本当にありがとうございます」と何度も頷いてらっしゃいました。“本当に良かった”と素直に思いました。その時の親御様の会釈と笑顔が忘れられません。


打ち合わせで、花嫁のきょうだいの話をいつも通り伺っていた時の話。
花嫁には仲良しのお兄様がいて、大人になった今でも可愛がってもらっていました。

これは私の感覚なのですが、きょうだい愛がとっても強い家族は、それぞれの子供たちと親子の距離がとっても近い傾向があって、家族間の風通しが良い家族が多い。

花嫁の家族も同じで、家族の色んな事を知っていて、家族のお話をする時はいつも温度が高かった。ただ、義理のお姉様のお話をする時だけ顔が一瞬曇った感じがしました。

”新しいお姉様が出来た時嬉しかったのではないですか?”と、少し深入りして伺ってみたら
「そうですね...私はそう思ってます。」

全然さっきと空気違う!
何、なんだ?そもそも”私は”って何!?
少し間をおいて「私は、、、?」と、呟くように聞き返すと、花嫁は新郎様の方をチラッとみて、
“もぅ彼も知ってる事なので話しますと、、、”とその先を語りはじめました。

なんでも、数年前お義姉様とご結婚なさってから、お兄様とお母様の距離が少し離れてしまったようで、昔の家族のような雰囲気にはなっていない。わだかまりがある、と。
“娘としてお母さんの気持ちは理解出来るし一番の味方でいたい。でもお兄ちゃんも大切で、何よりも私はお義姉さんが好きです。そんな状況できっとお義姉さん嫌な気持ちしてると思うのに、私にも良くしてくれて優しいし、お兄ちゃんの奥さんでよかったなぁ、って思ってるんです。でもなんか複雑で、、私には何もしてあげられなくて、、”

これは、、、
色んな想いが混ざりあっている、、、
「お義姉様は、結婚式参列してくださるのですか?」
”それがまだ、わからないんです”


心がトクンとなりました。

何度も打ち合わせを重ねる中で、ずっとそれが頭の片隅にありました。
数ヶ月経って、席次表を提出してくださった時に、真っ先に目が行ったお席。そこにお義姉様の名前を見つけました。
「お義姉様、出席してくださるんですね!嬉しいですね!」
”はい! お兄ちゃんと色々相談したみたいです”

やっぱり、この花嫁の溢れるような優しい気持ちは、絶対にお義姉様に伝えた方がいい。と思いました。

結婚式の中座のエスコート役をそれまで保留にしていたので、「実はご提案があります」と勇気を出して花嫁にプレゼン。

自分も嫁ぐことで、お義姉様の気持ちも十分理解出来るでしょうし、なによりも家族を大切にしている○○家にとって、お義姉様の存在はお兄様を幸せにする事に必要不可欠であり、姑と嫁にわだかまりがあろうと、家族に変わりはない。お兄ちゃんを大切にするお義姉ちゃんがいる事はすごく嬉しい。
その花嫁の気持ちを聞くだけで、お義姉様に少しでも救われることがあるのではないか?

そんな事を伝えました。
そして、それはお母様の前で、家族の前で伝える事に意味がある、と伝えました。

「中座のエスコート役はお義姉様に致しませんか?」
“えー、驚かないかな?嫌がらないかな?.....でもわかった。私ちゃんと伝えようと思う。えーなんて伝えよう、悩むー。考えます!”

また心がトクンってなりました。


結婚式当日花嫁から伝えた言葉は
「私のお義姉さんになってくれてありがとう。
私達は家族です」
もう、本当に。それは本当にあたたかい声でした。

その中座のシーンでは
涙するお義姉様に、ゲストも何かじわ〜っと感じるものがあったのでしょう。会場は優しく静かになっていきました。
花嫁の家族だけが、どよめきと優しさとなんともいえない空気に包まれた時間でした。

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中座後の歓談の家族卓を見てたのですが、お母様とお義姉様が笑顔でお話ししてる光景は今でも目に焼き付いています。
もぅこれは花嫁の魔法なのか?魔法よ、とけるな!って気づいたら願掛けみたいに両手をぎゅっと合わせてた自分に、ちょっと恥ずかしくなってしまいました。

家族のカタチはそれぞれ。
新しい家族が誕生する時に、変化するカタチもあるのだろぅと感じた瞬間。


花嫁と大切な家族のお話でした。

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