外為特会の基礎⑯:Tビルの大部分はFB(為券)

今回は外為特会の基礎の続きです。日本の短期国債はTビルと呼ばれ、2009年以降、FBとTBが統合されて発行されています。FBの大部分は、下記の記事で記載したとおり、外為特会のファンディングのための為券ですが、毎回の入札ではTBとFBのどちらが用いられているかはわかりません(その比較をしたものも見たことがありません)。そこで、TBとFBの割合がどれくらいだろうと思い、RAに調べてもらいました。

外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)

結論的には、Tビルの全体の9割程度がFBであることがわかりました。つまり、日本で発行される短期国債(Tビル)のほとんどは外為特会のためのファンディングなんですね。いいかえれば、一般会計の歳出と歳入のギャップを埋める国債はほとんど2年以上の利付債だということです。

下記がTビル全体に占めるFBのシェアですが、ほぼ90%であることがわかります。財務省が実施する入札のデータをみてもTBとFBの区別はできないので、まず、入札結果を用いて、各発行額を月ベースで合計し、月次ベースのデータを作ります。これがTビル(=TB+FB)の合計です。そのうえで、FBの月次の発行額で比率をとることで計算しています(Tビルの場合、年限が短いので積み上げるときに気を付ける必要がありますが、TBの最も短い年限は3か月以上なので、月次ベースで積み上げればダブルカウントすることは原理的にないです)。

FBの月次ベースのデータは下記より取得できます。
財政金融統計月報第847号<国庫収支特集>を掲載しました : 財務総合政策研究所 (mof.go.jp)

これをみると2020年にTBが増えていますが(FBの割合が低下していますが)、これはコロナのときにTBの発行を大幅に増やしたからです。足元ではTBの発行が減ることでFBの割合が9割くらいに戻っている状況です。

現在、短期国債(Tビル)の購入者の多くが外国人投資家になっているため、実際としては外国人投資家のお金が通貨スワップベースや為替スワップを経由して、外為特会に入ってきて、外為特会はそのファンディングを用いて、中長期の米国債などで運用するという資金循環がそれなりの規模で起こっているということだとおもいます(外国人投資家と短期国債の関係については12月にでる私のJGB本を参照してください)。

RAがこれを計算してきたとき、私の想像と違ったため、色々と確認しましたが、この計算結果は正しいと思います。なお、これまで外為特会について継続して記載しているので、関心がある読者は下記を参照してください。

外為特会の基礎①:外為特会のBSと為替介入|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎②:運用の概要|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎③:外国為替資金証券(為券)について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎④:日本には非不胎化介入は存在しない?|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑤:為替介入規模の推定|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑥:外貨準備と外為特会の違い|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑦:国債整理基金特会との関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑧:IMFとの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑨:外為特会が有する外貨資産の活用とチェンマイ・イニシアティブ|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑩:為替介入と民間銀行のBSの関係|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑪:為替介入や特会の運用に関する財務省の体制|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑫:外為特会改革と外為特会の積立金制度について|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑬:積立金制度廃止とFBの償還(外為特会改革について)|服部孝洋(東京大学) (note.com)
外為特会の基礎⑮:2022年の円買い為替介入と不胎化介入について|服部孝洋(東京大学) (note.com)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?