イカレ帽子

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『妖異探偵・シャーロック=ホームズ』

「これは妖精の仕業ですよ、警部」 「気が狂ったのかね、ホームズ君」  英国は倫敦。  霧烟る都市を揺るがす怪事件に現れた名探偵の口から出たのは、名推理ではなく妄言だった。 「現場は密室。死体は人の手の届かぬ天井に磔られ、死体は傷一つなく心臓を潰されている。これが人間の仕業ですか?」 「それを考えるのが君の仕事じゃないのか!」 「ですから、妖精の仕業とお云いしています」  やはり駄目だったか、と警部は頭を振った。  ライヘンバッハの滝から落ちた彼が発見された、と聞いた時に

    • サイバーパンク=インビジブル

       BAM! BAM!  50年は型落ちのリボルヴァー拳銃を構えて、俺は威嚇発砲する。  愛玩犬を囲んでいた浮浪者たちは、一目散に廃倉庫の影へ逃げていった。 「お前らが犬を食う分には勝手だが、そいつは俺の飯ダネになるんだよ……」  俺が犬を食うわけじゃない。  2050年のARネットワーク全盛でも、探偵に犬探しを頼むような依頼は絶えないというだけ。  あるいは、犬探しくらいしか仕事の来ない程度の低い探偵がか。 「見つけた。君が探偵かい?」  犬を抱えて倉庫街を出ようと

      • Go,East!

         ブリタニカ王国にその名を轟かせた大冒険者、ムサシは死んだ。  ダマスカス鋼製の名刀「ノブツナ」、そして彼の極意のマキモノは行方しれずとなり、後釜を狙う冒険者たちは血眼となった。 「オイ兄ちゃん。その娘っ子からどういう依頼を受けたか知らないがよ。そいつとカタナを渡せばケガしなくて済むんだぜ?」  モヒカン頭の破落戸が凄む。  俺の背に隠れマキモノを胸に押し付けるように抱えている黒髪の娘が恐怖に震え、豊満な胸がたぷんと揺れた。名前はイオリだったか。  俺は鞘に入ったままの

      『妖異探偵・シャーロック=ホームズ』