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文系主婦によるひとり自然観察【12月】

私は東京都在住の主婦で、植物や虫が好きです。専門知識はありませんが、散歩や子供との外遊びの中で身近な自然に触れて楽しんでいます。でも実は、近所の遊び場でも、少し足を伸ばして大きめの公園へ行っても、同じような生き物にしか出会えないのを寂しく思ってもいました。しかしある日、家族で狭山公園を訪れて衝撃を受けました。入った瞬間から、ここには色んな生き物がいるのだということがひしひしと伝わってきたのです。その上、いつもそれなりに賑わっていて電車の音も聞こえるので、一人で森や山に入るときのような不安感もありません。しばらく歩き回って私は思いました。『ここに通って自然観察をしたい。とりあえず一年は誰の手も借りず一人で。』

(第1回冒頭より)

狭山公園で自然観察 第2回 2021年12月

今回も平日午前中のガラガラの電車で向かいます。満員電車のイメージのせいで苦手意識があったのですが、空いている電車は最高ですね。乗り物に乗ることの純粋な楽しさを思い出すことができました。それに、この路線特有の、時間がゆっくり流れているような感じが私は好きです。窓から入る日光と足元の暖房で体がほかほかして、ちょっと眠くなりました。

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公園の最寄り駅に到着しました。終点なので乗客全員が降りますが、誰ひとり私と同じ出口へは向かいません。駅舎の窓からの風景も独り占めできました。ひとりで改札を抜け、駅を出ると静かです。それだけで、なんだかにこにこしてしまいます。道路を渡り、公園に入ると蝶が何匹か飛んでいました。もうそれなりに寒いのに、明るい日差しの中で元気にひらひらしています。楽園でしょうか?やっぱりこの場所が好きだなあと、しみじみ感じます。

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駅前の静けさに比べて、公園は賑やかでした。遠足にきたらしい子供たちがはしゃいでいて、シジュウカラの可愛らしい鳴き声も響いています。花壇に植えられた立派なコウテイダリアが花を咲かせていました。大きな花びらを拾って見てみると、真珠のように淑やかな艶があります。

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大好きなススキ原っぱに立ち寄ります。10月より葉の色がだいぶ茶色くなりました。一足ごとにぴょんぴょん飛び出してきたバッタたちも、もういません。道沿いに歩いていくと、踏みつぶされてぺしゃんこになったカマキリが落ちていました。大きく広がった羽が透き通ってきらきらしていました。

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空と池と、紅葉した樹木のコントラストがきれいです。眺める先の橋の上で遠足の子供たちが騒ぎ出しました。するとその下から、避難するようにたくさんの鴨が出てきて笑ってしまいました。鴨たち、びっくりしたんですね。

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赤い紅葉は良いものですね。通りがかった人たちも楽しそうにカメラを向けていました。あの大量の葉がもれなく赤く染まっているなんて。律儀なことです。

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池を越えて散歩道を進んでいくとツリフネソウが可憐な花を咲かせていました。秋に咲く花ですから、そろそろシーズンは終わりでしょうか。

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かっこいい模様の葉ですね。おそらくミズヒキです。紅白の小さな花が咲くのですが、そのころには模様は消えてしまうらしいです。何故なんでしょう。不思議です。この辺りから野鳥の森へ入っていきます。

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森へ続く階段を上がっていくと板張りの観察スポットがありました。周囲をぐるっと樹木に囲まれ、ひとり黙って鳥の声を聞いていると少しだけ自然に近付けたような気分になります。
伐採された木の上に可愛らしいきのこが生えていました。鮮やかな黄色は栗の甘露煮のようです。見惚れてしまいました。

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アオキの艶やかな葉が光を浴びて神々しく輝いていました。ガビチョウが付近の葉をがさがさ鳴らしたりよく通る声で歌ったりしています。ここは本当にガビチョウが多いです。外来種だそうで、私も家の付近で最近見かけるようになりました。ガビチョウだって可愛いけれど、この森では野鳥の生息の多様化に取り組んでいるらしいので、これからに期待です。

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しっとりとした苔。ハイゴケでしょうか。最近、苔やシダやきのこに惹かれている気がします。見ているとなんだか落ち着くのです。日陰を好む生き物に親近感があるのでしょうか。

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オオハナワラビがたっぷりと胞子のうをつけています。ひとつぶ手に取ってつぶしてみると白い胞子の粉がさらさらと出てきました。これで広がってゆくのですね。

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南の森に入ると、白いおせんべいのようなきのこたち出会いました。いつの間にか、切った木をそのままにしてある場所を見つけるとわくわくするようになりました。きのこや変形菌や朽木を好む虫を探すのは楽しいですね。

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切り株には苔と一緒にカワラタケがたくさん生えていました。層の模様がメノウのようで美しいです。

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スギゴケから伸びる朔柄がキュートです。小さなものにピントが合わず撮りたいものを撮れないことが増えてきました。最近は、スマートフォン用のマクロレンズが欲しくてたまりません。スマートフォン自体を新しいものに買い替えるか、マクロレンズを購入するか、悩みどころです。

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森を出て散歩道に戻ると、下生えの明るい緑に目を奪われました。いろいろな種が集まっていて美しいですね。ハコベと、この小さいセリのような草はセントウソウでしょうか。細かな切れ込みのある繊細な葉が素敵です。

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こちらも群生していました。水草のウォーターマッシュルームに似ていて可愛らしいです。たぶんチドメグサですね。この葉の汁を傷口に塗ると止血できるとか。面白い名です。

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湖を目指して、湧水の森へ入ります。大きなシダの、胞子のうの点々がきれいです。シダの見分けが全然できないので、そろそろシダの図鑑を買ってしまいそうです。いえ、たぶん買います。

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これはコツボゴケでしょうか。大きな岩をひらひらで飾っています。葉先の細かなぎざぎざが良いですね。

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お昼ごはんは手作りおにぎりです。中身は梅干しと鮭フレーク。前回ここに来たときはコンビニのおにぎりを持ってきましたが、次は絶対手作りにしようと決めたのでした。その方がここで過ごす気持ちの柔らかさに合いそうだと思ったからです。でも実は私はおにぎりを握るのが下手で、今回はかなり固くなっていました。次回はもう少し優しく握ろうと思います。

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時間になったので、今日も静謐な多摩湖を眺めながら帰ります。取水塔が美しいですね。次は2月頃訪れる予定です。お世話になりました。

前回のレポートはこちら。↓


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