怖すぎた母の実家②

このお話は昨日の

の続きです。

そもそも、家の中がね、整理されてなかったのも怖かった。

仏壇の扉だけは閉まってるのに、入ってすぐの客間のテーブルの上には大量のボックスティッシュ。
五箱組が五つくらい。
そのテーブルの脇におもちゃの剣が刃をこっちに向けて落ちてて、入って右の仏間の手前、玄関脇の縁側には、白いカピカピに固まったタオルが干されたまま。

客間の奥、居間のこたつの脇にははんてんが脱ぎ捨てられた感じで落ちてて、その三十センチ先に黒髪ウイッグが落ちている。
こたつの上にはしょうゆの小さいボトルが置かれたままで、リモコンも乗ってた。

この「生活してたまんま」感が余計怖いの。
まさにお化け屋敷なのよ。

今の横、最後に母の妹、三女が使ってた部屋は、ほとんど漫画しか残ってなかった。
意外と漫画は無事だった。
多分押し入れに入ってたからだと思うけど。

でも、壁、というか障子に何枚かポスターが貼ってあって、それが光GENJIなの。
すっごい笑顔だったんだけど、懐中電灯で照らされて浮かぶアイドルの笑顔、本気で怖いからね。
光GENJIに罪はないけど、猟奇的な笑顔に見えたよ。
シチュエーション、大事。
本当に。

台所には湯呑とポットがそのまま置かれてるし、食器棚の食器もそのまんまなのよ。
台所脇の祖父の部屋は段ボールが散乱して、泥棒が入った後みたいになってたけど。

もう色んな違和感を振り切ってきちんと見て回った結果、壁に十センチ四方くらいの穴が三カ所開いてた。
仏間と、今と、三女の部屋。
ひとまず家具で穴を塞いだ。

台風通過率の高さでおなじみの鹿児島県である。
きっと今まで家の中も台風の度に風が吹き荒れていたに違いない。

ウイッグと剣はきっとそのせいで落ちていたんだ。
私と母は無理矢理そうやって自分達を納得させた。
誰がなんと言おうとそうなの。
もう怖いからあんまり色々考えたくないし。

で、主目的である「失いたくないもの」を母に探してもらい、写真とか、何かの権利証とか、そういうものを回収して作業を一旦終えたんだけど。

更に怖かったのは、その間中、ずーっと母の具合が悪かったこと。
見るからに青い顔をして、ずっと「吐き気がする」「気持ち悪い」と言い、すっごい咳き込んでた。
もちろん埃やらなんやらが酷いことは想定内で、私達はマスクを二重でして行ってたのね。
同行してくれた父も、弟も、喘息持ちの私ですら無事だったのに、母だけが明らかにダメージを負ってた。

実家を出て、離れたらすぐ元気になったんだけどね。
そのエピソードがまた怖くない?
なんらかの意思を感じるよ。

私は私で、玄関に落ちてた、埼玉で見たことないサイズのゴキブリの抜け殻なのか亡骸なのかを見て、別の恐怖を感じたけどね。
恐怖要素てんこ盛りで、サービス精神旺盛過ぎる。

とそんなわけで実家を脱出した私たち。
お話もう少し続きます。
またしても明日更新しますので、よければお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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