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【筋トレ読書1】筋肉はどのように大きくなっていくのか ー 筋肉発達のメカニズム ー

「なぜトレーニングによって筋肉が発達していくのか」について山本義徳著『ウェイトトレーニングー理論編ー』や『シンプル生化学』、『筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト辞典』などを参考にまとめる。

超回復の理論

 ひと昔前までは、「超回復によって筋肉が強くなる」と考えられていた。きっと今でもそのように考えている人は多いと思う。
そのような人たちの考えはこうだ。「トレーニングによって筋肉が損傷し、36〜72時間ほど経つと回復して元の水準に戻る。さらに時間が経過すると、前よりもっと筋肉を大きくして同じような刺激に対応できるようにする。このような現象を「超回復」と呼び、筋肉はこの繰り返しによって発達する」というもの。
 しかし、筋肉の超回復と思われてきたものは実は「グリコーゲンの超回復」だった。トレーニングで現象したグリコーゲンが36〜72時間ほど経つと回復し、元の水準よりも多くなる現象がいつしか筋発達のメカニズムとして誤認識されるようになった。

ストレス応答

 超回復が筋発達のメカニズムではないとわかったが、では実際に筋肉が発達するメカニズムとはなんなのか。それは「ストレスに対する適応現象」だ。私たちの身体はストレスを受けると、それに「適応」しようとする。これが筋発達の正体だった。この「適応」には3つの段階がある。

スライド1

 これをウェイトトレーニングで解説すると、下の図のようになる。

ストレス

オーバートレーニング

 「適応」で重要なのが、疲弊期に陥らせないこと。つまり、オーバートレーニングを防ぐことだ。トレーニングの中でも特にネガティブ動作がオーバーワークを招きやすい。東大の石井教授が行なった実験では、ネガティブオンリーのトレーニングを行なったところ、完全に回復するまでに1ヶ月近くを要したとされている。上手く使えばネガティブは筋発達に有効だが、やりすぎると容易にオーバートレーニングに陥ってしまう。
 ウェイトリフターやベンチプレッサーが毎日のようにトレーニングをしてもオーバートレーニングになりにくいのは、ネガティブの刺激が少ない事に加え、特定の筋肉だけではなく、全身を使って高重量を挙げるためだ。ウェイトリフターの例を挙げて「オーバートレーニングなど存在しない」という人もいるが、特定の筋肉を狙って行うウェイトトレーニングと同等に考える事自体が間違っているのかもしれない。

筋タンパクの合成経路

 トレーニングによって筋肉が増えるということは、筋タンパクの合成が起こっているということ。トレーニングの刺激はmTORC1を活性化させる。mTORというのは様々な細胞内外の環境情報を統合し、細胞の成長を調節するシグナル伝達経路で、mTORが活性化する事により、その下流にあるタンパク合成酵素のリン酸化が起こり、タンパク合成が始まる。また、mTORが活性化していると、筋肉を分解してエネルギーを取り出そうとするオートファジーが抑制される。

ミオスタチン

 私たちにとってタンパク質は一番重要な栄養素であるが、過剰な筋肉は生命維持にとって必要性が高くない。そのため、タンパク質を筋肉ではなく、もっと重要な場所に分配し、重要性の低い筋肉には分配しないようにする必要がある。その働きを担う遺伝子がミオスタチンだ。
 具体的にはミオスタチンが増加すると、mTORC1が抑制され、筋タンパク合成が滞る。しかし、トレーニングの刺激はミオスタチンを減らすことがわかっている。

筋発達に必要な刺激

 筋発達のメカニズムはストレスに対する適応現象でだった。また、ネガティブ動作はオーバートレーニングに陥りやすいこともわかった。では、どれくらいの刺激を与えれば身体はストレスとして捉え、適応(筋発達)しようとするのか。これは単純な話で、現在の筋肉の能力を100としたら、101の刺激を与えれば良いという。もっと強い200の刺激を与える事に意味はなく、身体にとって「これはストレスだ」と判断させればそれで十分なのだそう。むしろ、余計な刺激を与えることは回復を遅らせ、オーバートレーニングにつながりかねない。

物理的刺激と科学的刺激

具体的に、筋発達に一番需要なストレッサーは「機械的物理ストレス」で、1RMの70〜90%の重量で行うウェイトトレーニングがそれに当たる。しかし、最近になって軽い重量でのトレーニングも筋発達を促すということが判明した。1RMの30〜40%程度の重量で多くの回数をこなす事により、筋肉に「化学的ストレス」を与え筋発達を促すと考えられている。なお、軽い重量でのトレーニングはミトコンドリアの発達を促し、筋持久力を増大させる。

次回は「トレーニングの頻度を考える」

参考図書

筋トレ読書1~5までの参考図書


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