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嘘の作法①


 小説フィクションを書くうえでの、「自然な嘘のつきかた」について、自分なりの考え。テクニックについての覚書き。

 今日のあなたの運勢はホドホド。何事も慎重に、落ち着いて行動すれば致命的なミスを回避できそう。ラッキーナンバーは「9」。
 あまりかんばしくない青蛇座の今日の運勢をなげきながら、はたして自分の身の回りに「9」のつくものはあっただろうかと思いながら、みなとハリオミは、自分にあてがわれた自走機ランナロンの思考モジュールを呼び出す。

 自分なりに架空の小説の冒頭を考えてみたが、どうだろう。
 ストーリーとして展開していく前提ではないので、「深堀り」には耐えられないが、「それっぽい」感じはしないだろうか。
 あらかじめ断わっておくが、今回はこんな感じで ”それっぽい単語や言い回しを用いてデタラメを書き連ねる回” になると思う。
 あくまでも嘘のつき方の一例として、自分が考えていることのニュアンスが伝わればいいな、と思う。

 耐熱性のシャーレの上に置かれたスチールウールは、ほんのりと赤い光を放ちながら、ちりちりと燃焼していく。
 その様子をそばで観察していた望月紅松もちづきべにまつは妖艶な面持ちのまま、透明な容器のうえで徐々に酸化していく金属繊維の塊にむかって、ふっと息を吹きかけた。
 彼女が呼気に含んだリュミエール粒子は熱素の移動を促し、スチールウールは火柱をあげながらあっという間に燃え尽きてしまった。

 こちらも、架空の小説の冒頭。「熱素論(カロリックセオリー)」については、各自で調べていただきたい。リュミエール粒子はてきとうな造語。

 事件性は無しと判断され行政解剖に回ってきたそれitについて、大臼歯の間に塩化セチルピリジニウムCPCが残されていたことから、彼は歯を磨いている最中に亡くなったものと推測されると、エルフ族の監察医は両耳をぴくぴくと動かしながら指摘した。

 これは落差(現実と虚構の間のギャップ)があり過ぎるので、ちょっと違和感があるが、今回の記事におけるわたしの意図は伝わりやすいと思う。

 きょうは時間がないので、つづきは明日に持ち越し。とりあえず、今回の記事では、人名についてだけ言及しておきたい。

 数日前のわたしの試験創作小説『クオリやファミリや』の主人公は、「豆生まみゅうノルチカ」という名前で、今回は「湊ハリオミ」という人物名を用いたが、なんだか未来人、もしくは「洋画に出てくる日系人という設定の人物」っぽくないだろうか。漢字で書けないことはないが、普段の常識的な日本語の感覚的に、なんだか変な感じがする(わたしはこういうのを「無文脈的な名前」と呼んでいる)。
 一方で、「望月紅松」は明治~大正期の人っぽい。

 ずばりいうと、人名というのは、その人物が身を置いている「文脈」に依存するので、逆にいうと、人名だけで作品の世界観や時代設定、おおまかなシチュエーションなどを、読み手に想像させることができる。


つづく。

わたしの活動が、あなたの生活の一助になっているのなら、さいわいです。