ねこ様

人に様がつくなら ねこに様がついて 当然だ。
なぜなら 私は ねこなしでは 人生を 生きていけない。
生きていけるが ねこのいない人生は それほど魅力を感じない。
ハワイに来て 私と最初のねこが出会ったのは 離婚が成立して2ヶ月後のこと。
以前働いていた職場の床下に 子ねこが3匹うずくまっているといると 
そこに勤める人から連絡が来た。
すぐ 引き取りに来ないと 収容先に連絡をして引き取りに来てもらうという。
とりあえず 見に行くことにした。
2匹はすでに引取先が決まっていた。
薄いグレーの縞ねこで、ブルーの目をしていた。
とても大人しく 見るからに 綺麗なねこたちだった。
箱に残っていた もう1匹は ギズモのような目で 毛は濃いグレー。
母親が 子ねこを残して どこかに行ってしまったらしく 毛繕いしていないせいで 汚れていた。
が 他の2匹と違う見た目と やんちゃなところが気に入り 引き取ることにした。私は このねこに 自分を見ていたのかもしれない。
気になるねこたちは いつも どこか 自分と似ている。

私と このねこ様の関係は まず ミルクをあげるところから 始まった。
それと 私が トイレのトレーニングもしなくてはいけない 年齢だった。
彼女は 当時 寝る時は 布団の中の 私の足元か 首の上で寝るのが 好きだった。
数ヶ月して 彼女の兄弟を引き取った人から キャットシッターを 頼まれた。
毛繕いしたことのない彼女は その時 兄弟から 毛繕いを学んだ。
それから 何度か 住む家が 変わった。
彼女は どこへ行っても 我慢強く 新しい環境に慣れてくれた。
一度 毒を盛られたことがあったが 生還した。
18年も一緒に暮らしていると 私の 食べるもの全てを 食べようとするから
食事の時間は ややこしい。
血栓が出てくる前 今度こそは だめかも?と思わせるぐらい 衰弱したが 
生還した。
同性の結婚が認められた今、ねこ様との結婚が認められるなら 私はねこ様と
結婚したい。ねこ様だって 扶養の対象になるべきだ。
仕事や 出先から家に戻ると まず最初にすることは ねこ様たちを 探すこと。
クローゼットの中、カウチの上、机の上、ダイニングテーブルの上、布団の上、ピアノの下、洗濯かごの中、玄関の階段の下。ねこ様たちは ありとあらゆるところで うたた寝するから 探すのが 大変だ。
それで 見つからないと 今度は 名前を呼ぶ。そうすると 大抵は 姿を 現してくれる。姿を見て 安心すると 私は ようやく ご飯の支度を始めたり
シャワーを浴びたりできる。姿を見ないと 落ちつかず 次のことができない。
もっとも 日が沈んでから帰宅するときは 玄関先で 迎えてくれるから 召使いも捨てたもんじゃない。

2番目のねこ様は 1番めが 毒をもられ 生死を彷徨っているときに 彼女が死んだら 日常生活を送ることが 困難になると思い 収容所が ペットショップにお願いして 引取先を募集しているところで 引き取った。早いもので 11年になる。引き取ったときに 1歳8ヶ月だったから 13歳。
彼女は 茶トラで ドアを開けるのが得意。箪笥の引き出しから 台所のキャビネット、クローゼットのドアまで 教えたわけでもないのに どんなドアにも対応できる 頭脳を持っている。
そればかりではない、いかに 1番目に嫌がらせをするかも いろんな手を使う。最近の出来事では 明け方 生きた二十日ネズミを 1番目が使用する トイレのボックスの中に放置し、1番目がトイレを使用できないようにした。
しかも そのネズミは 水分吸収パッドの下に潜んでいて 知らずに パッドを 持ち上げると びっくりして 箱から飛び出した。
持ってきた本人は 知らぬ顔。全くもって 迷惑な話しだが 彼女が 1番目に
嫉妬するのも無理はない。長年一緒に暮らしている 1番目と私の仲は かなり濃く それが 周囲に見え見えなだけに 手の込んだ悪戯をされても 決して 叱ったりできない。

3番目は オスなのだが ぶりっこのような 鳴き声を出す。
去勢されているから オスとは言い切れないのかも知れない。
彼は 島の反対側で 生まれた。
当時 その町に 仕事に行ったとき 道端に止めてある車の下にいた。
何人かの女性が 彼を救出しようと しゃがんだり 屈んだりしているのを見て
どうしたものかと 立ち止まったところ 私の声に反応して 車の下から出てきた。手を差し伸べると 手のひらにのり 腕を歩いて 肩に乗っかると 頬ずりしてきた。当時 彼は それほど 小さかったし 痩せていた。毛の黒さもあって まるで コウモリのようだった。頬ずりする彼を見て 他のみんなは あなたが 選ばれたわよと言った。
タオルに包んで 膝の上に乗せたら 眠りにおち そのまま 家に連れてきた。
今では 筋肉隆々 逞しくなった。今年で 8歳になる。

4番目は これまた 黒ねこで 元々は 隣の男性が 自分が勤めていたバーから 連れ帰ってきたのだった。
メスにも関わらず フレドリックと命名され 去勢手術を終え 帰宅したのだが
初日から 家を飛び出してしまったらしい。
それから数日後 隣から 連絡が来て もしも 見かけたら 連絡くださいという。
ある日 うちの ねこ様たちの 食事の支度をしていると 縁側で 聞き慣れない 鳴き声がした。見ると 小さな黒ねこが そこにいた。
バー出身だからかどうか 彼女の鳴き声は しゃがれていた。
まだ若いのに バーボンとタバコで喉がやられたような 鳴き声だ。
彼女の分も 食事を作り 隣に連絡を入れた。
その時 どうして 彼女が 男性の名前なのかを聞いた。
すると 隣の人は 彼女のことを オスだと思っていたという。
彼女が その人を 拒んだ理由もわかる気がした。
それから 私は 彼女を 別の名前で 呼ぶことに決めて 彼女は 縁側に置いてあるソファで 寝るようになり 毎回の食事は 私が 担当し 私が 引っ越す時 彼女を 引き取ることにした。

こうして 私は 4匹の ねこ様たちと 生活をしている。
ねこ様の数が 圧倒的に多いので 家に帰ってきて ドアを開けると 獣の匂いがする。と 同時に 毎回 “すみません、お邪魔します“と言った感じだ。
多数決なら勝ち目がない。
色々 要求されることもあるが 大抵は 穏やかでいてくれる。
だから 自分が 召使いだということを 忘れていることが多い。
ねこ様が好きだからと言って 毛深い男が好きかというと そういうわけでもない。なぜなら ねこ様の毛は ツヤツヤでふわふわで いつも石鹸の匂いがする。ツナ缶を食べて 毛繕いしているのに どうして 石鹸の匂いがするかは
謎だ。
明らかなことは 私は ねこ様がいるお陰で 毎日 とても幸せだと言うことだ。


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