あのんレコード。

しがないヲタクの備忘録です。

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最近の記事

ゆく七之助、くる七之助

気がつけば大晦日。 下半期後半の感想を纏める暇もなく大晦日。 夕霧・八百屋お七に始まり、安定のお染の七役・おたか・おとく、さりげなく初役のおたつ。下半期からの政岡・お岩という怒濤の大役ラッシュを勤め上げ、合間に七化けお七やさりげなく初役のお舟に天女、やはり安定の梅川にお大の方を経て、トリはまさかのクシャナ殿下。 というわけで独断と偏見の「2019年男・中村七之助ベスト5」を以下に記して、今年を締めくくりたいと思います。 第5位・八百屋お七 「櫓のお七」以外は初めての筈な

    • 七之助のお岩、生まれたてのお岩

      七之助丈がついにやりおった。 父にも兄にもできなかった、新しい「お岩様」をやりおった。 これ監修が玉三郎丈なんですよね。七之助丈が幼い頃から「お岩様やんなさい」ゆーてた玉三郎丈なんですよね。 つまり今回のお岩様は、玉三郎丈が七之助丈に「やらせたい」と思ったお岩様なわけですよね。 さすが玉様ッッ!!! 正直八月のときはどうしたものかと思ったけれどッ!!! 「監修の怖い人」を信じた甲斐がありましたッ!!! まずは与茂七から。 番付のコメントにあった通り「とにか

      • 七之助の与茂七

        遅れ馳せながら、南座花形歌舞伎初日おめでとうございました。 例によって初日なので、詳しい感想は控えますが。 「切られの与三」といい今回の与茂七といい、七之助丈は「女方の加役としての立役」の幅を確実に広げているなあ、と。 いや、加役というと片手間感がある気がするな。「女方がやる立役」と言うべきか。 「兼ねる役者」としての与茂七ではないのです。 言わずもがな「立役」としての与茂七でもないのです。 お岩様というお役は立役ができる人でないとつとまらない、みたいなことをどこ

        • 八月納涼歌舞伎

          南座花形歌舞伎、初日おめでとうございます。 というわけで去る八月納涼歌舞伎の感想まとめを。 1.伽羅先代萩  「幼い子供は殺されない」というドラマツルギーに慣れきった現代人のメンタルをいともたやすくぶった切る、古き良き封建時代あるあるストーリー。今だったら絶対「※鬱展開注意」とか書かれるやつ。  しかしこの演目はその「鬱展開」こそが最大の見せ場なのである。「菅原伝授手習鑑」の「寺子屋」のように、多くの大人たちが悼むわけではない。その衝撃を悲しみを、政岡はたった一人で受け

        ゆく七之助、くる七之助

          七之助の政岡

          10年以上前のことである。 勘九郎丈がまだ勘太郎と名乗っていた頃、仙台で行われた兄弟の公演を観に行った。 その芸談の質問コーナーで、こんな質問をしたお客さんがいた。 「伽羅先代萩でやってみたいお役はありますか?」 これに対して、兄弟はそれぞれこう答えた。 勘太郎(当時)「政岡。あと勝元をやりたいですね」 七之助「政岡です」 この頃はまだ、七之助丈は女方に向けて舵を切りはじめていた頃だったように記憶している。 その覚悟の片鱗が、既にこの答えにも表れていたのだろう。