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文系主婦によるひとり自然観察【10月】

私は東京都在住の主婦で、植物や虫が好きです。専門知識はありませんが、散歩や子供との外遊びの中で身近な自然に触れて楽しんでいます。でも実は、近所の遊び場でも、少し足を伸ばして大きめの公園へ行っても、同じような生き物にしか出会えないのを寂しく思ってもいました。しかしある日、家族で狭山公園を訪れて衝撃を受けました。入った瞬間から、ここには色んな生き物がいるのだということがひしひしと伝わってきたのです。その上、いつもそれなりに賑わっていて電車の音も聞こえるので、一人で森や山に入るときのような不安感もありません。しばらく歩き回って私は思いました。『ここに通って自然観察をしたい。とりあえず一年は誰の手も借りず一人で。』

狭山公園で自然観察 第1回 2021年10月

平日の午前からガラガラの下り電車に乗っていると何だか不思議な心地がしました。窓から差す明るい日差しに包まれて、電車の鳴らす振動音だけが心地よく耳に入ってきます。

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とうとう車両には私ひとりになりました。窓の外に緑が増え、いつもとは違う世界にいる感覚が強くなってきます。私はいま街を離れ、母親でも妻でもない何者かになっているのです。人と接する予定のない外出は、どんなに短時間であっても私の心を楽にする作用があるようです。

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公園に着いてまず感じたのは空の広さ。ギチギチに詰められた都会の風景とは全く違う大らかさで、呼吸が楽になりました。体中の余分な力が抜けていくような解放感を味わいます。

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堤防の上から一望する多摩湖。貯水池として90年以上前に造られた人工の湖です。雲とその影が映る凪いだ水面には、どこか非現実的な美しさがあります。しばらく見入ってしまいました。

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クルマトンボ!もうこれだけでテンションが上がります。子供の頃たくさん取ったなあ、と思い出に浸りましたが、クルマトンボって方言なんですね。本当はノシメトンボというみたいです。

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堤防から公園側へ降りて歩いているといろんなものが落ちていました。木の実や鳥の糞、バッタやイナゴ、そしてハチの巣のかけら。

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このきれいな葉はなんでしょう?「裏が白い葉」などで検索しても発見できませんでした。イノコヅチに似ている気もしますが花がついていないのでわかりません。葉の付き方(葉序?)についてなど、少しずつ同定に必要な知識を入れていきたいですね。

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ススキがいっぱい!この付近は、一歩進むごとにバッタやコオロギが飛び出します。私はそれが嬉しくてたまらず、しばらくこの周囲を歩き回りました。自分より背の高い草に囲まれるのもなんだか落ち着きます。

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草地を抜けて川のほうへ。橋にはコケがたっぷりついています。ムクムクしていて可愛らしいですね。流れる水の音にも癒されます。舗装された道を歩くだけで森にいる気分になれるなんて素晴らしいと思います。

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蝶もいろいろいました。ツマグロヒョウモン、ヒメウラナミジャノメ、ムラサキシジミ、ルリタテハ。写真を撮れて興奮しました。とくにムラサキシジミは光沢が美しかったです。羽を閉じていると茶色の地味な蝶なのですが、日の当たるところで羽を開くと輝きます。(追記:ムラサキシジミではなくムラサキツバメのようです。たしかに尾状突起がありますね。コメントで教えて頂きました!)

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虫こぶだらけの葉を見つけました。調べてみると、これはヌルデという木で、ヌルデシロアブラムシが寄生しているらしいです。大きく膨らんだ虫こぶから取れる成分は昔お歯黒に利用されていたとか…いろいろなことが不思議すぎます。

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芝生の広場にあるベンチでひとり自由を噛みしめながらおにぎりを食べ、そのあとも少し歩きました。ハチのとまった切り株に光が差して舞台のよう。

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この赤い指のようなキノコはもしかして最近話題のカエンタケ(猛毒)?と驚きましたが、調べてみると違うようです。しゃがんで観察しているとき公衆トイレのような臭いもしたので多分キツネノエフデでしょう。可愛い名前ですね。くさいけど。

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子供の下校時刻が近づいてきたのでそろそろ帰らなければなりません。もう一度湖が見たいので堤防を通って駅を目指します。カモやカイツブリなどの水鳥を遠くに見ながら歩いていくと、なにか大きな生き物が。スッポン?野生なのでしょうか。初めて見たのでびっくりです。最後に良いものを見たような気分で帰路につくことができました。滞在時間2時間でこんなに充実した気持ちになるなんて。また近々遊びに来るぞと念じながら電車で都会に戻ります。お世話になりました!

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