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癖字は作るもの

中学生くらいになるとさ、字に癖が出てこない?
特に女子。
いつの間にか「可愛い字」というジャンルが生まれるよね。
それまで字って上手か下手かしかなかったのに、急に「お手本とは程遠いけど個性があって良い」みたいなジャンルを開拓する者。
いつからそうなったか全然分からないんだけど。
気付いたらもう完成してて、経過が全然分からない。

いつの間にか取り残されてて、ちょっと焦ったよね。当時。

別にそういうのに染まらない女子もいる。
常にお手本の如き美しい文字を書く人はそのままだし、字はただの記録手段だと割り切ってなんの思い入れもない人もブレずにそのまま貫いてた。
それはそれで格好良いんだけどさ。

でもさ、その「可愛い字」って傾向があったのよ。
おおまかに分けて字が太る派か字が痩せる派。

太る派は字が丸くなる。
こう、全体の完成形の枠が〇。
だから真ん中が広がって、上下が狭まる。
この派閥は大体角も丸くなってたね。
争いを好まない感じだったのかな。
全部丸かったからね。
直線も曲線も。
誰も傷付かない仕様の文字だった。

一方痩せる派は、角がかなり鋭利になる。
字を構成するパーツに直線が存在しなくなる。
本来真っすぐな部分はなぜか内側に入り込むように曲線を描く。
角は大体半分くらいになってる。
こう、真ん中あたりに圧力がかかった感じ。
くびれをイメージしてるのかもしれないね。
分からないけど。
あとは戦闘を好む感じなのかな。
角が鋭利だからね。
あれはなんか、誰かを傷付けるためとしか思えない仕様だったね。

まあそんな渦中に放り込まれていた私。
なんかその「字が可愛い」派の人に「何をお手本にしてるの?」とか聞けなかったよね。
失礼にあたると困るじゃない?
みんな当たり前のように「最初からこの字でしたけど」の顔してるからさ。
「小学校のときすごい字、汚かったのにね」とか言えないでしょ。
それはちょっとアウトローがすぎるでしょ。

私としても、美しい文字はとうに諦めてたわけ。

だってずっと綺麗なお手本を元に字を習ったのに、十年くらい上達しないんだから、もうそのお手本とは相性が悪いってことじゃない?
書き順とか覚えてないし、書写も毛筆も一回も入賞したことないしね。

なので私、ひっそり漫画のフォントをお手本に字を練習したよね。
明朝体ではなくゴシック体の。
台詞の書き分けの為にフォント別れてるの参考にして。
漫画読んでるふりしてフォントを学び「漢字の縦線は気持ち下に広がるようになってるのか」とか考えてたよね。
誰にも内緒で。

めでたく習得した私の字、文集やらに載ってます。
当時、担任ではない先生に「羽鳥の字は読みやすい」と褒められたよ。
そりゃそうじゃんね。
そのために開発されたフォントだもんね。

「可愛くはないが読みやすい」字を習得した私だが、その後どんどん独自の進化を遂げ、更に途中で青果の手書きPOPなどを嗜んだ関係で、ゴシック体とはかけ離れた有様になっている。
今になって「字が可愛い」と褒められることもある。
当時は一度も「可愛い」とは言われなかったのに。
矯正されて、熟成されて、発酵してる感あるよ。
身体に良いかもしれないね。
もしかしたらだけど。

ここ数年、美しい字に憧れてる。
でも練習しても、意識して書いても、発酵した元の字に戻っちゃう。
もう今更修復は不可能かもしれないな、と封筒に宛名を書きながらふと思った昼下がり。
なんせ発酵してるからね。
出来る限り人目にふれないように、今後も熟成を重ねる所存です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。

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