見出し画像

人生で追い詰められたことのない人は自分の限界を知らないゆえ危ない

 「殺したい人間がいる」という人は、この世にどれほどいるのだろうか。
 統計を取っていないので断定できないが、10人中せいぜい3人程度ではないかと思っている。日本人は温厚な人が多いので。
 ちなみに、その人たちは異常ではない。それも少数派だから、という理由ではない。今回はそんな話である。

 「いい人」と呼ばれる人がいる。
 無差別殺人などの凶悪犯罪を犯した人が学生時代のエピソードとして「いい人だった」「真面目だった」「まさか、そんなことをするとは思わなかった」と語られる、お決まりのパターンである。

 なぜ、「いい人」が突発的に人を殺してしまうのか。
 いい人は、自分が怒った時の対処法を知らないのだ。

 平和ボケして生きているとも言える。
 だが、長い人生、必ずトラブルがある。トラブルがあった時に、自分がどのように反応して、どのような思考を取って、どのような行動に出るのか。「殺したい人間がいる」という人は、ある意味で素直な人で、そのことをよく把握している。だから逆に人を殺さない。
 一方、「いい人」は限界領域での自分を知らない。そういう人が、ある日偶然、心の底からムッとするようなトラブルに遭遇する。その時、怒っている自分への対処法が分からず、思わず突発的に殺してしまうのである。

 自分の限界を知ることは非常に大事なことで、「これ以上はやばい」という認識がないとならない。「敵は己の中にあり」ということだが、案外自分の限界を知らない人は多い。自分の限界を知るためには、ある程度追い詰められる必要があるのだ。

 少しだけ、私の話をしたい。
 先月、私は30歳になった。
 詳細は省くが、私の20代は本当に苦しかった。「俺の青春を返せ」と叫びたくなるくらい不運やトラブルの連続で、追い詰められて実際に入院もしている。
 そのため「ああ、これ以上のストレスはやばいんだな」と自分の(精神面での)耐え得る限界を知ることができた。神様がくれた有難い試練だなんて一ミリも思わないが、「自分の限界を知る」という観点で言うと、貴重な経験をしたとも言える。

 病気でも人間関係でもお金でも、理由は何でも構わないが、一つ言えることは、追い詰められたことのない人は弱い。弱いと同時に危ない。自分の限界を知らないゆえ、何をしでかすか分からないのだから。

 それこそ、冒頭の「殺したい人間がいる」という人のように、自分にまっすぐ素直で、迷惑を被ったり、追い詰められたことのある人のほうが、実は人間的に強く、周囲を安心させることができる。なにより、追い詰められている人に優しくできる。なんとなく生きて、特にトラブルにも見舞われず、本気で怒たことのない人に、追い詰められて苦しんでいる人の気持ちはわからない。男に出産の痛みが分からないのと理屈は同じだ。

 あなたの追い詰められた経験は決して無駄にはならない。
 それを生かすも汚点として残すも、すべては自分次第だ。