七之助の政岡

10年以上前のことである。

勘九郎丈がまだ勘太郎と名乗っていた頃、仙台で行われた兄弟の公演を観に行った。
その芸談の質問コーナーで、こんな質問をしたお客さんがいた。

「伽羅先代萩でやってみたいお役はありますか?」

これに対して、兄弟はそれぞれこう答えた。

勘太郎(当時)「政岡。あと勝元をやりたいですね」
七之助「政岡です」

この頃はまだ、七之助丈は女方に向けて舵を切りはじめていた頃だったように記憶している。
その覚悟の片鱗が、既にこの答えにも表れていたのだろう。

質問者は「もしお二人がそのお役を演じるときは、絶対に観に行きます」と言っていた。


それから10数年後の、今日。
七之助丈が初めて政岡を勤めた。

あの頃影も形もなかった甥っ子二人と一緒に。
あの頃から格段に磨きをかけて。

あの時の質問者も、きっとどこかで観ているといいな、と思った。


結論:七之助の政岡は良い。そしてこれからもっと良くなる。

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