怖すぎた母の実家③

このお話は


の続きです。

さて実家を出た私たちがしたことは、まず母の妹(次女)への連絡である。

次女は看護師で、学校を出て資格を取ったあと実家を出て、キムタクに憧れて上京し、都内で看護師をしていたのだけれど、姉である私の母が離婚したので、我が家に一緒に住むようになり、祖母のがんが発覚した際、面倒を見る為に実家に戻り、最期を看取った。
そしてしばらくそのまま実家にとどまり、数年してまた母と共に暮らすようになった。

すなわち、最後に母の実家に住んでいたのは次女なのだ。
干しっぱなしのタオルも、おきっぱなしの醤油も、黒髪ウイッグも、おもちゃの剣も、全部次女が事情を知っているはずなのだ。

しかし、本人もなにせ二十年前のことだからかほとんど覚えておらず、ティッシュは恐らく「節約の為に安いときに買いだめしてた」ものがそのままになっていて、生活感丸出し、まるで夜逃げのような状況で家を出てきたことに関しては「多分すぐ戻るからいいと思ったんじゃないかなー」と呑気な答え。
しまいに「あはは」と笑いだす始末。

笑い事じゃない。
お陰で天然お化け屋敷が誕生しているのだから、もっと責任を感じて欲しい。
そしてウイッグと剣は「多分病院の忘年会の出し物で使ったんだと思う」とのこと。

どんな病院だよ。
そんでこの小道具でなにしたんだよ。

聞きたいことは山ほどあったけど、私たちはもう疲れていた。
だからそれ以上は聞かなかった。
「聞いても無駄」という言葉がこれほどしっくりきたのはこのときが初めてだ。

ひとまずこのときはこれで引き上げたのだが、その後半年ほど経って去年の秋、私たちは再度母の実家を訪れた。
母が「あのとき見なかった荷物の中に大事なもの入っていた気がする」と言い出したからだ。
行くとなれば「壁の穴も塞ぎたいね」という話になり、父に協力を願い、今度は材料を持って中に入った。

そしたら、私たち全員が記憶していた場所と、実際に壁に穴が開いていた場所が違ってた。

もうね、毎回恐怖を更新してこなくていいんだよ。

この間見た覚えのないポスターとか、なんで仏壇の横にあるんだよ。
怖すぎるんだよ全くもう。
そのくせウイッグと剣はそのままだしさあ。
ゴキのアレも、別にそのままそこにいなくていいよ。
見えないところで勝手に見えなくなっててくれよ。
頼むよ。

今回は二度目だし、目的が明確だったから早く済んだ。
さっさと済ませて、そそくさと退散した。

二度目はなんと、母の体調はすこぶる良かった。
咳き込むこともなく、気持ち悪さも肩の重さも全然なかった。

それもそれで怖いよ。
じゃあ一回目なんだったのよって話なんだよ。

そんなこんなで、今のところ二度の母の実家お化け屋敷体験は修了している。
今年の春、また母を伴い帰省する予定だが、今回は出来れば庭の草むしりだけで済ませたいと思ってる。
もうウイッグ見たくないし。

今になって「これネタになるな」って思って書いてみたけど、残念ながら写真はない。
だって怖くて。
記録に残したくなかったから。

ということで私の怖すぎる母の実家訪問の思い出は以上である。

シリーズ全部読んでいただいた方、ありがとうございました。
出来れば次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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