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No.2《気になる!keyword》従業員努力指標(Employee-Effort-Score)について

日本ではいま、様々な業種でカスタマーサクセスエンゲージメントに関する取り組みがなされていて、Webサイトの記事や書籍でもたくさんみるようになりました。私もこれまでオペレーション組織のマネジメントや業務プロセス管理の仕事に携わってきて、”顧客の成功または成功体験に貢献できるオペレーションとは何か?”、”顧客の成功を実現するために関わる従業員が、どんなパフォーマンスを発揮できるようマネジメントが支援する必要があるか?”など、これらの問いに対して試行錯誤してきた経験があり、その答えを導き出す可能性のあるこの2つのキーワードに着目しています。

この2つを測る指標として顧客満足度(CSAT)、顧客ロイヤルティー指標(NPS)、顧客努力指標(CES)や、従業員ロイヤルティー指標(eNPS)、従業員満足度(ES)などがありますが、私がもう1つ着目している指標に従業員努力指標(Employee-Effort-Score ※以下EES)があります。

顧客努力指標(CES)とは?

EESの前にまずはCESとは?から始めましょう。顧客努力指標(Customer Effort Score)はサービスやプロダクトを利用したり、問い合わせなどをした際に、顧客がどの程度努力しなければならなかったか?を聞くことによってサービス改善や解約防止に役立てようとする指標です。平たく言うとどれだけイライラさせられたか?ストレスを感じたか?を顧客に聞くことです。

CESは割と認知されており、Googleで例えば「カスタマーサクセス CES」と検索するとある程度日本語記事がヒットします。

しかし、「従業員努力指標」または「Employee-Effort-Score」と検索しても日本語サイトは0件、海外のサイトでも2件程度しか出てきません。

                      (※2020年5月11日現在)

今はそれほど着目されていない指標ですが、私の経験上、カスタマーサクセスとエンゲージメントをつなぐ、この指標がとても重要です。

従業員努力指標(Employee-Effort-Score)とは?

私なりにこのEESを解釈すると、従業員が仕事を行うための労力には、サービスを提供するうえで、①裁量の中で判断し業務タスクを決めていく労力と②業務タスクを”実行”するための労力があり、EESは②に必要な労力を示しています。

業務タスクの実行とは、使用しているツールの操作や業務プロセス、ワークフローの手続きなどを実行し業務タスクを完了させるための一連の流れによって、顧客にサービスが提供されるまでの内部的な実行業務を指していますが、それを効率的に実行するのを妨げる可能性のある組織的要因に関連する実態を明らかにするのがEESです。

サービスデザインのカスタマージャーニーの中に、サービスの表舞台と舞台裏について表現されますが、EESはまさに舞台裏の状態にフォーカスを充てる指標です。

EESとCESの相関関係は?

私自身まだEESとCESのデータに基づいて相関分析したことがないため、根拠となる数値を明確に示すことはできません。でも、経験上あると思います。

例えば顧客から問い合わせがあり、その問題を解決するためのアクションが導き出せたとして、そのアクションの業務タスクを実行をした際、スムーズな処理ができるケースと出来ないケースを想像してみてください。スムーズに処理できた場合には、従業員も過度なストレスがなく顧客と接することができるでしょうし、そのスムーズな対応を受けた顧客も過度なストレスを受けることがありません。

一方、スムーズな処理が出来ないケースでは、面倒な操作や手続きに従業員がイライラしたり、解決を待ち望んでいる顧客に直接接している従業員にはプレッシャーがかかります。”真実の瞬間”を担う従業員がそのストレスを顧客に表現してしまったらどうでしょう?

サービスを提供する重要なタッチポイントを担う従業員の振る舞いに悪影響をもたらす原因は1つではないと思いますが、従業員の適性だけでなく、業務プロセスの問題を浮かび上がらせ、それを解決するコンパスとなる指標がEESです。

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ゲームバランス

サービスを構成するプロダクトがどんなに良くても、オペレーションデザインが不十分でEESが低かったら、期待した通りのパフォーマンスが出なかったり、顧客体験が高まらず最悪の結果、解約に至ってしまいます。

また、ある1つの部門や一部の従業員の業務タスクの実行が容易になりEESが高まっても、その代わりに別部門の業務タスクの実行が困難なものになってしまいEESが下がる他者犠牲がトレードオフ的に発生し、顧客体験を下げてしまうことも起こりえます。

why(なぜやるのか?)、what(何をやるのか?)に対して、who(どんな部門で、誰がやるのか?)、そしてHow(どのようにやるのか?)のデザインが重要なんだと思います。どれか1つだけ突出していてもだめで、ゲームの世界でいうところのゲームバランスが顧客体験や従業員体験には欠かせません。

次回へ続く

EESに着目しながら、サービス全体をどのようにデザインしていくか?引き続き私もこの問いを持ち続けながら、組織づくりに携わっていきたいと思います。私が着目するよりももっと前から着目している人が、海外にいることを考えるとワクワクします。そんな発見が自宅にいながらできるインターネットとGoogleという検索テクノロジーに改めてすごさを感じました。

次回、もう少し具体的なEESの設問についてまとめてみたいと思います。

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