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【短編小説 ルチアーノ -白い尾のオナガ- 1】Purge 追放

1 Purge 追放

ルチアーノLucianoは取り囲まれていた。
いつものことだったが、少し違ってもいた。辺りの小暗いやぶふところさえもティランノTirannoの味方をしているようで、ルチアーノはいよいよという気がしていた。
「ちょっと青くすることが、何でそんなに難しいんだ?」
「僕は生まれた時からこうだったんだ。父さんと母さんは、そこがいいんだって言っていたよ」
「その言い草は聞き飽きた。なあそうだろ、おまえ達?」
ボスオナガのティランノが潰れていないほうの目でギロリと睨むと、取り巻き達はそうだ、そうだと相槌を打った。
「俺達の尾羽と比べてみろ。これが正しい色だ」
これこそがオナガの尾羽だとばかりに、自分の青灰あおはい色の尾羽を広げて見せるティランノに、取り巻き達はその通りだと声を揃えた。
「よく見ろ。お前がどんなに醜いか分かるだろう。それでも仲間でいたいなら、尾羽を青くすることだな」
「僕を追い出すっていうの? 父さんと母さんにしたみたいに」
「何の話だ? あいつらはお前を捨てて勝手に出て行ったんじゃないか」
「違う! 父さんは僕の尾羽を青くする方法を探しに行ったんだ。母さんもきっと一緒だ」
フンと鼻で笑うティランノに次いで、お前を恥ずかしく思っていたのさと、取り巻き達もせせら笑った。
「そんなはずない! 父さんと母さんは、生まれた時から真っ白だった僕の尾羽を誇りに思って、僕をルチアーノって名付けたんだ。それだけじゃない! 僕の尾羽には金色も入っていたんだ」
「オナガの尾羽に金色なんてない! どうせ偽物の金だったんだろう。その証拠に今はすっかりないじゃないか」
言い返そうにも、喉まで出かかった言葉が出てこない。自信もないし、何か言ったら泣いてしまうかもしれなかった。ルチアーノはあしゆびにぐっと力を入れ、枝を蹴って飛び立った。
「わかったよ。僕は青い尾羽になって戻ってくるさ」
絞り出した声はうわずった。ルチアーノは、ティランノ達のあざけりりが聞こえなくなるまで、ぎゅっと目を閉じて飛び続けた。


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潜っても 潜っても 青い海(種田山頭火風)