【EVENT REPORT】 MESON WAVE LIVE 03 - WOWと考える空間と映像が交じりあう時代の体験デザイン
MESONが主催するオンラインイベント『MESON WAVE LIVE』では、様々な業界で活躍するプロデューサーの方々をお呼びし、知見を共有する場を目指しています。
10月に開催された『MESON WAVE LIVE 03 - WOWと考える空間と映像が交じりあう時代の体験デザイン』では、ビジュアルデザインスタジオWOWより松井康彰氏と佐伯真一氏をお呼びして、空間における映像体験の作り方をテーマにお話をお聞きしました!
このnoteでは『MESON WAVE LIVE 03』で話されたトピックをまとめて行きたいと思います!
WOWが手掛ける体験デザインの特徴
WOWはもともとコンピュータグラフィックスを使った映像制作を中心とした取り組みを行っていました。次第にインタラクションやUIを意識した体験づくりが行われるようになり、2007年の初代iPhoneが登場して以降、ユーザー体験を意識した映像制作にシフトしていったそうです。
CMやコンセプト映像など、広告における多様な映像表現から、さまざまな空間におけるインスタレーション映像演出、メーカーと共同で開発するユーザーインターフェイスデザインまで、既存のメディアやカテゴリーにとらわれない、幅広いデザインワークをおこなっている。(https://www.w0w.co.jp/about/)
幅広い領域を横断した映像体験を手掛けているWOWの特徴と強みは、『様々な領域が組み合わさった案件、そしてそれを着地させる』ことだそうです。
実際、プロジェクションマッピングやARなどの新しい技術を活用した映像表現に積極的に取り組んでいるため、それらを複合的に組み合わせた映像表現を多く手がけられています。
また、それらの案件・プロジェクトを上手く着地させることができるのもWOWの強みとのことです。特にクライアントワークを行う際には、クライアントへ使用する最新技術の期待値をどのように調節するのか、その作品でどこまでの映像のクオリティを追い求めるのかなど、期待値とアウトプットクオリティのハンドリングがノウハウとして蓄積されているようでした。
WOW ARで実践されたARへの挑戦
AR領域におけるWOWなりの挑戦が実現されたのが、佐伯氏がコアメンバーとして関わった『WOW AR|AR + Motion Graphics』でした!
このプロジェクトは、『場に集まらないでも、あらゆるものをインスタレーション化できないか』というテーマをもとにした挑戦です。
WOWがこれまで積み上げてきたモーショングラフィックスの知見とAR技術がコラボしたこの作品は、日常と非日常が混ぜ合わさったような体験が展開されています。
CGのデザインナー・プログラマー・UIデザイナーを含んだミニマムなチームで十分な連携をとりスタディをすることで、システムによる映像のカクつきなどを早い段階で見極めて、短期間でのアプリリリースが実現しました。
AR体験ではまだまだ端末の性能による制限が大きくのしかかるので、実際の体験におけるパフォーマンスをいかに安定するかが重要ですね
イベントのなかでは、松井氏による、環境を反映させることで体験が空間に馴染むといった指摘がありました。確かに、ライティングを始めとする細かい演出にこだわりをもつ映像業界の方々は、ARで気にするポイントかなと思いました!
(*Apple Storeからダウンロードできるので、まだ体験されていない方はぜひ試してみてください!)
「こだわりがないのがこだわり」のプロデューサーワーク
クライアントワークでは、チームマネイジメントに加えて明確な納期が存在するので、そのときのプロデューサーとしての立ち回り方は「チームをいかに機能させるか」に専念しているそうです。
なので、作品に意見をいうよりも、クライアントとのバランスをとり、客観的な情報を集めることで一緒に取り組むディレクターもしくはクライアントがジャッジできる環境をつくることを大事にしているとのことでした。
「プロジェクト管理のプロデューサー」と「制作管理のディレクター」の領域を明確に切り分けることで、チームが滞りなく動くことが重要ですね!
(個人的にはこのお話で、作品のクオリティ管理を全てディレクターに任せることができるWOWチームの信頼感の厚さを感じました!)
また、個性的なメンバーそれぞれのクリエイティビティを引き出すためには、チームとクライアントとのバランスを取ることが重要とのことです。
クライアントとクリエイターとの意見の違いをどうハンドリングするのか。ときにはクリエイターにクライアントの意向をしっかり伝え、ときにはクライアントにクリエイターの意見を納得させるなど、チームの内側と外側のバランス取りをすることがプロデューサーとして大きな役割とのことです。
それらを実践に移すためには、プロデューサーとして『こだわりがないのがこだわり』と考えて、状況に応じてプロジェクト進行のバランスを取ることが大事と考えているようです!
『映像表現のもつ公共性』 と 『環境装置としての映像』
議論のなかで、『映像表現のもつ公共性』についてもお話をお聞きしました。
これは佐伯氏が手掛けた「SHIBUYA STREAM」での映像作品を元に話が展開します。
通常のデジタルサイネージからある範囲を超えてしまうと、街の持つ景観・雰囲気など全体に大きな影響を与えてしまう。街に馴染む映像をインスタレーションを埋めないといけない。環境・Publicを意識した映像をいれていく必要がある。(WOW佐伯氏)
特にこのSHIBUYA STREAMで展示された映像作品は、広告的な目的ではなく、街の景観を作ることが目的で制作されたため、特に強く『映像表現のもつ公共性』を意識したそうです。
そうして環境に溶け込むように設計された映像作品は、『環境装置としての映像』として社会生活の一部になっていきます。
ARの領域では、ARクラウドやデジタルツインの社会実装を考えたとき、システムとコンテンツの公共性が重要になってきます。「そのコンテンツが公共の環境に本当に溶け込んでいるのか」という問いは、ARやその他の技術の社会実装を考えるうえで重要なヒントになりそうですね!
また、そのなかで実装される「広告」はこれまでの広告としての機能だけでは不十分で、いかに環境に溶け込み、それを見る人に対して不快な感情を抱かせないかを考えて行く必要がありそうです。
体験拡張における 『主体性』 と 『作家性』
佐伯氏によるとWOW ARでは、立体感のあるデザインにすることでARを「回り込んでも面白い体験」に仕上げていたとのことです!
MESONのカジさんによると、「今後は作品にも主体性を盛り込むことが今後の大きな方向性として出てくる」とのことでした。これには、実際に体験を提供することで忘れさせない工夫や、ただ見るだけの体験ではなくユーザーの身体性や主体性を刺激する工夫などが重要視されつつある背景があります。
ただ、その一方でユーザーによる主体性が増すと、コンテンツの作家性が失われてしまうトレードオフが存在している可能性もあります。
この点に関して松井氏は、映像作品におけるカメラのアングルのスイッチングなどある種の体験者側の制限を設けることによる作家性の増長を例にあげ、見せたいコンテンツによる『主体性』と『作家性』のバランスの取り方があるのでは、とのことでした。
この話を受け佐伯氏は、映画を見ている際には作家性を元にした一定のストーリータイムラインが存在する一方で、小説や絵本は自分のタイムラインを持ちながらストーリーを進めることができるため、ここにトレードオフの突破口があるのでは、と考えていました。もしかすると自由視点によるAR表現で『主体性』と『作家性』のバランスがとれる可能性も見えてきますね!
MESON WAVE LIVE 04へ続く!
ということで、『MESON WAVE LIVE 03 - WOWと考える空間と映像が交じりあう時代の体験デザイン』のイベントレポートをお伝えしました!
今回のイベントでは、クオリティの高い映像作品を数多く手掛けるWOWで蓄積されている知見の一端をお伝えできたのではないのでしょうか!!
個人的には、 『環境装置としての映像』と『主体性と作家性』のお話が興味深く感じ、これからの拡張体験作りに活かしていきたいと思っています!
12月18日に開催する次回のMESON WAVE LIVEでは、テクノロジカルクリエイティブファームのTHINK AND SENSEの松山氏と湯浅氏をお呼びし、『XRの社会実装への挑戦から見えた可能性』というテーマでお話をお聞きします!こちらもぜひご参加ください!
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