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文系主婦によるひとり自然観察【2月】

私は東京都在住の主婦で、植物や虫が好きです。専門知識はありませんが、散歩や子供との外遊びの中で身近な自然に触れて楽しんでいます。でも実は、近所の遊び場でも、少し足を伸ばして大きめの公園へ行っても、同じような生き物にしか出会えないのを寂しく思ってもいました。しかしある日、家族で狭山公園を訪れて衝撃を受けました。入った瞬間から、ここには色んな生き物がいるのだということがひしひしと伝わってきたのです。その上、いつもそれなりに賑わっていて電車の音も聞こえるので、一人で森や山に入るときのような不安感もありません。しばらく歩き回って私は思いました。『ここに通って自然観察をしたい。とりあえず一年は誰の手も借りず一人で。』

(第1回冒頭より)

狭山公園で自然観察 第3回 2022年2月

ライターとして散歩のエッセイを書くようになったのは去年の春。元々散歩は好きだったものの、真冬に出歩くことは多くありませんでした。手袋をせずスマートフォンで写真を撮りながら歩くことの辛さを知ったのは最近のことです。私は急いでハンドウォーマーを編みました。

ウール100%の深緑色の毛糸で編んだ指先の出る手袋です。今日はこれをお供に公園へ向かいます。珍しく電車がガラガラにならなかったのは、数日ぶりの晴天だったからでしょうか。遊園地へ行くであろう、おしゃれをした若い子たちにちょっと気後れしてしまいました。都会へ行くときは身も心も武装(しっかりメイク、お気に入りの服、イヤホンで爆音ロック等)するのですが、ひとりで自然観察に行く私は非武装なのです。

公園に着いてしまえばこっちのものです。さっそく可愛らしい小鳥たちに出会って元気付けられました。忙しなく鳴きながら地面や切り株の上で一生懸命何かをついばんでいます。スズメやシジュウカラに混じっていたのはカシラダカ。スズメがモヒカンにしているみたいです。私は初めて見たので驚きました。確かに頭(カシラ)が高いです。

やっぱり今日は人が多く感じます。公園が賑わうのは良いことですが、ひとりになりたい私は足早に林の中へ入りました。落ち葉の茶色の中にヤツデの幼葉が鮮やかです。

倒木にキノコがびっしり生えています。海中の岩に張り付く貝のようです。少し高いところに上がってから気づいたのですが、今日はススキ原っぱの整備をしているようでした。業者さんが入って枯れ葉色の原っぱの草刈りをしています。音は多少耳障りですが、きっと春を迎える準備なのでしょう。また虫たちの楽園になるのが楽しみです。

アセビに花が咲いていました。とても咲くのが早いんですね。椿を除いて、木の花は他に見つけられませんでした。春が近づいているとは言ってもまだまだ冬。私好みの背の低い植物たちはほとんど見つかりません。目につく緑色は笹ばかり。

こんな時は倒木に限ります。おそらく雑木林の生態系のため、伐った木を横たえてそのままにしている場所がちょこちょこあるのです。私は見つけるたびに近づいて、キノコや粘菌を探します。小さなものにピントを合わせるために買ったスマートフォン用マクロレンズがここで役に立ちました。大きさ1センチもないくらいのスエヒロタケの赤ちゃんです。

これはスエヒロタケの成長した姿でしょうか。ひらひらした扇形で、確かに末広がりな形です。隙間には苔がびっしり。この付近には野鳥がたくさんいて楽しかったです。一歩歩くごとにシジュウカラが飛び立ち、じっとしているとアオジが近くの木まで飛んできます。スマートフォンのカメラではさすがにすばしっこい野鳥を撮ることはできませんね。この日は立派なカメラを持った方たちをよく見かけました。

落ちていた枝に生えていたキノコです。カワラタケの仲間でしょうか。3センチくらい。これもマクロレンズで撮影しました。対象物にピントが合うのは嬉しいですが周りがボケすぎですね。安物レンズの限界かもしれません。

以前から気になっているのですがこれはなんでしょう?落ちている枝についた黒くて丸いぽこぽこ。調べても全然出てこないのでご存じの方いらっしゃればご教授ください。地衣類かな…
(追記:クロコブタケだそうです!コメントで教えて頂きました。キノコなんですね。)

朽ちた切り株を苔が覆っています。元々「人工物を覆う植物」のようなモチーフが好きなのですが、これは古城に植物がまとわりついているような趣があっていいなと思いました。

またスエヒロタケ。表面がもしゃもしゃしていて可愛らしいです。ただこのキノコ、胞子が肺に入り込むと病気になることもあるらしいです。肺機能が弱っている人は要注意です。

イヌツゲについた虫こぶを見つけました。イヌツゲメタマフシと呼ばれるそうです。中に幼虫がいるのかな。枝の先についているようなものは今までピントを合わせることができなかったので、やっぱりマクロレンズは楽しいです。

青々した立派なシダです。まだシダ図鑑は手に入れられていないので種類がわかりません。ネットで調べてみてもシダはどうしてか見分けがつかないんです。でも、まだまだ興味ある事があり、知ることができるというのはわくわくします。

コゲラがあちこちで木を叩く音が聞こえます。私は子供の頃からケラ類が木を叩く音が好きです。あの音を聞くと必ず姿を探してしまいます。地元(北海道)ではアカゲラをよく見かけましたが関東ではコゲラですね。上を向いて歩いていたらカエデの種がくるくる回りながら落ちてきました。

紅葉も終わった冬の池。鴨の姿もありませんでした。早朝は氷が張ったりもするのでしょうか。この近くを歩いていたとき、大きな白い鳥が飛び立つのを見たんです。サギみたいにすらっとしていなくてカモメより大きな、翼の先だけ黒い鳥です。私は驚いて追いかけましたが、どこまでも行っても木々の枝に隠れて姿がはっきり確認できないまま見失ってしまいました。ハクガンがイメージにぴったりなのですが一羽だけでこんなところにいるでしょうか。大きな白い鳥には思い入れがあるのでどきどきしました。

木の表面に丸く広がった地衣類。ウメノキゴケでしょうか。良い色です。くすみカラー好きなのでこういう色にときめきます。柵ごしの撮影だったので中心がずれてしまいました。

湖が見えるベンチでお昼にします。前回は手作りおにぎりが冷たすぎてお腹をこわしたので今回は市販サンドイッチと熱い紅茶を。実はグミを毎回買っています。普段買わないから選ぶのが楽しいし、歩き疲れた時に酸味と弾力のあるグミを食べると元気が出るんです。今回は柔らかめで甘いグミだったけれど。

人工の湖は今日も安定してきれいです。いつもいるホシハジロたちがちゃぷんと音を立てて水に潜ります。ススキ原っぱの草刈りをしていた業者さんたちもお昼休みのようです。水音が耳に届くほど静かな時間を過ごせることに私は幸せを感じます。湖の向こう岸に黄色い電車が見え隠れし、ベンチの周囲ではセグロセキレイが忙しなく歩き回っています。

ふと見ると、コートにヌスビトハギの種がくっついていました。秋に来たときも服にたくさん付いたけれど、林の中にはまだ残っていたんですね。この健気さ、「遠くに行きたい」という思いをひしひしと感じます。

いつ見ても美しい取水塔。いつかあの橋を渡って中に入ってみたいものですが、一般公開されることはないのでしょうか。いつも立ち入り禁止なのが無念です。

そろそろ時間なので湖を離れて公園の出口へ向かいます。コブシの木にふわふわのつぼみがついていました。花の季節までもうすぐです。

足元にはオオイヌノフグリが。東京は、ここ数年で一番冬らしい冬だったような気がします。花粉症や、季節の変わり目の体調不良はあるけれど、それでも春が楽しみです。次回は春爛漫なレポートをお届けしたいです。これからも植物や虫たちにたくさん出会えますように。お世話になりました。

前回のレポートはこちら。↓

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