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女も男もなにもかもまとめてトイレに流してしまえ

 今朝、買い物に行く時に近所のバス停から猛ダッシュする学ランを見た。バス停の待合所に荷物を置いた彼は、家に忘れ物でもしたのだろうか。もう、笑うしかないという表情で、走っていた。
「忘れ物かな」
「そうじゃない?」
 運転席に座った弟は、それから「あ」と言った。
「センター試験なんじゃないの?」

 今日はセンター二日目。世の受験生の皆さま、お疲れ様です。
 自分は受験期に体調がめちゃくちゃ悪かった。なので、カロリーメイトのCMのような、キットカットのCMのような、がっつり受験生、みたいな経験は実はないのだが、それでもやっぱり受験当日はびくびくしていた気がする。
 登校拒否気味だったため、センターはなんとか行ったものの、人の多さと緊張による疲れで、翌日は死体のようになったことを覚えている。死体なので布団の中で寝ていたかったが、自己採点をしに登校しろというお触れが出て、這いずりながら学校に行った(正しくは行かされた)。結果、吐きそうになり早退。前後不覚になりながら電車に乗って、お気に入りのマフラーを失くしたことの方が、センター試験よりも記憶に残っている。

 〇

 そんな私の躓き人生などはどうでもよく、このセンター試験という日に、ネットにはいくつか話題になっていることがある。

 ひとつは、センター試験の痴漢反対運動。
 もうひとつは、医大における受験時の女性差別について。

 悲しいけれども、私たちの住んでいる国は、こういう国だ。

 悲しんでる場合じゃない。もうなんか、はらわたが煮えくり返るレベルで、怒っている。不条理だ。不合理だ。なんなんだ。

 さらに嘆かわしいことに、こういった話題に対して、『痴漢冤罪も問題だ』という話題のすり替えや、『女性は結婚出産で現場を離れるので仕方がない』などの擁護の意見が散見されることである。なに……もう、なぜなの。

 女性問題、なんて呼び方がある。まるで、女性であることがマイノリティのような呼び方ではないか。しかし、この世のSEXは女性と男性しかない。ごくごく当然のことだ。人は、身体的には男か女かに振り分けられる。女は、マイノリティではなく、世の中の半数なのだ。

 しかし何故か、女性は常に透明にされる。

 俳優というのに、女優と言う。医者というのに、女医という。
 しかもそこに美人女医とか、ルッキズムまで付け足される。そんな言葉が、メディア(特にテレビ)にはあふれている。もう、頭がおかしくなりそうだ。

 インターネットには(インターネットに関わらずテレビなどのメディアもそうだが)、女性差別や女性ヘイトが腐るほどあふれかえっている。

 先日、女性専用車両に関する記事とテレビ番組が話題になった。

 あほらしい。としか言いようがない。私は東京在住ではないので、東京の事情には疎いが、今の時代あぶら取り紙を使用する女性が少数派なことくらいわかる。いかにも、ホモソーシャルのミソジニーという感じだ。

 なんなんだ。なぜ、女をそんなに嫌うのだ。この世には男性と女性しかいないのに、まるで女は異物そのもののように扱われてしまう。男性社会で生きていくには、女性自身も女という性別を捨てるか、利用しなくてはいけないのは何故なんだ。

 女を捨ててる、と言われないと、馴染めない男性社会ってなんなんだ。名誉男性ってなんなんだ。私は女だぞ、それの何が悪いんだ!!

 〇

 まだ子供の頃、男女差別なんてとっくの昔に無くなったものだと、本気でそう思っていた。差別は、偏屈な年寄りのみが今なお持ち合わせている程度の、その程度のものだと、信じていた。
 なぜなら、人は生まれたときに勝手に男女に振り分けられるからだ。そこに故意もなにもなく、生まれたときから差が付けられるなんて、全くもって不合理極まりないからだ。
 だから、少なくとも、公のものは男女差別は行っていないと思っていた。何が正しいかなんて、小学生にだってわかるのだから。

 しかし、世の中はそんなに賢くはない。
 いまだ、男女差別は横行している。
 その上、それが正当だと主張する人間もいる。

 痴漢をされれば、短いスカートをはいていたからだと言われる。レイプをされれば、自衛をしなかったからだと言われる。女性専用車両は、男性差別だと言われる。同じ料金を出して乗車しているのに、女性が性的な被害にあうのを食い止められない現状が問題なのだと、なぜわからないのだろうか。

 若ければ性的に消費され、年を取ればババアと罵られるのだ。

 私は女性である自分のことが好きだが、かといって望んで女に生まれてきたわけではない。私が男であっても、自分のことを好きでいるだろう。

 性別なんて、その程度なのだ。実際、男であることにも女であることにも、根源的になんの価値もないのだ。

 若いとか、老いているとか、男とか、女とか。
 もう全部まとめてトイレにでも流してしまえばいいのに。
 そんなものがあるから、人の目が濁るのだ。男だから/女だから、若いから/大人だから。あらゆる行動にフィルターをかけられる。かけてしまう。そんな社会が、そんな自分が大嫌いだ。

 〇

 あの忘れ物をした彼は、無事試験会場に着いただろうか。
 どんな学科をうけて、どんな将来に進むのだろう。

 長い受験勉強を終えた人々に、少しでもよい未来が来るように願う。

 そして、彼らの少し先をいく年長者として、ちいさくとも、インターネットの片隅であろうとも、今の社会に異を唱えなければならないと思う。

 痴漢は犯罪だ。
 女性の点数を恣意的に下げることも、差別に他ならない。

 この世のすべての理不尽、不条理を許すつもりはない。

 私は、怒っている。


(追記/200626)
 公開当所、本記事の中には女流棋士、男流棋士に言及する一文がありました。意図といたしましては、一般名詞を男性限定に使用する、つまり『医者』や『俳優』などの職業に女性が付くと女〇〇と呼ばれる現象についての一例として挙げておりました。
 しかし、棋士と一言であらわしても、将棋界、囲碁界で女流棋士を表す意味が異なり、前述した例と並列して使うには、文章の意図としても相応しくありませんでした。
 該当部分、ご指摘を頂き、削除いたしましたこと、ご了承ください。

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