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ぼくが考えたさいこうのesportsのミライ

近年esportsが多くのメディアで取り沙汰される中「esportsはスポーツかどうか」なんていう問題提起がなされている。

スポーツ派の理論としては身体を動かすからスポーツというわけではなくマインドスポーツだとしており、否定派からは汗水垂らして努力しているアスリートと同列と思えないことや暴力的描写や依存性の問題を指摘している。

しかし、この話題はゲーマー側からすればほぼ無意味な話題に等しく、esportsという新産業が進む可能性の出鼻を挫こうとしているようにしか見えない。

なぜ、「esportsはスポーツか」という議題を考えなくてはならないのだろうか。そこにはesportsを説明する際のメディア、有識者の見せ方が問題となっていると思うわけだが、そもそもesportsの進んでいく方向性が明確になっていない事が問題となっているのではないだろうか。

メディアに伝える有識者も、世に広く知らせるメディアも、より近くの立場で体験し伝えることのできるゲーマーも等しくesportsが面白くなっていくビジョンを見ることができていればこんな議題で足踏みすることの無駄さに気づくはずだ。

まずはesports元年らしくそれぞれがそれぞれが自由に「esportsってこれからこうなっていったら面白いね」とビジョンを共有し合う必要があるように感じる。

そこで、一般ゲーマーである私が完全なユーザー目線からesportsでワクワクできそうなミライを考えていこうと思う。

まず、esportsを紹介するニュース番組からメディアの伝え方を。次に、プロゲーマーとは一線を画した地方を取り巻く現状。更にユーザーコミュニティの現状から考察していく。

1. 「esportsはスポーツ」論からの脱却を図ろう

まずこの議論からの脱却をしなくては先に進まないので考えてみたい。

先にメディア、有識者の見せ方が問題となっていると述べたので主要メディアであるテレビがesportsを紹介する際の例としてももち氏とチョコブランカ氏をあげてみよう。彼らは世界初のプロゲーマー夫婦としてメディアからのウケも良いのでよく出演する。

現在のテレビは誰でもわかるようにということを基準にした番組がほとんどだ。「おじいちゃんおばあちゃんにもわかるように」という理屈で簡略化されたり避けられたりする傾向がある。

そこで、彼らも良かれと思い、わかりやすく説明しようと部分的に他のメジャースポーツに例えてesportsの説明をするわけだ。そうするとわかりやすく感じるので皆がこの例えを使おうとする。esportsを番組で知った人はそうした例えの部分だけ頭に残るのでesportsは本当にスポーツか?なんて全く本質でない議論が生まれる。

大体このサイクルが定期的に回っているように感じる。

その後も番組は続いていき、目隠しをしながら出演者と対戦してプロゲーマーの凄さを表そうとしている。出演者の格闘ゲームのいろはも知らないガチャプレイとプロゲーマーが練習してるはずもない目隠しプレイという謎の絵面を視聴者は見せられる。これは目隠ししたプロボクサーと新生児がスパーリングしているようなもので、メディアもわかりやすく見せようとした結果迷走しているようである。プロゲーマーを呼ぶのであればそのゲームの基礎程度は知っている芸能人も同時に呼ばなくては凄さは伝わりづらい。

少し話が逸れたが、esportsについて説明する際に「スポーツ?いやw自分たちがやってるのはただのゲームなんですよww」と言い切ってしまうとメディアやスポンサー、世論の興味も失くなる可能性を孕んでいるのかもしれない。

メディア側からすると「これただのゲームなんですけどめっちゃ面白いんですよ」と紹介するのもおかしいし、スポーツとして紹介されても大衆側は違和感を覚える。ゲームかスポーツか、この2択は表現として極端に過ぎる。そこで私はesportsに新たな概念を持ち込もうと考えた。esportsは生涯学習。これでいいのではないだろうか。

『平成29年度文部科学白書』には生涯学習についてこう書いてある。

「生涯学習」とは、一般には人々が生涯に行うあらゆる学習、すなわち、学校教育、家庭教育、社会教育、文化活動、スポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、企業内教育、趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。

生涯学習というワードの許容量は広い。少し生涯学習についてかじった際に仲間内で「うんうん、それも生涯学習だね!」なんて文句が流行ってしまうくらいだ。これならesportsはスポーツでも文化活動でも趣味でも何にでも自由に捉えることができる。もうこんな下らない議題とはおさらばだ。「esportsは生涯学習!」これからみんなも使っていこう!

2. esportsによる地方創生

私が一番興味を持っている題材が地方とesportsだ。私自身田舎と呼ばれる栃木県に住んでいることが関係しているが、esportsは地方創生の一助となる可能性を持っていると思う。

地方が抱えている課題は人口減少による問題が大きいようだ。東京圏への転入超過数はここ4年ほど10万人を超えており、それらはほぼ全て10代後半から20代で占められている。これにより単純な労働力低下や高齢者ばかりが残っているため嵩む医療費。大量の公費を投入することで無理くり自治体を維持しているため稼ごうにもリスクの高いチャレンジに踏み込めない。そのくせ他県の成功例だけはこぞって真似し、ちょっと儲けようとした努力だけ示す。貧すれば鈍するを地で行くのが多くの田舎の実情だと思う。

先程述べた10代20代の東京圏転入の件について、これは進学や就職が主な理由になると思われるが、それは地方では望む事ができないということを表していると思う。

以前、地元の高校生約2,000人にアンケートを取った結果を見せてもらったことがある。「この地域に魅力を感じているか」という問にYESと答えた数は30%、Noと答えた数はわずか8%だった。次に「将来の夢は具体的に決まっていますか」という問にYESと答えた数は26%、Noが14%。「将来この地域から出ていきたいと思っていますか」という問にYESは38%、NOが14%だった。

この結果は生まれ育った地域が好きだが将来の夢はこの地域で行うものではないという考えを読み取ることができる。

このように若者から見放された地方が今後生存する可能性を見出すのであれば観光、企業誘致、起業支援と言われている。全部esportsで繋げられそうだ。

観光については、国内旅行者よりも海外客に目を向ける傾向(インバウンド)にあるようだ。「地域の経済2018」によると

東京都、大阪府、北海道、京都府、沖縄県は観光地として成熟しており毎年多くの観光客が訪れる。それ以外の42県に訪れた際、行った活動についてみると、「旅館に宿泊」、「温泉入浴」、「自然・景勝地観光」、「ショッピング」、「スポーツ観戦」、「四季の体感(花見・紅葉・雪等)」等を行う傾向にある。地方旅行者においては、自然や温泉といったその旅行先でしか体験できないようなコト消費を目当てに訪問していることが分かっている。
年齢が若いほど、女性よりも男性の方が、再訪日意欲が高い傾向がみられる。他方、家族・親族旅行で訪日した旅行者の再訪日意欲は低い。

この情報を踏まえると地方は若い独り身の外国人男性をターゲットにそこでしかできないコト消費でアプローチしていくこととなる。

わざわざ地方に来る若い独り身の外国人男性なんてそんなの確実にオタクだ。先の資料にも日本での目的の一つに「ポップカルチャーを楽しむ」、「映画・アニメ作品縁の地を訪問」という項目があった。これらに親和性の高いesportsは刺さる可能性がある。

そして国際交流にesportsは俄然アリだ。日本はesports後進国なのだから必然的に海外の方がesportsへの理解が深いと言えるだろう。

野外でBBQでもしながらSwitchで遊んだり、温泉地の足湯にゲームが設置されていたり、疲れてきたらサウナに入りながらモニターで観戦できるようにしたり、外国人がよく泊まるゲストハウスにゲームが設置されていて宿泊者と対戦といった何かのついでにesportsができる環境構築を更なる武器に海外からの観光客を再訪させよう。

また、地方の動きで外せないのは2019年茨城県のつくばで行われる「いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラム(文化プログラムの一貫のためスポーツとしての採用はしていない。うんうん、これも生涯学習だね。esportsは生涯学習!)にesportsとして『ウイニングイレブン』が採用されたこと、また「全国高校eスポーツ選手権」の開催が決定し『LOL』、『ロケットリーグ』が採用されたことだ。これによりesportsは日本でも都心部での出来事と思えていたものが地方民に向けてもアプローチされてきた。

もはや地方ゲーミング戦国時代の狼煙は上げられたといって良い。各地方での対抗戦は全国にeスポーツ協会が設立されていくことで実現されることだろう。

また、茨城国体のプレ大会では年齢制限なしのオープン大会と年齢制限ありの中高生向け大会とに分けて行われた。ここから企業誘致、起業支援に関する話になるがさらにシルバー枠を入れてみるのはどうだろうか。

地方においても介護施設や、児童発達支援・放課後等デイサービスといった福祉施設が増加傾向にありマスターズカップのような環境を構築することは難しくないように思える。例えば、群馬県伊勢崎市の福祉施設では障害者によるプロチームを作り出そうと動いている。これに習い介護施設対抗とかあってもいいのではないかと思う。そして彼らに指導する為にesportsに覚えのある職員の採用も必要になるためここで若者の為の雇用の創出を実現することが可能だ。

世界的にも年齢別人口ピラミッドが「棺桶型」と揶揄されるほど少子高齢化が加速している日本がシニアeスポーツで天下を取る、そんな未来が見たい。

3. esportsと地方コミュニティ

続いてはユーザーコミュニティについてである。これは「ゲーセンコミュニティ」と「ネイティブネットコミュニティ」の2種類に大別できると思う。格闘ゲームなどのアーケードゲームを源流とするものはゲーセンコミュニティ、FPSやMOBAなどに代表されるPCゲームが源流のものはネイティブネットコミュニティだ。

別けてはみたものの現在それほど大きな違いはないように思うのでゲーセンコミュニティについて話していく。これに関してはウメハラ氏が自身のチャンネル内でカラオケ大会を開いた際に話した内容がゲームセンターコミュニティの良さを的確に表現していたので要約してシェアしておく。

「ゲーセンではゲームが強い=人気者だったが、対戦後カラオケなど他の遊び場に移ると歌の上手い奴、話の面白い奴なんかがいて目立つ人が変わっていく事が面白かった。プロゲーマーの登場で実力一辺倒の流れになっていくことは悲しいから」

この実力一辺倒の流れに対して「浅い俺たちも楽しんでる!」を全面に押し出し有志が企画・配信した『凡人激突』はこれまでにあった「強い奴だけが脚光を浴びる」という風潮から抗うように生まれた斬新なイベントで、視聴者を大いに楽しませた。

このように地方にも面白いイベントを企画したり、定期的なオフライン大会を開催したり有志コミュニティは存在している。

彼らはわざわざこういったコミュニティを作ってしまうほどより楽しむ事に関しては労力を惜しまない人間達なので、まずは有志と協力して草野球的なイベントを開催しプレイヤーコミュニティの育成、裾野の拡大に努めていくことが地方がesportsに取り掛かるキッカケとしては望ましい。彼らのような有識者無しにイベントを開催してもゲーマーのニーズを理解できず失敗に終わり、初回で終わってしまう可能性が非常に高いからだ。

まとめ

これまで3つのテーマで考察していったことをそれぞれ一文で書いていくのであれば

esportsは生涯学習!

esportsで地方は課題解決しよう!

esportsにかこつけてコミュニティの活性化を図ろう!

ここまで書くまでに何度もesportsはゲームで楽しいし盛り上がる、それだけでいいじゃないかと思ってしまった自分がいるが、それだけでは産業もコミュニティも発展していかない。

それならばゲーマーが取る手段はesportsにかこつけて当時のゲーセン最盛期の熱を形を少し変えた上で再燃させようと動いたほうがアドバンテージが取れると考えていく人が増えていくといい。

今年の流行語でも「eスポーツ」がノミネートされた。田舎でも積極的にesportsの可能性を語り「esportsってなんだ?」と老人が逆に聞いてくれる環境を作ることを目標にしたい。「若い奴らがなにか盛り上げるために熱く語っていることはわかった。」と思ってもらうだけでも十分で「では自分たちは何をすればいい」まで意識を持って考えてくれると最高だ。esportsという言葉さえ広がればそんな変化が生まれる可能性がある。

なんか面白い、なんか盛り上がっている。この盛り上がりにトップ層と肩を並べるほどゲーム強者ではなかったけれど、何かを代償にするほど熱中していてesportsという形なら力になれることがあるかもしれない。そんなふうに思う人達がうまく連鎖していけばいいなぁと思う。ゲーマーは連鎖得意じゃないですか。ぷよぷよもeスポーツなんて商品名がつけられる時代ですよ。

これらのビジョンが共有され、元年から進んでいく来年に期待したい。

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