Go,East!

 ブリタニカ王国にその名を轟かせた大冒険者、ムサシは死んだ。
 ダマスカス鋼製の名刀「ノブツナ」、そして彼の極意のマキモノは行方しれずとなり、後釜を狙う冒険者たちは血眼となった。

「オイ兄ちゃん。その娘っ子からどういう依頼を受けたか知らないがよ。そいつとカタナを渡せばケガしなくて済むんだぜ?」

 モヒカン頭の破落戸が凄む。
 俺の背に隠れマキモノを胸に押し付けるように抱えている黒髪の娘が恐怖に震え、豊満な胸がたぷんと揺れた。名前はイオリだったか。

 俺は鞘に入ったままのカタナを、モヒカン野郎に向かって突き出した。

「へへッ。いい心がけじゃねぇ、がッ!?」

 何を勘違いしたのか知らない男を『ヌキウチ』に斬り伏せる。
 血糊すらも残らない切れ味、なるほど確かに名刀だ。

「ひたすら東へ、か。長いハカマイリになりそうだ」

「残念だが、参るのはお前の墓へになるぜ」

 不意の声に正面を向く。目の前に、ガンマンが立ちふさがっていた。

【続く】

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