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詩 『音をあつめて』

不安定に宙を漂い

クルクルと巻き上げられたと思えば
フワリと四方に解け 

右へ 左へ

一時何かしら形を成したかと
おずおずと手を伸ばせば

シュワと解けて 
指の間から流れ溶けてゆく


焦点を結ばぬまま 浮遊する音粒を
ただなす術もなく じっと見つめるこの時間に

何の意味があるのだろうか


時に囚われぬ彼らは
ただその一瞬の内に 完全に充足し
飽くことがない

世界はどこまでも瑞々しく
あらゆる瞬間は ゆるやかで
刹那的で 突発的だ


はじき出された私が 唯一つ望むのは

自由に跳ね回り 充分に完結する彼らを
四方八方かき集め

両手でギュッと押し固め 無理やり整列させ
何かしらの安っぽい抒情をのせて
時間の中に 閉じ込めること


そうして私は まるで創造主の如く 
世界に自分だけの旋律を響かせて

あわよくばそのことで 
ここに私のイスを置いておけるかもしれないと
密かに思っているのだ



Photo by 菜月糸美さま  ありがとうございます。

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