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2021/05/24 舞台『東京ゴッドファーザーズ』を観る

舞台『東京ゴッドファーザーズ』を観た。何年か前に、原作の今敏監督の同名アニメ映画を鑑賞している。大好きな作品の舞台化は、期待と不安で半々だった。

結論からいうと、原作に忠実、演劇的マジックをふりかけて、さらに魅力的な舞台に仕上がっていた。

物語は、東京のクリスマスの夜、路上生活をしている3人が、棄てられた赤ちゃんを拾うところから始まり、赤ちゃんの親を捜しに東京をかけめぐるうちに、思わぬ真相が明らかになっていく…。

主要キャストの3人、元ドラァグクイーンのハナちゃん(松岡昌宏)、自称・元競輪選手のギンちゃん(マキタスポーツ)、家出娘のミユキ(夏子)が、生き生きと息づいていた。まるで映画から抜け出したようだった。それ以外の8人のキャストは、通行人をはじめ、1人10役ほど演じ分け、大都会・東京を表現していた。

ロードムービーのように、新宿、錦糸町、港区、東京タワー、品川と、舞台の場所はめまぐるしく移動する。80超のシーンを、スピーディーに見せていく。昇降式の舞台で二段式にして、上下で違う場面が同時進行したり、大道具を役者が持ち運んだり。雑踏や電車の車内アナウンス…。スタイリッシュな照明。光と影、音による演出も冴え渡っていた。

原作の舞台は、2000年代初頭だったが、舞台では2020年末から21年年始に。感染対策を呼び掛ける描写を挿入し、「今」を映しだしていた。東京都庁を指さし、「あれは百合子の牙城よ!」というハナちゃんのせりふにはつい笑ってしまった。

この作品が活写したのは、「東京」そのもの。かつてのようにホームレスが東京にあふれていることはない。しかし、家はあっても、居場所を失った「ホームレス」たちが、潜在的にあふれている。

今の世に、『東京ゴッドブラザース』の奇跡は、果たして起こりうるのか?  ハナちゃんたちのように、居場所をなくした人たちが生きられる「余白」のような場所はあり得るのか。さまざまな問いを突きつけられる中、東京の街を歩き、家路についた。

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