服部レポートとジョン・ハルのデリバティブの教科書

先日、「デリバティブ教育:なぜジョン・ハルのデリバティブの書籍が薦められるか」について記載しました。改めてジョン・ハルのデリバティブの章立てを読んでみました。そこでわかったことは、私のこれまで記載してきた論文(ここでは「服部レポート」とします)で、このハルの1000ページある本について、かなり部分カバーしているということですね。毎月のようにA4で20ページくらいの原稿を書いているとかなりの部分がカバーされるわけです(笑)。

ジョン・ハルの書籍の目次はここを見てほしいのですが、オプションに入るまでの9章は、下記のような構成になっています。

第1章 序論
第2章 先物市場の仕組み
第3章 先物を使ったヘッジ戦略   
第4章 金利   
第5章 フォワード価格と先物価格の決定   
第6章 金利先物   
第7章 スワップ   
第8章 証券化と2007年の信用危機   
第9章 OIS割引、信用問題、ファンディング・コスト

第8章や9章は置いておいて、第2章から第7章は服部レポートでかなりカバーされています。ジョン・ハルの書籍と比べると、私の方が具体例が多いということが強みだとおもいます(ハルのテキストの場合、書籍であることから紙面に限りがあるからだとおもいます)。弱みとしては内容面が金利に偏っているという点でしょう。

春のテキストでは第10章以降、オプションの話題が始まります。

第10章 オプション市場の仕組み 
第11章 株式オプションの特性   
第12章 オプションを用いた取引戦略   
第13章 二項ツリー   
第14章 ウィナー過程と伊藤の補題   
第15章 Black-Scholes-Mertonモデル   
第16章 従業員ストック・オプション   
第17章 株価指数オプションと通貨オプション   
第18章 先物オプション   
第19章 グリークス
第20章 ボラティリティ・スマイル
   

オプションについても相当説明してきたため、ハルをパラパラ読んでいると、この辺りも大部分説明した印象です。例えば、JPXから出した「国債先物オプション入門」では、オプションの基本的な商品性はもちろん、グリークスやオプションの戦略についても説明しています(ちなみに、「国債先物オプション入門」の英語版は今年中に出ます)。

オプションについては、私がこれまで書いたものについては、債券に偏っているため、株式オプションやストックオプションなどは記載していません。また、大きく説明していないところはオプションの理論部分、たとえば、ブラックショールズのオプション公式の導出などについてほとんど説明していない点です。

なぜこの部分を説明しないかというと、BSのオプションの公式をうまく説明するところは、どうやら多くの人が熱くなるようで、この部分の説明については、既に膨大な書籍や動画があるからです。そのため、私がこの部分を一生懸命説明しても類似本が多すぎるので、改めて説明することがないということで省略しています。

この年になると、ハルを最初から読むことはないですが、今度頭から読んでみてもよいかなと思いました。私が大学で12コマくらいのデリバティブの講義を将来することがあれば(現在は、初学者を想定した金融論しかやっていないです)、これをテキストをベースに、より日本の事例を用いて12回くらいかけて説明するという形をとるとおもいます。

学生に対して言えることは、これまでの経験上、ハルの書籍は、とにかく長いので、一人で読む疲れるとおもいます。そのため、私の論文を読んで、その該当をハルで読んで、その前後の流れを確かめるという勉強の仕方がお勧めできるのではないかと思います(今度この辺りのガイドラインを記載しようとおもいます)。

今ざっと読むと、手薄となっていて、私が今後、記載してもよいのは、クレジットデリバティブ周りでしょうか。とはいえ、今ペラペラみていると、クレジットデリバティブについてはハルの書籍も最低限の書きぶりになるので(例えばクレジットイベントの説明や、オークションをどうやるか、商品性などはほとんど書いてないように見えます)、これが知りたい人はCDSの書籍を読んだ方がよいですね。

後日記載
下記を記載したので、こちらを参照してください。

新しいジョン・ハル教科書の読み方(服部レポートの活用とデリバティブの勉強方法)|服部孝洋(東京大学) (note.com)

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